運命の分かれ道
1871年岩倉具視一行が欧米に行くことになった。かの有名な岩倉使節団である。そのメンバーに大久保と木戸は含まれていた。しかし、あの男がいなかった。
「欧米に?」岩倉に呼び出された大久保は驚いて問い返した。
「そうや。あんさんと木戸さんを含め、何人かとともに欧米に行くっちゅう話になりましてなあ。ほら、少し前、ペリーさんが来た時、なんや不平等な条約結ばされましたやろ?あれを交渉しに行きまひょかいうことになって。それと海外視察やな」
そう何事もなく告げる岩倉に大久保は念のため聞いてみた。
「西郷さんも行きますよね?」それは、大久保にとってかすかな望みをかけた圧でもあったのだが、
「いや、西郷さんには残ってもらいます。なんや、新政府みんなで行ったら日本がスカスカになってしまうやろ?あんぐらい大きな人が日本でドーンと構えてくれていたほうがいい」と、あっさり否定されてしまった。
”吉之助さあをおいて、木戸と海外に!?”大久保が廊下で呆然としていると、岩倉のもとへ行こうとしていた木戸が通りかかった。
「大久保、こんなところでどうした?もしや使節団の話でも聞いて滅入ってるのか?」そう木戸に尋ねられた大久保は「違う」と短く否定してしばらく黙っていた。
「嘘をつかんでもいい。西郷と離れ離れになるのが嫌なんだろ?」そう畳みかけてくる木戸に大久保は
「だから違うといいてるじゃろ!!」と怒鳴っていた。それを見た木戸は
「どうやら図星だな」と笑った。
「ああ、もう、そうじゃ。わしは西郷さんと離れたくない。お前なんかより、どっかに行くのなら、吉之助さあと一緒のほうがよっぽどよいわ」大久保は開き直ってそう告げた。
「あんたはほんとに西郷が好きだな」と木戸は軽く流した後で
「一つだけ言うが、あんたも覚悟を持ったほうがいい」真面目な顔で言って去っていった。
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