家庭訪問

「大久保が来るなんて初めてだな。道は西郷さんにでも聞いたのか?」出迎えてくれた桂は、少しからかい口調で大久保に聞いた。

「いや」大久保は短く否定し、本題を告げた。

「桂さんに、いや、桂に相談があってきた」

「ほう、また珍しいな」そう面白がる桂に大久保は多少苛立ちながらもこういった。

「おまえに言われてからしばらく考えてみた。わしは、西郷さんがほかのやつと会うことを、やはり素直に受け入れられない。だが、西郷さんの足かせになりたくないというんも本心じゃ。どうすればいいと思う」

「俺じゃなくて西郷さんに相談してみればいいじゃないか、なぜ直接伝えない?」そう疑問を呈する桂に、大久保は

「それができないから、こうしてお前に相談しているんじゃろう‼」と叫んでいた。

「すまん。あんたがあまりにも素直な奴だったからからかいたくなった。」そう悪びれもせず告げる桂に大久保はいらだって帰ろうとした。しかし桂は続けた。

「だが、これは俺の本心でもある。この前、禁門の変で死んだ仲間のことを話しただろう?今さら後悔しても遅いが、俺はもっとあいつらと話しておけばよかったと思ってる。だから、あんたも相手が目の前にいるうちに、ちゃんと話したほうがいい。西郷さんはでっかい男だ。きっと受け入れてくれるだろう。俺から言えるのはそれだけだ。せっかく相談に来てくれたのに、大した助言もできないで悪かったな」

大久保はしばらく立ち止まっていた。そして、思い出したようにこう言った。

「桂、約束守ってくれてありがとう。もうすぐ岩倉さん家に行く予定だったよな。せっかくだから一緒に行かないか」その顔はやけに晴れ晴れとしていた。

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