第102話

投稿日を間違えていました。

すみません!


・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・


静かな室内に二人の青年がいた。

その意匠から高位の人物だと判断できる典型的な民族衣装であるトーブにべシュト姿で何かを相談しているようだ。


外国人には、その服装から判断できるのは中東の国々の一つだと言うことぐらいだろう。

だが、国や地域によって似ていても違いと言う物があり、それによって出身国などが分かるらしい。

現に、二人の青年の衣装も、微妙に違いがあった。


「お互い皇子と言う立場があるから、こう言う機会は少ないが差しで話ができるのはありがたいよ」

「そうだな。本当にこういう機会は少ない。どうしても側近やら護衛やら従者やらがゾロゾロついて回るからな」


まあ、皇子だと言うなら、それが普通なのかもしれないが、それはそれで息が詰まるのかもしれない。


「で、急にこんな場所を用意してまで訪ねて来たのは?」

「アブドゥーラ皇子。地球滅亡、知っていますよね?」


いきなり前置き無しに切り込んできた相手に、一瞬だけ驚く。


「・・・地球滅亡と言う言葉も、最近話題になっていることも知っているよ。でも君が聞きたいのは、そういう話じゃあ無さそうだ」

「ええ、そうです。真実、貴方が知っている真実が知りたいんです」


「それを知ってどうする?お互いにアノ老害達が存在する限り、不自由な生活を強いられているだろう」

「それを公表して民意を味方につければ・・・」


少し考えが足りない?

いや、頭に血が上っていて思考が上手くできていないのか?


「何故世界中の国々が極秘にしているのか、君には理解できているはずだが?」

「・・・混乱を防ぐため・・・ですか。ではやはり?」


「私の掴んでいる情報が確かなら、地球滅亡は遠くは無い。早ければ私達が生きている内に始まる可能性もあるね」

「そんなに早く・・・」


勿論、情報は掴んでいるが、それは合法的な物じゃ無いから、大きな声では言え無い。


「人間の力など地球にすれば微々たる物だろう。だが例えるなら人間は地球にとってのウイルスと一緒なんだろう、何十億も集れば体調を崩す。だから人間がウイルスに発熱で抵抗するように、人間に自然災害で抵抗しているんだろう」

「その理屈は分かる。理解もできるが・・・」


ん?彼は色々と足りてないのかな?


「賢者と言う言葉、いや、人物を知っているかな?」

「我々の石油を無用の長物にしようとしている人物だよな?」


「何故、そんなことをしているのか?それを考えたことは?」

「・・・地球温暖化、二酸化炭素か?」


「正確には違うみたいだけど、それが地球滅亡に関係してると言えば、君は石油を諦められるかい?」

「それは・・・正直に言ってかなり難しいな」


「でも。それで地球が滅亡するんだよ?」

「・・・個人的には諦められるが、国民が・・・いや、正確に言うなら老害達が諦めない、だな」


そこは理解できているのに答えに辿り着かない?いや、辿り着けないように刷り込まれてるのか。


「今我々に真に必要なのは、老害の速やかな排除だと思うね。それでやっと新しいスタートを切れるようになるだろうね」


驚いた表情をしながらも、きちんと理解はしたようだ。


「・・・それは簡単じゃないな」


そんなことは知っているさ。


「でもね。たぶん時間的な余裕はほとんど無いんじゃないかな」

「何か知っているんだな」


「老害達が、手出し厳禁な所に勝手に動き回ってちょっかいを掛けているんだよね」

「それがどう?時間が無いことに繋がるんだ?」


「手出し厳禁だよ。下手に手出しすれば報復されるってことだよ」

「それはっ!また泥沼の湾岸戦争が再現されるかもしれないのか!」


「ならないね。一方的にやられて御仕舞いだね」

「そんな馬鹿な!軍事力は・・・」


「魔法に対抗できると思うかい?君も見たんじゃないのかドラゴンを」

「それは、つまり賢者に手出しを仕掛けてるってことなのか?」


「だね」

「もう本当の意味で百害あって一理無しなんだな」


やっと老害が老害であると理解できたみたいだ。


「さてと、ならどうするべきか?分かるよね」

「まずは監視と確認、それから立案だろうか」


うん、とても模範的な回答だね。


「それじゃあ時間的に間に合わないよ」

「そうだった!じゃあ、どうすれば良いんだ?何か案があるんだろう?」


あらら、もう降参なのか?


「あるけど。それには色々と事前交渉が必要だし、石油を諦めることになるよ」

「・・・つまり?」


「国民からの非難を受ける必要があるし、それに対処する必要もあるってことだね」


さて、石油関連で儲けてる人達は、同族経営で一人当たり月収20万ドルとかなんだけど、諦めさせれるかな?


「・・・少し待ってくれないか?まずは、老害の排除をどうやるんだ?」

「既に手出しをしようとしてるんだし、賢者に排除してもらおうと思ってるよ。勿論、事前に犯人の資料を渡して、本人達だけをターゲットにしてもらうけど」


「・・・それが可能なら、確かに成功する確率は高そうだけど、そう上手くいくのか?」

「そこで事前交渉さ。石油関係の出荷調整を約束して、エネルギーの転換を進める協力をする代わりに、必ず老害を排除してもらうように依頼するよ」


「そこで石油に結び付くのか」

「賢者相手に切れる手札が他に無いからね」


「金に興味は無さそうだしな」

「そう言うことだね」


「進めるのは?」

「私だよ。だけど君の方でも他の協力者と同様に、私に同意する旨の発表をして欲しいね」


「やっぱり他にもいるんだな」


「ああ、老害は中東の国々が抱える共通の問題だからね」

「・・・分かった。協力を約束する」


これで中東の国々に、それぞれ協力者ができたな。

やっと馬鹿な老害を本格的に排除できるってもんだね!


さてさて、忙しくなるねぇ。

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