カモン明治

「第二の策?」そう繰り返した岩倉は大久保のほうを見て驚いた。それは岩倉が初めて見る大久保の本気の顔だった。

「クーデターを、起こしませんか」そう大久保が提案した。

「クーデター?それは武力で相手をねじ伏せるということかいな?ちょいと強引すぎやしませんか?」そう疑問を呈す岩倉に西郷が答えた。

「いや、武力は最終兵器でごわす。正助どんが、なるべく血を流さない形で相手を屈服させようち言うて。じゃからクーデターいうんは慶喜のいないところで新たな政治方針を決めてしまおういうことです」そして、少し間をおいてから付け加えた。

「じゃっとん、幕府側には納得しない輩もおるじゃろう。そういう輩はこちら側が仕掛けるまでもなく、必ず暴動を起こす。仮にしばらく耐えとったとしても、少し煽ればあっという間に仕掛けてくるじゃろう。そうなったら堂々と奴らを倒す大義名分ができる」そう淡々と告げる西郷の顔は幾度の戦を乗り越えてきた大将としてのものだった。

「武士っちゅうんは全く怖いものでおますなぁ」西郷と大久保が帰った後、岩倉はひとり呟いた。だが、言葉とは裏腹に、岩倉は心強さを感じていた。

そして、1868年1月3日、王政復古のクーデターが行われた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る