第103話

昨夜、停電で保存前の作品が消えてしまったのです。

頑張って復元しましたが、朝になってました・・・


・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・


ここのところ俺が自由になる時間を全て突っ込んでやっていたのは、凄腕ハッカー道化師クラウンの足取りを掴むためにPCとのにらめっこだった。

まあ。俺に簡単に見付けられるなら、凄腕でも何でも無いので、当然何も分からなかった。


元々俺はハードは得意だがソフトはそれほどでも無いし別に悔しくも無かったんだが、その過程でちょっと面白い発見(今さら感が強いが)をしていた。


魔術の術式とプログラムに意外な共通点を発見したのだ!


近年は学校でもプログラムを授業に取り入れているけど、使われているのは新しい言語であるビジュアル言語やJava、Pythonなどらしい。

俺自身も仕事で使っていたのはビジュアル系の言語だったし、すっかり昔使ってたFORTRANなど忘れていたのだが、それが術式と共通点があるとは今まで気付かなかったのだ。


そんな発見をしてしまったために、ちょっとばかり寄り道をしてプログラムと術式のことを検証したりしていたので、実際に凄腕ハッカー探しをしていたのは数日だけかな?

ただ、術式との相性は良いみたいなので、上手くいくと魔法でプログラムに干渉できるかも!


そんな期待をしていた俺は、今非常に困っていた。


「・・・何で探してた凄腕ハッカー道化師クラウンが自分から俺に連絡してきてるんだ?」


俺が無意識に呟いたその言葉が全てを表しているのだが、送られてきたメッセージはこんな感じの英文だった。


道化師クラウンより  私に興味があるようだが、何が知りたいのかな?もしかして〈地球滅亡〉かい?それなら色々教えて上げられるよ!』


反応に困るだろ、これっ!


「返事、した方が良いのか?」


俺が躊躇してる訳は、あっちにも秘密があるように、こっちにも秘密があるからだった。

取り敢えず、今ネットに接続しているPCは新品で購入してきた物で、ハッキングされても問題無いようにヤバイ情報は何も入っていない。

だから、俺がドジをしなければ何かを知られることは無いと思うのだが、俺がそう思ってるだけって可能性もあったりするのか?

何だが心配し始めると、色々と疑心暗鬼なって・・・


実際のところ、タイミングが悪いよな。

術式とプログラムの方で進展があった後なら、何かしら対策ができたはずなんだ。

それが、このタイミングだろ?

碌な対策もできずに凄腕ハッカーとパソコンでメールとか、やりたくないなぁ~。


でも、無視、は悪手っぽいよな。


「マジで、どうしよう?」


俺の呟きに答えるようにメールの着信音が鳴った。

差出人は・・・道化師クラウン

またか?


『色々な人が私を探してますが、あなたが唯一何の情報も無かった人だったので興味が湧いただけですよ。特に何か仕掛けるつもりも無いですし、気軽に返事をして欲しいですね。ちなみに、あなたの顔は見えてますし、声も聞こえてますから』


既に、このPCがハッキングされてたなんて・・・超怖い。


が、既にされているなら諦めもつくな!

俺は英文で返事をすることにした。


「私は日本の賢者の塔ダンジョンで働く者です。仲間との会話で話題になったので、興味本位であなたを調べてました」


送り先不明のメールが、どうやって道化師クラウンに届くのか分からないが返事を送ってみた。

直ぐに返信が届く。


『おぉ、ダンジョン!世界で今一番不思議な場所ですね!そんな場所で働いているだけで、私の興味を刺激しますよ。しかし嘘はダメですよ。興味本位じゃ無いでしょう?何か目的があるはずです』


・・・何か知られてる?

いやいや、そんなはずは無い。


「どうして、そんな風に思われたんですか?」


返って来る返事が早いな!


『探し方、とでも言えば分かるでしょうか?仕事で探す人、単なる興味で探す人、何か強い目的があって探す人、探し方にはその目的が現れるんですよ』


はぁあ?

たかがネット上での探し人にハッキングの技術を使っただけで、その人物の感情がでも分かるとかありえない!

本当にそれができるなら、完全に特殊能力者だと思うぞ!


「そうですか?じゃあ、私はどんな目的で探してたんでしょうか?」


その俺の質問に対しての答えは・・・


『今まで私を探していた人達とは違う、探すだけでも、捕まえるためでも、興味があるだけでも無い何か。敵意無く、私にとかでしょうか?』


マジか?

確かに俺が探してた時の感情は、それが一番だったかもしれない。

現代社会の中で、ネットと言う情報の海を自由に移動できる道化師クラウンと言う存在は強力だ。

だからこそ、会ってみたいと思ってはいた。

だけど・・・


「最初はそんな感情もありましたね。でも今は無いですよ」


だって、俺は術式でネットに、ソフトに介入できそうな手段を見付けた所だからな。


『あらら、私の思い違いでしたか?』


返って来た返事の、思い違い、と言う単語に違和感があった。

だけど、それを追求する時間は残って無かった。

次の来客予定があったからだ。


「この後、仕事があるので、ここまでのようです。また機会があれば」


そう返事をして、PCの電源を落とす。

ネット回線も物理的に取り外し、魔法を使う。


使った魔法は〈遮断結界〉、通常は魔法による念話などの手段を封じるための物だが、俺はこの世界に戻って来てから改造して通信手段、特に盗聴対策に使っているのだ。

これを使えば、俺の周辺で通信機器などにハッキングしようにもできないはずである。

物理的な配線などが繋がってない限りだが・・・



*** *** *** *** *** ***



「時間切れ、ねぇ」


パトロンからお願いされて色々な人物を探してきたけど今回見付けた人物は興味深い。

それに・・・


「・・・ハッキング対策をしてるようだね」


先ほどまで繋がっていた回線は・・・物理的に無くなってる。

位置情報で分かった場所、その周辺の通信機器は・・・


「・・・電波妨害かな?ある一定の範囲で通信不可だね」


一個人がやるには手が込んでる。

と言って、政府などが関与しているとすると・・・中途半端だよね。


「次の接触の機会に・・・期待かな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る