孤独
木戸が部屋から去った後も大久保はしばらく動くことができなかった。回転の速い大久保の頭脳を持ってしても事態を処理できなかったのである。“木戸が辞めた?”大久保は困惑していた。そして長い呆然の後にようやく感情が込み上げてきた。
“吉之助さあが政府をやめて、木戸までわしのもとから去ってしまった。わしはもう、一人でやっていくしかないのか,,,?”その日以来、大久保は人を頼らなくなった。いや、そもそも西郷が辞めたあたりから大久保は独裁的な政治を行っていたし、元を辿ればそれ以前から大久保が心を許せる人物は少なかった。しかし今回の件で大久保は完全に孤独になってしまった。西郷と木戸が辞めた今、自分が政府を率先していくしかない。馴れあえば弱みを握られる可能性がある。もう誰とも心を分かち合うことは出来ない。大久保の防御は前よりも堅くなった。しかし、西郷と木戸が辞めた今、大久保の異変に気付くものは誰もいない。
それからというもの、大久保は自ら政治を行うことが多くなった。持ち前の能力を駆使してさまざまな問題を解決し、着々と業務をこなした。だが、ここ数年で政府からはあまりにも多くの優秀な人材が抜けてしまった。木戸が辞めてから一年も経たないうちに、政府は行き詰まりを感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます