なんで?

「木戸!!!」西郷の家を出た木戸を大久保は呼び止めた。

「なんだ」木戸は不愛想に振り返った。

「なんだじゃなかろう!!!お前のせいで吉之助さあがわしにまで帰ってくれと言ってきた」そう憤慨する大久保に木戸は

「大久保、あんただって西郷に行ってほしくないんだろう?ならなぜ言わない?」とまっすぐ問うた。

「それは,,,」大久保は口ごもった。「言えるわけなかろう」そう呟いた言葉が木戸の耳にまで届いたかわからない。だが木戸は大久保の心を見透かすように言った。

「西郷さんに一番死んでほしくないのはあんただろう。もちろん俺だって死んでほしかあないが、それ以上に国内を優先するのが先だと思ってる。それと違ってあんたの場合はただ純粋に西郷さんに危険な目にあってほしくないだけだろう。なら何故言わない。本音を言う勇気がないなら、ただの腰抜けだ」そうまくしたてられた大久保は

「なっ、わしだって国内が先だと言う気持ちはある!お前に言われたように欧米では日本をどげんしたらよくできるか来る日も来る日も考えて学んできた。もちろん、西郷さんに死んでほしくないんは本当じゃ。じゃっとん、日本の未来を考えても、西郷さんを朝鮮に行かせるわけにはいかない」となるべく私情を抜いて反論した。しかし大久保の本心など木戸はとうに分かっていた。

「好きなら好きと何故言わない。いずれ後悔するぞ」そう言い放った木戸の言葉はその場でしばらく佇んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る