ケモノメ軍団、推参!(その6)
「まだまだ甘いな、お嬢。戦いの
中庭を一望できる屋根の上に、その男は座り込んでいた。片膝立ちの格好であり、何かあればすぐに動ける状態だ。
リンたち
ふだんは『
誰もいないはずの屋根の上で、彼は独り言を続けていた。
「敵の方が一枚
「ほう。我の存在にも気づいておったか……」
いきなりヨーゼフの目の前に、赤いローブの
昨夜クラウドを
「それはこっちのセリフだ。あんた、俺の相手なんてしに来る暇ないだろ? ボスがピンチだぜ、助けに行かないのかい?」
「いや、貴様の排除こそが我の今
ここでヨーゼフを自由にさせておくと、いくらでも援護射撃をされてしまう。だから急いでヨーゼフを倒しに来た。
それが狸の
「そうかい。それはそれで、まあ合理的な判断だと思うが……」
振り向きもせずにヨーゼフは、後ろに向かって三本の鉄串を投げつける!
「……まだまだ甘いぜ、あんたも。そんなチャチな幻術、俺に通用すると思ったかい?」
「き、貴様……!」
ヨーゼフの正面にあった
ゆっくりと立ち上がりながら、ヨーゼフは振り返る。
視界に入ってきたのは、狸の
「あのな、俺たちは
「くっ! しかし……」
「ああ、最近の若い連中、ついつい目に頼っちまうやつも多いからな。うちの若いやつも昨日、あんたの世話になったようだが……」
ここでヨーゼフは、自嘲気味に苦笑いを浮かべる。
「……おっと、いけねえ。年をとると、どうも話が長くなる。だけど、話し込んでる場合じゃねえよな。俺の鉄串の威力じゃ、あんたの喉を貫通するほどじゃない。まだあんたは健在なんだから……」
いきなり走り出すヨーゼフ。
彼の両手には、黒い鉤爪が装着済みだった。狸の
「……きっちり
――――――――――――
「卑怯者め……。伏兵を
「あら、あんたには言われたくないわね。あんただって、配下の連中の手を借りてたでしょ?」
今やデグロールとリンの立場は逆転していた。
たとえ半獣族とはいえ、いきなり片目を失えば、行動力は大きく落ちる。ましてや戦いの
デグロールはキリンガルム侯爵を後ろ手にかばいながらも、二人まとめて、梅の
もはや勝敗は決した。そう悟ったリンは、周りに浮かぶ狐火を集めて一つと化し、大きな炎の
その剣を両手で握って、振りかぶり……。
「我ら半獣族はヒトにしてヒトにあらず、ケモノにしてケモノにあらず。ケモノの姿と力を持ちながらヒトの世で暮らすが許されるは、ヒトの心を
リンの口から出てきたのは、連綿と受け継がれてきたハットーの家訓。
そこに続けて、彼女自身の思いを述べる。
「……それなのに、今の
「ぎゃっ!?」
言い切ると同時に、デグロールを一刀のもとの斬り伏せるリン。
ミノグール十人衆というほどの格を持つ
――――――――――――
「デグロール! わしを残して逝くな!」
目の前で
中庭まで視線を向けても、既にデグロール配下の
「ひっ……!」
孤立無援となったのを悟り、キリンガルム侯爵は腰の刀に手をかける。今夜も一応は貴族服だったため、形式的に帯刀していたのだ。
剣術の心得などないが、それでも身を守るために剣を構えてみる。この瞬間キリンガルム侯爵自身は覚えていないが、それは王宮で彼に斬りかかってきたアザッム伯爵と全く同じ構えだった。
「アザッム伯爵に対する一連の所業……。そしてクラウド騎士団長の暗殺……」
赤い髪の
「……ヒトとして生まれておきながら、ヒトの心を
反射的にキリンガルム侯爵も剣を振ろうとするが、全く間に合わない。
リンの炎の
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