第29話 美少女、おじさんを打ち上げに参加させる。

「さてとー、撮影もおわったことだしー。

 お楽しみの打ち上げしちゃおっかー。何食べにいくー?」


 ミライさんは、ほがらかにアタシたちに質問する。


「え? 打ち上げでも食べるんですか?」


 もうこれ以上食べられないんだけど……。


 あたしは、ライブ配信中にごちそうになったミライさんの豪華ダンジョン飯でいっぱいになったお腹をさすりながら質問すると、


「ああ、いつものことだよ」

「ミライの食欲は底なしだからな」


 と、ミライさんの代わりに、田中さんと鈴木さんが答えてくれた。


「いつもは、居酒屋コースなんだけどー。ロカちゃん未成年だしー、カフェでお茶する感じかなー?」


 ほっぺたに指を当てて、可愛く首をかしげるミライさんに向かって、アタシはOKサインを出しながら返事をする。


「はい、わかりました。でも、お茶だけでいいですか? これ以上、食べられそうにもないんで……」

「やったー! 決まりだね!! じゃあ、行こう行こう!!」


 ミライさんは、笑顔でアタシの手をとると、ダンジョンの出口用魔法陣へと足をすすめていく。そのときだ。


 ピポパポピポパポ♪ ピポパポピポパポ♪


 ポケットの中の携帯がなった。スマホを取り出すと、画面には「おじさん」と書いてある。

 アタシはスマホをタップして電話に出た。


「もしもし? おじさん? ちょうど今撮影が終わったとこだよ」

(そうか、俺は今ダンジョンの入り口にいるんだ。ちょっと渡したいものがある)


 渡したいモノ? なんだろう??


「うん! いいよ、でもこれから、ミライさんたちと打ち上げなんだ。せっかくだから、おじさんも打ち上げに合流しない?」

(うちあげ。そういうのもあるのか。配信に参加しなかった俺がおじゃましたら迷惑にならないか?)

「全然、そんなことないと思うよ! 一応聞いてみるね!」


 アタシはスマホを離すと、ミライさんたちに質問する。


「おじさんが今ダンジョンの入り口にいるんです。おじさんも打ち上げに合流してもいいですか?」


 アタシが質問すると、田中さんと鈴木さんの目の色が変わる。


「え? 田戸蔵たどくらさんがいらっしゃるんですか! うわー光栄だなぁ!」

田戸蔵たどくらさんとテーブルをご一緒できるなんて……ああ、夢みたいだ。ミライちゃんも問題ないよね」

「モチロンー。打ち上げはー、たくさんの方が楽しいしー」


 鈴木さんに質問されたミライさんは、ご機嫌で返事をする。


「キマリですね。おじさん、みんな大歓迎だって」

(そうなのか? でもなんだか悪いな……)

「そんなことないって、じゃあ、今から帰るから、ちょっと待っててね♪」


 アタシはスマホを切ると、ニコニコ顔のミライさんと、興奮気味な田中さんと鈴木さんと一緒に、出口の魔法陣へと向かっていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る