第17話 おじさん、美少女のパンツの秘密を知る。

 俺とロカは、受付にライセンスを見せると、魔法陣で第7層へと潜る。

 もう何度となく足を運んだ、見飽きてしまった岩肌の土地が広がっている。


「それじゃあ準備をするから……」


 ……ゴゴゴゴゴゴ


「キャ! なに? 地震??」

「いや、すぐ上の第6層で、ダンジョンを整備している音じゃあないのか?」

「あ、そういえば、おじさんってアタシとコンビ組む前はダンジョン整備士だったんだっけ?」

「ああ、工期は今月いっぱいまでだったハズだから、急ピッチで進めているんだろう」

「オープンしたらアタシも行ってみようかなぁ。限定スイーツ販売するみたいだし」


 現場監督の逆村さかむらさん、俺以外も腕が立つベテラン勢を何人かクビにして、残ったのは新人ばっかりだったはずだ。あいつらだけで本当に今月中に間に合うのだろうか……。まあ、クビを切られた俺には関係のないことだが。


「おじさーん、準備できたよー」


 俺が他愛もないことを考えていると、ロカがスマホを渡してきた。


「スマホに返信が来るから、おじさんが読み上げてね。さすがに本気で戦いながらコメントの拾い上げは難しいから」

「わかった。読み上げるだけでいいんだな」

「誰のコメントを読み上げるかはお任せするからよろしくね。まあ、今日の配信をみたら、今までのファンはほとんどいなくなっちゃうかもだけど……」

「?? なぜだ??」


 俺が首をかしげると、ロカは自嘲気味に答える。


「今までは、JKブランドにおんぶにだっこだったからさ、下手したら1割以下になっちゃうかも」

「そういうものなのか……」

「でも平気! アタシの目標は、あくまで霜月しもつきカノエさんみたいな本格的な女性探索者なんだもん!」


 そう言うと、ロカはリュックからカメラを取り出すて、スイッチを押す。

 するとカメラはフワフワと浮いてロカの顔の正面で止まった。

 ロカはカメラに向かってとびっきりのスマイルをつくってライブ配信をスタートした。


「みなさんおひさしぶりです! L・O・V・E・L・O・K・A・! ラブロカチャンネル!!

 1か月のあいだ、配信を停止していてごめんね! あと、今日は大事なことを伝えたいと思います!」


 ロカは、少し緊張気味に息をはくと、カメラにむかってしゃべりはじめた。


「今までは、お色気メインの配信でしたが、これからは路線を変えて、霜月しもつきカノエさんみたいな本格的な配信探索者を目指したいと思っています!

 そのために、1か月間、この人のもとで修業をしていました」


 そう言うと、ロカはリモートのスイッチを操作して俺の前にカメラを向ける。


「アタシの師匠の……えっと名前なんだっけ? ま、いいや『おじさん』です!!」


 俺の名前、いい加減覚えろよ! 俺は心の中でつっこみながらカメラにむかって会釈をする。


「あと、これは最初にお伝えしないといけないと思うので、先に告白します。

 今まで履いていたショーツのことを見せパンと言ってましたが、あれ、本当は普通のパンツでした。今までだましていてごめんなさい!!」


 やっぱりそうだったのか……てかその告白必要か??


「でも、これからは霜月しもつきカノエさんみたいな本格的な配信探索者を目指すので、今日からは、この本当の見せパンを履いて配信をすることにします」


 そう言うと、ロカはミニ丈のスカートをたくしあげる。

 すると一分丈の黒いスパッツが丸見えのもろ見えになった。


「今まで、お色気目的でラブロカチャンネルを見ていた人には本当に申し訳ないけれど、もしよかったら、引き続き応援してくれるとうれしいです!」


 ……別にそんな表明いらないんじゃあないのか? そう思った時だった。


 ピコん!

 

 スマホに、メッセージが入ってきた。


「ロカ、メッセージきてる。それも結構たくさんある。いくつか読み上げるぞ!」

「う、うん」


 ロカが緊張した面持ちでこちらを見つめる中、俺は淡々と届いたメッセージを読みあげ始めた。

 

『全然、オッケー!!』

『スパッツでもうれしい!』

『むしろスパッツはごほうび!!』


「え? 本当??」


 ロカは、予想外といった顔をする。


『配信ずっと待ってた!』

『俺たちは、頑張るロカちゃんがみたい』

『修行の成果楽しみ!』

『いいかげんおじさんの名前はおぼえてあげてください』


「みんな、ありがとう! ぐすん……アタシがんばる!』


 ロカは、感極まってあふれた涙をごしごしとふくと、


「今から恐竜型を、おじさんの力を借りずにアタシひとりの『実力』で倒します!

 1ヶ月間の修行の成果を見ていてください!!」


 と言ってカメラに向かってにっこりと微笑むと、弾けるように意気揚々と恐竜型の群れへと飛び込んでいった。

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