コミュ障ですか?

岩倉から家に来るよう知らせを受け取った桂は、約束通り大久保に連絡した。

「あの男は、案外律儀じゃの」大久保は、独り言ちた。桂と帰ったあの日以来、大久保は桂に言われたことを繰り返し思い出していた。

「あんたの思いが西郷さんの足かせになってしまう時が来るかもしれない」それは、大久保としても全力で避けたいことだった。”確かに、あの男が言うように、吉之助さあはもっといろいろな人と出会うことになるかもしれない。じゃが、吉之助さあがほかの人と歴史を作っていくなんて、つらくてとても見れんじゃろうな”大久保は西郷への二つの思いの間で煩悶していた。

そしてもう一つ、大久保には桂に言われて引っかかっている言葉があった。「ちゃんと自分の意見を人に伝えたほうがいい」大久保は少し前、西郷にも「正助どんはあまりにも人に相談しないところがある。もっと頼ってもええんじゃぞ」と言われたことがある。はっきり言って、大久保は人に頼ったり、自分の本音を相手に伝えるのが苦手だった。幼少期から優秀だった大久保は、何事も一人で解決できる能力を身に着けていたからだ。それに、”男児たるもの、本音を告げるなど一生の恥”といった、頑固な信念も深くかかずらわっていた。

”だが,,,”大久保はしばらく悩んだ。そして、岩倉亭を訪れる前に桂の自宅へ寄って行こうと決めた。

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