実力行使
大政奉還が行われたと知らせを受けた大久保は、西郷の家に駆けこんだ。
「吉之助さあ、慶喜が、大政奉還したち知っとるか,,,」そう大久保が言い終わらないうちに西郷が言った
「おいも今朝聞いた」そう告げる西郷の顔はいつになく曇っていた。
「それで、どうする?」恐る恐る聞いた大久保に西郷は重々しく口を開いた。
「こうなってしまったからには実力く行使も避けられんじゃろうな」
「そんな,,,」大久保は閉口した。そしてゆっくり口を開いて尋ねた。
「それは、吉之助さあが武力を率いて戦うちいうことか?」
「ああ」西郷は短く肯定して続けた。
「じゃが、武力を使うにも大義名分がいる。あん男は、どうしてこうも知恵が働くんか」そうため息混じりに告げる西郷に、大久保はすぐに戦うわけではないことを知って安堵しながらも、
「吉之助さあさあ。実力行使は最後に取っておいてくれもんそ」と念を押しておいた。それから
「岩倉さんのもとに行ってみんか?」と提案してみた。
西郷と大久保が岩倉邸についた時、かすかなぼやき声が聞こえていた。
「慶喜が大政奉還を行った?」岩倉は朝からずっと独り言をつぶやいていた。
「わいが、せっかくわいが天子様から書状をもらったんにいとも簡単に大義名分を覆された。何ということや。慶喜、なにがなんでも懲らしめてやりたい」そう嘆いていた岩倉の耳にかすかな物音が届いた。
「誰や?」岩倉が慌てて振り向くと、後ろには大久保と西郷が立っていた。
「なんや大久保さんと西郷さんやないか」そう安心する岩倉に大久保は
「驚かせてしまいすみません。入り口で声をかけたのですが、返事がなかったのでそのまま入ってきてしまいました」と軽く断った後でつづけた。
「慶喜を倒したいっちゅう気持ちはわしらも一緒です。一緒に第二の策を考えませんか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます