第28話 美少女、おじさんの経歴に感嘆する。

*ここから再びロカ目線のパートです。


「それじゃー、美味しいご飯をたべおわったところでー、今日のコラボ企画はこれでおしまいでーすー」

「みんな、楽しんでくれたかな? それじゃあ最後の合言葉♪ あ、せっかくだからミライさんいっしょにやりましょーよ!」

「わかったー、いいよー」


 アタシの提案に、ミライさんは笑顔でうなづいてくれる。


「それじゃ、ミライさん「せーの」で、合わせてくださいね♪」

「りょうかいー」

「それじゃあ……せーの!!」


「「L・O・K・A・L・O・V・E! ロカラブチャンネル!!」」

「チャンネル登録よろしくね♪」

「『ミライのゆるダンちゃんねる』もおねがいしますー!」


「「バイバイー!」」


 アタシは、満面の笑みで視聴者に手を振ると、カメラの電源をオフにする。カメラは無重力機能が切れて、ゆっくりと地面に落ちた。

 アタシは、カメラを小走りで拾いに行くと、ミライさんにお礼をする。


「ミライさん、今日は本当にありがとうございました!

 同接1万人なんて、初めてですよ!!」

「うふふー、よかったー」

「料理も本当ーに美味しかったです!」

「えへへー、うれしーなー」


 ミライさんは、照れながら頭をかく。


 ミライさんはとってもいい人だ。

 チャンネル登録者50万人越えの大人気ダンジョン配信者とは思えないくらい腰が低くて、アタシなんかの駆け出し配信者に優しくしてくれる。


「田中さんと、鈴木さんもありがとうございました」


 アタシは、ミライさんのサポートスタッフの探索者のふたりにもお礼をする。


「いえいえ、とても楽しかったですよ」

「そうそう。ロカちゃんセンスいいから、今日はめっちゃラクできたしさ」

「そんな、おふたりがアタシの見せ場を作ってくれたからですよ」


 サポートスタッフの田中さんと鈴木さんはかなりの実力者だ。配信で見ていると、毎回、後衛のミライさんが活躍しているように見えるけど、そこに至るまでのお膳立てを、カメラの見えないところでしっかりとやっている。職人技だ。

 聞けば、田中さんは13年、鈴木さんも10年間ダンジョン探索者をやっているベテランらしい。


 田中さんは話を続ける。


「でも、本音を言っちゃうと田戸蔵たどくらさんの戦いぶりをもう一度、間近で見たかったな……」


 田戸蔵たどくら……? あ、おじさんのことか。

 田中さんの言葉に、鈴木さんも興奮気味に相槌をうつ。


「ですよね! 伝説の『ブラックライセンス』所持者の戦いを間近で見れるチャンスなんてそうそうないですよ!」


 ブラック……ライセンス? なにそれ??

 確かおじさん、相当昔に入手したから黒いだけって言ってたけど。

 アタシは気になって田中さんと鈴木さんに聞いてみる。


「あの、『ブラックライセンス』ってそんなに凄いんですか?」

「凄いなんてもんじゃないよ!


 アタシの質問に、鈴木さんは興奮気味に返事をした。


「ブラックライセンスは、まだダンジョンが未知の脅威だった時代に、国から選ばれた人物だけがなれた、まさに英雄の証だよ!」


 田中さんも話に加わる。


「そうそう! 『シェールストーン』の中に閉じ込められた『マナ』のエネルギー活用方法を発見したのも、『ブラックライセンス』を持つ10人の探索チームによる命懸けの探索のたまものなんだから!」


「そ、そんなにすごいんだ!?」


「そうとも! ブラックライセンスを持つ、田戸蔵たどくらさんに指導してもらっているロカちゃんは、きっと相当の才能の持ち主なんだと思うよ」


「ああ、間違いない。俺はね、ロカちゃんが近い将来、霜月しもつきカノエと肩を並べる探索者になるんじゃないかって期待してるんだ」


「そ、そんな……カノエさんだなんて、おそれ……おおいです」


 アタシは慌てて否定する。恥ずかしくて顔が真っ赤になるのがわかる。


「えー、ロカちゃん、そんなにすごいんだー。

 てことは、今日の動画、お宝動画になっちゃうねー。

 みんなに自慢しちゃおー♪」


 ずっと話を聞いていたミライさんがニコニコしながら会話にまざってくる。


「もう、ミライさん! からかわないでくださいよ!!」


 アタシは、ミライさんの言葉にテレテレと顔を真っ赤にしながら、おじさんのとんでもない経歴に衝撃を受けていた。

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