6話 捧げ物

やっと泣くのを止めた少女を肩に乗せ、ミナコロは帰らずの森を歩きます。


一体何処へ行こうと言うのでしょうか。

まあ、どちらにせよ少女が最後に行く先は、すぐそこにある〝もの〟の胃袋だと言う事には変わりありませんが。


『さあ、着いたよお嬢さん』


「ここは……」


2人の辿り着いた場所、そこには沢山の野菜やキノコが生えていました。どうやらここはミナコロの作った畑のようです。


なるほど、まずは『捧げ物』肥え太らせてから……という訳ですね。


そうしてミナコロは少女を地に下ろし、作物を地面からいくつか掘り起こすと、彼女の目の前にそれをどさりと置きます。


『さあ、これをたんと食べて元気を……しまった。お嬢さんはこのまま食べられないんだったね。さて、どうしたものか……』


ミナコロはそう言って頭を抱えます。

どうやら彼はこれを見せつけた後で少女に安寧もないままに最期を与えようという考えなのでしょう。


素晴らしい、大地の恵みであるはずのものから絶望を産み出すとは。ミナコロは〝そう言った物事〟においては天才なのかもしれません。


「ふふふ……あ、ご、ごめんなさいっ!私……」


ミナコロの様子を見た少女はつい笑ってしまいます。


その後でそれが失礼だった事に気付いたのか、すぐさま顔面蒼白となり、ミナコロに「ごめんなさい、ごめんなさい」と言い続けるのでした。


これは良くありませんね。あくまで絶望をもたらす過程とは言え、彼女は自分のために動き、悩んでいたミナコロを……自らが神と崇めていたはずの存在を馬鹿にしてしまったのです。


私共としてもこれには憤慨です。何故ならば怒ったミナコロはすぐに少女を殺してしまうでしょうから。しかも何の〝ひねり〟も無いままに。ああ、何と愚かな少女なのでしょう。


それを見たミナコロはやはりと言うべきか、少女の頭に手を伸ばします。これで間違いなく、結果は私共の予想した通りとなってしまうでしょうね。


『どうして謝るんだい?君は謝るような事など何もしてないよ。そんな事よりお嬢さん、やっと笑ってくれたね。さあ、もう謝らないで、どうか笑っておくれ。』


「はい。神様……」


『……何度も言うが、私は神ではないんだよ?』


「いいえ、貴方は神様です。私にとっての神様です」


少女はそう言って泣き腫らした顔で微笑んで見せ、頭に置かれていたミナコロの指を自身の胸へと抱き寄せるのでした。


……何故?何故ミナコロは怒らない?


自発的に彼へと触れた事により、この女にとってのミナコロは『崇めるもの』から『触れても良いもの』となった。


つまり〝あれ〟は口では神、神とのたまいながら、その存在を侮辱するような行為をしたのですよ?神と崇めていた存在を自身で格下げさせたのですよ?


なのに何故?何故一体ミナコロは……もう、訳が分かりません。


ひとまず、彼女は無事だったようですね。

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