第39話 美少女、憧れの人の前でド緊張する。

 カノエさんは、アタシと同じ、竜巻による高速移動からの電撃攻撃でサイクロプス型を仕留めた。


 竜巻を使っての高速移動は、ミライさんを助ける時にアタシが偶然編み出したオリジナル技だ。

 カノエさんが使っているところなんて見たことがない。

 ってことは、アタシの技を見て、すぐさま実演したってことだ。


 スゴイ! スゴイ!! スゴイ!!!


 アタシが地道に三半規管を鍛えまくってようやく実践レベルにこぎつけた技を瞬時にコピーするだなんて!

 さすが実力派探索者のカノエさんだ。天才すぎる! カッコイイ!!


 アタシは、カノエさんをガン見する。せっかくの生カノエさんなんだ!

 その美しいお姿を網膜に焼き付けておかないと!!


 アタシは、落下地点に最低限の注意を払いながら、カノエさんのお姿に全集中する。

 その時だ! カノエさんがこちらをチラリと見つめてきた。


「きゃあああああああ! 目線もらえたぁああ!! もう死んでもイイ!

 って……ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」


 興奮のあまり、完全に気が動転してしまった。

 アタシは、バサバサと木の枝にぶつかりまくりながら、不恰好に顔から着地をする。


(危ない……本当に死ぬところだった)


 アタシが、葉っぱと泥だらけになったコスチュームをパンパンとはらっていると、


「ええええ!」


 いつの間に近づいてきたんだろう。目の前にカノエさんが立っていた。

 カノエさん顔ちっさ! 髪サラサラ!! 美人すぎる!!!


 ヤバイ! ヤバイ!! ヤバイ!!!


 落ち着けロカ! 緊張している場合じゃない。またとないチャンスなんだ!

 しっかりと自己紹介をしないと!!!!


「は、はははははは初めまして! ア、アタシ『ロカラブチャンネル』っていうダンジョン配信者をやっている、露花つゆはなロカって言います。

 カ、カカカカカカ、カノエさんに憧れて、ダンジョン配信者になりましたのれふ!!」


 ……ああぁ、アタシってなんてカッコ悪いんだろう! 言葉なんてカミカミのヨレヨレだ。


 そんなダメダメJKのアタシのことを、カノエさんは、猫のような瞳を細く細ぉくして、じーっと見つめてくる。

 そしてしばらく見つめた後、おもむろに目を閉じて「スンスン」とアタシの胸の辺りの匂いをかいだと思ったら「ガバッ!」っといきなりはがいじめにされた。


「なんじゃこりゃー! なんだこの可愛すぎる美少女は! 今すぐお持ち帰りなのだ! お持ち帰りでおもてなしなのだ!!」

「は……はひ?」


 えっと……これ……どう言う状況??

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