第38話 美少女、サイクロプス型を圧倒する。

 ズシーン!


 数十メートル後方で、サイクロプス型の棍棒が振り下ろされる音が聞こえる。

 おじさんが、1匹をうまいこと誘導してくれた。


 さすがおじさんだ。これで目の前のサイクロプス型に集中できる。


 アタシは、サイクロプス型の動きにようく集中しながら、腰に下げたポーチにシェルストーンを4個投入する。

 順番は、黄色、緑、緑、緑の順。


 シェールストーンをポーチに入れてフタを閉じると、アタシはポーチの横についたスイッチを押しながら、サーベルの柄の部分にそっと口を当てて、思い切り息を吸い込んだ。


 全身に力がみなぎっていくのがわかる。

 黄色いシェールストーンのマナを吸い込んだ効果だ。


 カノエさんモデルのレイピアは、ポーチにセットしたシェールストーンを、レイピアに転送するシステムがついている。

 一度にセットできるシェールストーンは4つまで。セットした順番にシェールストーンをレイピアに転送できる仕組みだ。


 ズシーン!


 黄色いマナを吸い込んだアタシは、サイクロプス型の攻撃を楽々かわしてヒラリと棍棒の上に乗ると、左手でポーチのスイッチを押してサーベルを真上に振り挙げた。


「アップドラフト!!」


 アタシは、真上に発生した緑色の竜巻の中に飛び込んだ。


 バサバサと木をかき分けて、一気に上空15メートルまで跳躍する。

 密林を抜けて晴れた視界には、サイクロプス型の大きな目玉がこちらをにらんでいる。


 その距離8メートル。

 よし! 計算通りだ。


 落下しながら再び左手でポーチのスイッチを押すと、今度は前にサーベルを下から斜めに振り上げる。


「もう1回、アップドラフト!!」


 足元に発生した緑色の竜巻に入りながら、さらに左手でポーチのスイッチを押す。


「サンダーチャージ!!」


 アタシはサーベルに緑色の電撃をまとわせると、サイクロプス型の目玉めがけて超高速で突っ込んだ!!


 バチバチバチバチバチバチィ!!

「ぐうおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 手応えあり!!

 目玉の奥にある脳に強烈なダメージを受けたサイクロプス型が、苦しみながら大量のシェールストーンに変わっていく。


 やった! アタシひとりで、サイクロプス型を倒したんだ!!


「やったよ! おじさん!」


 アタシは喜んで、もう1匹のサイクロプス型と戦っているおじさんの方を振り向いた。

 数十メートル先にいたサイクロプス型もシェールストーンに変わっている。

 でも、倒したのはおじさんじゃなかった。


 その人は、アタシとまったく同じ方法でサイクロプス型を倒すと、アタシと一緒に密林へと落下していった。


 金髪ショートにシャンパンゴールドのジャージ……間違いない!

 アタシのあこがれ! 実力派女性探索者、霜月しもつきカノエさんだ。

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