第13話 美少女、おじさんにハメられる。

*ここからしばらくロカ視点のお話です。


 恐竜型を一撃で倒したアタシに、おじさんが声をかけてくる。


「ロカ、あとは実践あるのみだ。『マナ』の効果が効いている間に、恐竜型を倒しまくって経験値を稼ぐんだ。いきなり倒すんじゃあなく、できるだけ部位破壊を意識しながら戦ってみろ!」


 おじさんが、アタシの背中を軽く押してきた。なんだか力が湧いてくる気がする。


「わかったわ、おじさん!! よーし! カノエさんめざして頑張るぞ!!」


 アタシは、恐竜型4匹の群れの中に側転をしながら飛び込むと、そのまま開脚をして、旋回蹴りをお見舞いする。カノエさんの得意技だ。


「スゴイ、身体が思ったように動く!」


「ぎゃおう!」


 頬を蹴られた恐竜達は怒りに任せて、大きな口を開けて飛びかかってくる。


「あは♪ スキだらけじゃない!」


 アタシは飛びかかってくる恐竜型の腹の下に潜り込むと、両足に力を込めて思い切り伸びをしてガラ空きの腹に強烈な肘鉄を喰らわせる。これもカノエさんの得意技!


 すごい! すごい!! すごい!!!


 アタシは毎日必ず観ている、カノエさんの探索実況動画の動きをイメージしながら、次々と恐竜型を倒していった。


 そう、これ! これがアタシが思い描いていた戦闘スタイル!

 蝶のように舞い、蜂のように刺す!!

 アタシのあこがれ、カノエさんの戦闘スタイル!!!

 スゴイ! アタシの見込んだ通り、やっぱりおじさんは、凄腕の探索者だったんだ!!


 ああ、今日カメラ持ってくればよかったな。

 このバトルを配信すれば、アタシも実力派配信探索者として認められるのに。


 10分くらいたっただろうか、おじさんに言われた通り、部分破壊を意識しながら4匹の恐竜型を大量のシェールストーンへと変えていった。

 あたしは、腕いっぱいにシェールストーンを抱えておじさんのもとへ向かっていく。


「えへへ、大量! 大量!! これだけあれば、おじさん1ヶ月は生活できるんじゃない? アタシに感謝してよ……ね…………あれ?」


 足に力が入らない。アタシはその場にぺたりと座り込んだ。

 おじさんは、アタシのことをニヤニヤとながめている。


「お、どうやら反動がきたようだな?」

「え? おじさん、どういうこと?」

「黄色いマナは、身体力を飛躍的に向上させる代わりに、使用後にその反動が来るんだ。

 ロカ、お前はろくに身体を鍛えてないからさぞ辛いだろう。観念するんだな」

「ちょ、ちょっとおじさん、なにするの!?」


 おじさんは、ニヤニヤと笑いながら近づいてきて、アタシをうつ伏せに寝させると。ふとももをサワサワとさわってくる。

 え? おじさんひょっとして、アタシのことを騙したの!?


(に、逃げなきゃ! 今すぐ!! じゃないとアタシ、このままおじさんに……)


 アタシは周囲を見た。体は一切動かないから、目だけを動かして。

 でも、誰もいない。アタシはおじさんとふたりっきりだ。


 ゾクリ……


 背中に冷たいものが伝わるのがわかる。


 世の中は優しい大人ばかりじゃない。怖い大人もたくさんいる。

 知らない人について行っちゃいけない。知らない人を不用意に信じてはいけない。


 アタシは、小さいころからずっとママに言い聞かされてきた言いつけを思い出しながら、無抵抗で、おじさんにふとももをさわさわと触られ続けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る