ブラックキューピッド
「吉之助さあどうじゃった?」帰ってきた西郷に大久保は飛びつかんばかりに駆け寄った。
「ああ正助どん。今回坂本くんに頼まれて長州の桂と会うことにしたがあいつはダメかもしれん。意地を張って話にならん」そう疲れ気味に話す西郷に
「そりゃ大変じゃったの」と相槌を打ちながら大久保は内心喜んでいた。
“長州の奴なんかと吉之助さあの距離が近づくはずがない”そんな大久保の安心は僅か2日後に覆された。
「吉之助さあ、また桂と会うち本当か?」
「ああ、坂本くんにどうしてもとまた頼まれてしまっての。あの男にはかなわん」そういって笑う西郷に大久保は複雑な思いがした。そもそも、大久保は坂本があまり好きではない。もちろん接しているうちに悪い奴ではないことはわかった。だがそれが余計に大久保を歯がゆくさせた。いっそ坂本が悪い奴なら、ためらわず西郷と引き離すことができる。それ以前にそもそも西郷と坂本が近くこともなかったかもしれない。しかし現実は違う。坂本は人懐っこく、西郷ともすぐに親しくなった。さらに厄介なのは坂本には人と人をつなげる能力があったと言うことだ。今回桂と西郷が会う場を設けたのは、他でもない坂本である。坂本自身が西郷と親しくすることさえ疎ましい大久保にとって、さらに別の男と会わせると言う行為は多少なりとも耐え難いものだった。
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