第16話 おじさん、美少女の成長に目を見張る。

*今回から、ふたたび、おじさん視点の話に戻ります。


 今日は土曜日、時刻は9時50分。ダンジョン解放の10分前だ。

 今日もダンジョンの入り口には、一般客が長い列をつくっている。


 ロカの師匠となって1か月。ロカは予想通り、いやそれ以上の成長を見せていた。

 稽古は、週2回。ロカの学校が休みの土曜日と日曜日。


 土曜日は黄色い『シェールストーン』の『マナ』を吸引して行う肉体鍛錬。

 日曜日は武器を使っての戦闘訓練。


 平日に課している、高校までのランニングが功を奏しているのだろう。初めて『マナ』を吸ったときは、その反動でしばらく動けなくなっていたロカも、今ではほんの少しの休憩で、身体が回復するようになっていた。

 そのかいがあって、1度の訓練で2回3回と『マナ』を吸っての鍛錬ができるようになり、この1か月で見違えるような身体能力を手に入れた。


 日曜日に行っている武器を使っての戦闘訓練については、俺の方からは基本的には口出しをしない。

 ロカが目指す戦闘スタイルには、霜月しもつきカノエという確固たる目標があるからだ。

 近接武器をあやつり、蝶のように舞い、蜂のように刺す。俗にいう回避盾スタイルを完全にモノにしていた。


「おじさんー♪」


 ロカが手をふってこちらに走ってくる。いつものジャージスタイルで、肩にはリュックを背負っている。


「おはよう、ロカ」

「はぁはぁ、おはよう! おじさん♪」


 ロカの家から、うしとらのダンジョンまで10キロちょっと。

 先週から、ロカはウォームアップもかねて、家からジョギングで来るようになっていた。


「今日も稽古よろしくね!」

「ああ。といっても最早第7層でロカのモンスターの相手になるやつはいないだろう。ロカ、お前もそろそろ配信を始めたくてウズウズしてるんじゃあないのか?」

「えへへ、ばれた? おじさんにいつ言われてもいいように、撮影用衣装とカメラはばっちりリュックにはいってるよん♪ じゃあ、ちょっと着替えてくるから」


 そう言うと、ロカはスキップしながら更衣室へと向かっていき、10分後、髪をサイドテールにして、へそ出しミニスカの撮影用ファッションで現れた。


「おまたせ! 早速探索に行きましょう♪♪」


 ロカは大喜びで俺の腕に自分の両腕をからめると、俺の腕をぐいぐいと引っ張って、探索者用ダンジョンの受付へと進んでいく。


「おいおい、あの娘、ラブロカチャンネルのロカちゃんじゃね?」

「本当だ。最近めっきり配信しないから引退したんだと思っていたよ」

「腕を組んでるのは、アシスタントのうんちくおじさんだよな」

「てことは、ラブロカチャンネル久しぶりに配信するのかな?」

「マジで! うわー! めっちゃ楽しみなんだけど!」

「俺、絶対ライブで見ようッと!」


 なんだなんだ? ロカのやつずいぶんと有名になっているな。てかなんなんだ『うんちくおじさん』って。

 俺は首をかしげながら、受付を済ませ、ロカと一緒に魔法陣に入り、ダンジョンへと潜っていった。

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