第43話 おじさん、元妻との再会を迫られる。

「久しぶり、義兄にいさん」

「ササメと離婚してもう10年以上たつんだ。君に義兄にいさんと呼ばれるいわれはないよ」

「あら、離婚は成立してないはずだけど? 姉さんは離婚届に署名してないし。そうでしょ、義兄にいさん」


「え? え!? えええ!!? おじさん、結婚してたの??」


 ロカは、おしりを霜月しもつきカノエにモミモミともまれつつ、驚きの声をあげる。

 しまった。やっかいな相手に知られてしまった。


「おじさんの結婚相手って、ガラケーの待ち受けの女の人だよね! 絶対そうだよね!!」

「……ああ」


 ロカのやつ、いつの間に俺のケータイの待ち受けを見たんだ?

 俺はバツが悪く、うなづくしかない。

 ロカは、おしりを霜月しもつきカノエにモミモミともまれつつ、テンション高めにヒサメに質問を始める。


「ヒサメさん、ヒサメさん! おじさんとササメさんって、いつ知り合ったんですか??」

「大学よ。義兄にいさんと姉さんは同じ大学の出身なの」

「ええ! そうなんですか!?」

「私の姉さんは、地質学者として『シェールストーン』の中に閉じ込められた『マナ』のエネルギー活用方法を発見したチームのひとりよ。義兄にいさんは、姉さんたちの護衛を務めるチームの一員だったの」

「え? てことはもしかして、ササメさんって『ブラックライセンス』なんですか?」

「ええ。『ブラックライセンス』は、国から選抜された研究者チーム5名、護衛チーム5名で構成されたパーティーなの。 義兄にいさんは護衛チームのリーダーだったひとよ」

「すごい……」


 ロカは、おしりを霜月しもつきカノエにモミモミともまれつつ、尊敬の眼差しで俺のことを見ている。バツの悪い俺はあわてて釈明をする。


「だが、それはもう10年以上まえの話だ。今はダンジョン整備員を首になって、その日暮らしをしているただのダンジョン探索者だよ」

「そう、義兄にいさんはこのうしとらのダンジョンを離れる訳にはいかないの。だって、このダンジョンの最深部では、今も姉さんは研究を続けているんだもの」


 俺の自虐気味な説明に、ヒサメは余計なフォローを付け加えつつ話をつづける。


「今日は、義兄にいさんにお願いがあって会いにきたの。すっかり連絡が途絶えて見つけるのに苦労したんだから。カノエじゃないけれど、ロカちゃんには、おもてなしをしないとね」

「えっと、ヒサメさん、それってどういう意味ですか??」


 ロカは、おしりを霜月しもつきカノエにモミモミともまれつつ、ヒサメに質問をする。


義兄にいさんをADとして雇ってくれたことよ。ADとして雇ってくれたおかげて、あなたの配信で、義兄にいさんの消息をつかめるようになったんだもの」

「あぁ! なるほど!!」


 ロカは、おしりを霜月しもつきカノエにモミモミともまれつつ、大きくうなずいた。


義兄にいさん、早速だけど要件を言うわ。私、そしてカノエと一緒にパーティーを組んでくれない?

 このうしとらのダンジョンの異常は、なにかの前兆だと思うの」

「異常……低層階にサイクロプス型がうろつき回っていることか?」

「ええ。それに異常は他にもあるわ」


 そう言うと、ヒサメはバックからタブレットPCを持ち出す。


「見て、最近のうしとらのダンジョンで採取された『シェールストーン』一個におけるマナ含有量のグラフよ」


 俺は、ヒサメの取り出したグラフを確認する。なるほど、ここ数ヶ月で含有量が随分と低下している。


「最近、還元率が随分としょっぱくなったと感じていたが……そう言うことだったのか」

「このうしとらのダンジョンの寿は、もう長くない。その原因を姉さんに聞きに行きたいの。これは、故泉こいずみマナエネルギー推進大臣からの直々の要請よ」


 ヒサメは、ノートPCを操作して、故泉こいずみマナエネルギー推進大臣からの指令書を映し出す。そこにはハッキリと、「癸生川けぶかわヒサメの護衛係として、ブラックライセンス所有者、田戸蔵たどくら小次郎こじろうを任命する」と書いてあった。


「最深部は、ブラックライセンス、もしくは同列の権限を持つライセンス所持者しか立ち入れない。義兄にいさん、改めてお願い……いえ、をするわ。私とカノエと一緒に、ダンジョン最深部に行きましょう。姉さんに会うために」

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