第104話
とんでもない特大級の爆弾情報を漏洩した
そんなことになれば、勿論、世界中の賞金稼ぎからも狙われる訳だが、同族であるハッカーからも賞金目当てに追われる立場になっていた。
「ったく、面倒臭い!君ら程度の腕じゃあ、コッチの仕掛けてる網を潜り抜けることなんてできないって理解できないのかなぁ?」
その人物の口から出たのは、そんな酷評と愚痴だった。
愚痴って?
「絶対に見付けられないハッカー」と言うのは、それなりに色々と細かな対策をしているから得られた呼び名であり、あらゆる対策をしているから痕跡を辿られないのである。
つまり、何処かの間抜けなハッカーが罠に掛かったとすれば、次までに別の対策をする必要がある訳だ。
だって原因は、
「本当に面倒だ!いっそ当分の間、休業するしかないか?」
現実的に、数の暴力的にハッキングされ続けると一人での対処は難しいのだ。
ハードもソフトもネット環境から完全に切り離して、完全に別の機材で違法行為をしない
それが分かり過ぎるほど分かっているから出た言葉なのだろう。
「・・・でも、依頼が残ってるってのが問題なんだよなぁ~」
その言葉通り、陰で支援しているパトロンから「とある依頼」を受けているのだ。
それを放棄すると言うのは、流石に不味い訳である。
「参ったなぁ。糸口になりそうな人物を見付けたは良いけど、あれ以来警戒させちゃったのか、全く接触できなくなってるんだよな」
それでも現在自分が置かれている状況は、精神をすり減らすし体力も気力も消費する。
こんな時にこそミスと言うのは発生し易いし、それが命取りになると理解している。
だからこそ・・・
「・・・相談だけでもしてみるか?まあ、ダメって言われるだろうけど・・・」
そんな弱気とも思える言葉が漏れ出ていた。
「・・・って状況で、結構限界が近いんだよね。依頼は受けてるけど、現状このまま活動を継続するのは・・・」
「いや、みなまで言わなくても理解したよ。こっちは君への依頼と平行して進めてた計画に少し遅れが出ているし、数ヶ月・・・そうだな三ヶ月ほどリフレッシュ期間をあげられるよ」
「え゙っ!本気?後からダメとか、急用とか聞かないよ?」
「大丈夫、大丈夫。こちらとしても君が無事でいてくれないと困るしね。些細なミスで捕捉されるのは勘弁して欲しいさ」
絶対にダメ出しされると思っていた要望が、呆気なく了承されて驚いた。
直ぐに事後の変更は不可だと伝えるが、それも
となれば、善は急げである。
いつでも痕跡を完全に消せるように用意していたプログラム群を起動して
これが完了した時点で
そんな撤収作業をしながら、頭の中では三ヶ月と言う長期休みで何をしようか?と楽しそうに考えているのだった。
*** *** *** *** *** ***
今の世の中、何をやるにもネット環境無しってのは難しい。
それは結果として
何でそんなに気にしているか?と言えば、探してた目的をハッキング方法で理解できると言われたことが引っ掛かっていた。
「・・・魔法との組み合わせ方を考えれば考えるほど、やっぱり
そんな風に一人で呟いてみたが、突拍子もない内容なのに意外としっくりときた。
つまり俺の勘的には、特殊能力ってのに納得してる部分があるってことだ。
ただ、それがネットなり電子信号なりを介して相手の事を知るだけ・・・ってそんなピンポイントな特殊能力じゃないだろうなって気はしてるけどな。
仮に俺の考えが正しいとするなら、今後はもっと
全く接触しないっては、たぶん向こうから狙われたら回避は不可能っぽいけど・・・
「極端な話、仲間にできるって選択肢があるなら心強い味方になりそうだが、俺には
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「おいおい、良いのか?」
「
「ああ、賢者との会談は絶対にしなくちゃダメだろう!」
「そうなんだけどね、それは別の方法を考えているんだよ」
その言葉に訝しげな表情で聞き返す。
「別の方法?」
「そう別のね。思ったよりのも周辺の説得に時間が掛かっているし、その時間を使って、日本側に交渉を持ち掛けようかと思ってるのさ」
「それって賢者に会わせろとかか?」
「そこまで直球じゃないけどね」
「確かに
「老害にバレたら、安全でもないんだけどね」
その台詞で二人が笑い出す。
「今でも危ないんだ、危険度が少々増えた所でたいした違いは無いだろう?」
「そうなんだよね。だから、ちょっと極秘裏に日本に行ってくるよ」
「こっちのことは任せとけ」
「頼むよ。何とか賢者に状況を伝えないと国が滅びそうだから、私も頑張ってくるからさ」
*** *** *** *** *** ***
外務省の一室に駆け込んで来る女性職員がいた。
「室長。緊急です」
「何事だ?」
「中東の石油王家のアブドゥーラ皇子が極秘来日されたと、羽田空港から連絡が!」
「何っ!至急警護を手配してくれ!私は警視庁と警察庁に連絡を入れる。あとは・・・担当部署の人間を会議室に集めるように!」
「分かりました!」
弾かれたように部屋を飛び出して行く女性職員など目もくれず、室長は机の上のスマホを取り上げる。
登録されている番号から目的の人物を探し出すとタッチし掛けて、その手が止まった。
「今頃極秘来日って、面倒事の匂いがプンプンしてくるな。ただでさえ多忙なのに・・・」
室長の口からポロリと毀れ出る愚痴を聞く者はいない。
小さく「はぁあ~」と溜息を吐くと、番号にタッチして相手が出るのを待つのだった。
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