第20話 おじさん、美少女に濡れ衣を着させられる。

 俺からスマホを奪ったロカは、視聴者からの質問に回答をしていく。


「『シェールストーン』は、全部で5色あるんだけど、人によって使いこなせる色にばらつきがあるんです。

 得意な色のシェールストーンは、出力を調整したり、形状変化をしやすくなります。

 アタシの場合は、おじさんに診断してもらって緑の『シェールストーン』に適性があるとわかったので、メインで緑の『シェールストーン』を使っています」


 ロカは、スマホをチラリと見ながら、視聴者からの質問によどみなく回答しつづけている。


「え? 途中、おじさんのところに行った理由をしりたい?」


 めざとい質問をみつけたからだろう。ロカはイキイキとした顔で質問に答える。


「いい質問ありがとう! 実は黄色い『シェールストーン』は、換金をする以外にも身体能力を強化する効果があるんです!!

 『シェールストーン』をようく観察すると、『マナ』が入り込んでいる場所に細やかな亀裂が入っているんだけど、そこに力を加えることで割ることができるんです。

 アタシの力量ではまだ砕くことができないので、そこだけおじさんに手伝ってもらいました♪」


 そう言うと、ロカは空中にふわふわと浮いているカメラにむかってぺろりとしたを出す。

 さすがはデジタルネイティブ世代だな。アナログ人間、しかも人前に出るのが苦手な俺にはとてもできない芸当だ。


 完全に手持ち無沙汰になった俺は、ロカが倒した恐竜型がドロップした『シェールストーン』の回収を始めることにする。


「あ、でも注意してくださいよ。

 黄色い『シェールストーン』を体内に取り込むと、一時的な身体力向上の引き換えに大きな反動がおとずれます。

 身体を鍛えていないと、しばらく動けなくなるので注意してくださいね♪

 アタシも初めて黄色いマナを吸った時は、反動で身体が動かなくなっちゃって、おじさんにたっぷり「わからせ」られちゃいました❤︎」


 そう言うと、ロカはぽっと頬を赤らめる。

 おいおい! なんだその思わせぶりな言い方! それだと俺がロカに妙なイタズラしたみたいじゃあないか!


 俺が、たまらずツッコミを入れようとした時だった、


(……きゃああああ!)


 ん? なんだ?? 遠くから悲鳴が聞こえてくる。


「次は、いよいよ第8層を探索します。楽しみにしてくださいね♪

 それじゃあ、最後の合言葉…………」


 ロカが配信を続ける中、俺は微かに聞こえる声に集中する。


(……誰か助けて!! このままじゃあ全滅しちゃう!!)

(……おいおい! 第7層なんだぞ!? なんで最下層エリアのサイクロプス型がいるんだよ!!)


「サイクロプス型だと!? ありえない!!」

「きゃ!? なに、おじさん??」


 突然叫んだ俺の声に、シメのあいさつをしようとしていたロコがビクリと驚く。


「他の探索者がサイクロプス型に襲われている! 俺は今から助けに行く。ロカ、お前はそこで待機していろ!」

「え? ちょ、ちょっとおじさん??」


 俺は、黄色い『シェールストーン』を左手でパキリと割ると、黄色い『マナ』を吸い込んで大急ぎで悲鳴の聞こえる方へと走り出した。

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