第36話 美少女、第8層でまたアイツと出会う。

「ここが、第8層??」


 アタシは、初めて足を踏み入れた第8層を見渡す。

 うっそうとした原生林が広がっていて、なんだか暑苦しい。湿気がひどいんだと思う。


 アタシはカメラを地面に置くと、2メートルくらい離れてスイッチをオンにする。

 するとカメラはフワフワと浮いて、アタシをバストアップで映すアングルでピタリと静止した。


 アタシが使っているカメラは、無重力機能と、AI機能が搭載されている最新鋭モデル。

 スマホで撮りたい被写体と撮りたいアングルを記憶させると、あとは自動で撮影してくれるからとっても便利だ。


 でも、近頃はだんだんと不便を感じている。


 今の設定は、アタシのパンチラを激写するために、アタシが激しく動くときはあおり気味に撮影するように設定しているし、そもそもおじさんを被写体として登録していないから、毎回必ず見切れてしまっている。


 でもまあ、ファンの間では、あおり気味の構図になったときの「保存しました」が合言葉になっているみたいだし、スパッツを履いていることに対しても、「スパッツはむしろご褒美」と、好意的にうけとってくれているようだ。


 でもって、毎回見切れているおじさんも、既にネタ扱いされているから下手に設定を直してしまうよりは、このままのほうが一周回って面白いのかもしれない。


「じゃあ、おじさん、撮影開始するから」

「わかった」


 アタシは、カメラの録画スイッチを押すと、とびっきりの笑顔をつくってカメラに向かって手をふった。


「さあ、今日も始まりました! L・O・K・A・L・O・V・E! ロカラブチャンネル!! 応援よろしくね!」


 おじさんも、無表情でぺっこり斜め45度にお辞儀をする。


「今週は通常会。先週はミライさんとのコラボでお休みだったおじさんも参加でーす。おじさんファンのみんな、拍手拍手ー!!」

「俺みたいなおじさんにファンなんているのか?」


 おじさんが首をかしげる。


「いるって!! おじさんのダンジョンうんちく情報は毎回大人気だし、最近はおじさん目当ての女性ファンだっているんだよ!」

「そうなのか……」


 おじさんは無表情で返事をする。

(うーん、おじさん、女の人にほんとーに無関心なんだよな)


 アタシは、ニコニコ笑顔のまま話をつづける。


「今回は通常会なんですけど、結構なイベント発動です。

 なぜなら第8層を探索しちゃうからでーす!

 レッドライセンスが必要となる第8層には、3メートル級までのモンスターが登場します。しかもこの層からは、知能の高い哺乳類型が登場して……ふぎゃ!」


  アタシは会話の最中だというのに、おじさんに強烈なタックルを喰らう。

 でも、仕方がない。

  アタシたちは今、ちょっと、いや、かなり非常事態におちいっているからだ。


  アタシの立っていた場所には、大きなこん棒が振り下ろされている。しかも2本!!

  アタシはサイクロプス型に襲われたんだ! しかも2体!!

  なんで? なんでまた出できたの?? 最下層にしかいないはずだよね???


「クソッ! このダンジョンはどうしちまったんだ?」


 おじさんは苦々しくつぶやく。


 でもこれはむしろチャンスかもしれない。

 前回仕留めそこなったサイクロプス型に、こんなにも早くリベンジできるチャンスがおとずれたんだもの!!

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