ミスターパイナポー

薩長同盟以降、長州の力は盛り上がっていき、それと反比例するように幕府の力は弱くなっていた。そんなある日、桂が西郷の元を訪れた。

「西郷さん、あんたのおかげで、長州は前と同じくらい、いやそれ以上になった。今こそ協力して幕府を倒す時じゃないんだろか?」そう告げる桂に西郷は答えた。

「今の幕府にもう国をまとめる力はなか。じゃっとん、大義名分もないままに戦を起こしては勝ち目もないぞ。」すると桂が少し目の色を変えて言った。

「ああ、わかってる。俺も今まで同じことを考えていた。だが今日ここに来たのにはわけがある。先日岩倉具視という男の話を耳にした。その男のもとに行けば、何か道が開けるかもしれない。」

岩倉具視。お公家出身で、のちに岩倉使節団の団長となる男である。岩倉使節団の写真を見たことがある人は一度は思うのではないのだろうか。「髪型がパイナップルみたい」と。はっきり言って癖の強い人物である。しかし蟄居処分中であった岩倉の元には多くの人が集まっていた。

「岩倉か。わしも噂には聞いたことがある。公家出身だが、他のもんとは少し違うらしいな」そう尋ねる西郷に桂は短く肯定し、続けた。

「今から岩倉さん家に行ってみないか?話を聞くだけ聞いて、何も得られなかったらまた別の方法を考えてみればいい」西郷は数秒沈黙した後、

「それもそうじゃの。行ってみるか」と答えた。

大久保が西郷の自宅を訪れたのは、それから30分後のことだった。

「今、桂さんと一緒に出かけてますよ」そう西郷の家のものに告げられた大久保は固まった。“吉之助さあが桂と二人きりでどこかに出かけている⁈”

「確か、岩倉様とかいうお公家さんのお宅に行くとかなんとか」そう告げられた大久保は、急いでざっくりとした住所を聞き出し、岩倉邸へ向かって駆け出した。





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