画策

何が何でも西郷さんを朝鮮に行かせない。その思いから大久保はとある男の家を訪れることにした。しかしそれは西郷でも木戸でもなかった。

「岩倉さん、西郷さんが朝鮮に行こうとしている話、聞きましたか?」大久保が訪れたのは岩倉邸であった。

「ああ、昨日そんな話聞いたなぁ。けど、今はそんな時やない。止めなければあきまへんなぁ」岩倉はさらりと言った。

「岩倉さんもやはりそう思いますか。今は日本国内を安定させることが優先だ。とても西郷さんを朝鮮になんか行かせられない。しかし、留守政府内で西郷さんの朝鮮行きはほとんど決まってしまったと言うし、いったいどうすれば,,,」そう悩む大久保に岩倉は

「そんなん簡単や、西郷さんの人気を利用すればいい」と答えニヤリと笑った。

明治天皇に岩倉が上奏文を提出したのは、それから間も無くのことである。岩倉は明治天皇が西郷に好意を抱いていることを知っていた。それを利用して西郷が朝鮮に行けばどうなるか、危険性をくどくど説いたのである。結果、天皇は岩倉の要求を認め、西郷の朝鮮行きを却下した。もし、このとき大久保が岩倉と画策しなかったのならば、日本の歴史はどうなっていたのだろうか。誰も知る余地はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る