第2話 おじさん、ダンジョンに向かう。

 翌日、朝9時、俺は身支度を整えて新しい職場に向かった。

 もっとも、行き先は昨日と同じ場所なんだけれども。


 最寄駅から電車に揺られて30分。俺は電車を降りると、そこから徒歩でうしとらのダンジョンへと向かっていく。


 地球に突然ダンジョンが出現するようになって15年。

 世の中は大混乱に陥った。

 なかでもダンジョンが多発した日本は、諸外国に国家の存亡を危ぶまれるほどだった。


 だが、とある財閥系企業の発表が状況を一変させる。


 モンスターがドロップする宝石のような物体『シェールストーン』。その中に閉じ込められてあるキラキラと光る『マナ』を抽出することで、エネルギー資源として活用できることが判明したからだ。


 以降、ダンジョンは貴重なエネルギー資源の採掘場所となり、日本国は世界一のエネルギー産出国となった。


 今ではマナの抽出法を確立した財閥系企業が、ダンジョンの管理、および整備業務を独占し、計画的にモンスターを狩ることで、エネルギーの安定供給を行なっている。


 安定供給の方法、それは、ダンジョンを『遊戯施設』として開放することだった。


 ダンジョンに赴いてモンスターを狩る『モンスター狩り』は、程よいスリルを味わえるうえに、回収した『シェールストーン』を運営会社に買い取ってもらうことで現金に換金することができる。


 『モンスター狩り』は、レジャーとお小遣い稼ぎを兼ね備えた遊戯として大ブームになっていた。


 俺が昨日まで働いていたダンジョン整備会社は、『モンスター狩り』の施設整備を行うのが目的だ。

 自然現象として発生したダンジョンの整備を行い、お客様が安心安全にモンスターハントが行えるレジャー施設へと整備する仕事だ。


 うしとらのダンジョンは、第1層から第3層までが一般客が『モンスター狩り』を行えるゾーン。

 第4層から第6層までが、俺が昨日まで働いていた整備中の階層だ。

 

 そして、今日から始める探索者の仕事を行うのは第7層以降。

 凶暴なモンスターが闊歩する、命の補償ができない危険極まりないエリアだ。


 ライセンスを持つ探索者が危険なモンスターを排除し、比較的安全なモンスターのみを残して設備会社に引き渡す。


 それが、ダンジョン探索者の仕事なのだ。

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