第86話

「涼木さん、朝早くからお邪魔してすいません」

「いえ御戸部さんこそ、こんな早くから大変ですね」


「そうですね。この前の件が全て発端ですが・・・」

「あぁあ~。で、何を聞きたいんですか?」


やっぱり例の件の関連か。


「そのドラゴンのことなんですが?本当に今日で大丈夫ですか?もし目覚めなかったとかだと、非常に不味いので」

「その件は大丈夫ですよ。昨夜遅くに目覚めたと連絡をもらってます」


「よ、良かった!あっ、それと似たような話ですけど、そのドラゴンの大きさと言うのは分かりましたか?」

「再確認したのは寝てる時なので、数メートル程度のズレはあると思いますが、全長が約90m、全幅が約110mでした」


「・・・縦横どちらも約100m・・・ビックリな大きさですね」


御戸部さんが、何とか感想を伝えてきた。


「ええ、改めて計ってみると大きいって実感しましたね」

「それでその~、ドラゴンって会話は?可能なんでしょうか?」


ふむふむ、それは話をしたいってことかな?


「話せますよ。翻訳魔法で日本語も大丈夫です。ちなみに最近は私が用意した動画で、色々と勉強してもらってます」

「ドラゴンが勉強?」


そんなにドラゴンが勉強するのが不思議か?


「ええ、地球の空を飛ぶには色々とあるでしょ?他の飛行機が飛んでるんだし」

「まさか航空法を教えてるとか?」


「そんな専門的なことを覚えてもらうには時間が足りませんから、飛ぶ時の高さはどのくらいとか、話をしてない国の上を飛んじゃダメとか、そう言う簡単なことを教えてます。後は手出しされない限り、攻撃してはダメってのも伝えてありますよ」

「うおーーー!流石は涼木さんです!その関係の資料を関係省庁が作成してますので、今度持ってきますから、引き続き教えてもらったりできませんか?」


御戸部さん感動し過ぎ、ついでにレティーへの講義は俺がやりますから。

ってか、神様に直接俺の責任だって言われてるから、やらないって訳にはいかないんだよ。


「それは、勿論可能ですが、作った省庁の方がやった方が良くないですか?」

「賢者に続いてドラゴンも涼木さんが専属ってことになったんで、他の者は近付けないんですよ」


ですよねぇ~、そうなるようにしてましたからね。

でも、なんとなく・・・


「本当ですか?今、御戸部さんが決めた、とかってことありません?」

「私にそんな権限はありませんよ!上の方から、もし意思疎通が可能なら、涼木さんに窓口を頼むようにって指示されてるんです」


まあ、こっちに都合は良いか。


「じゃあ、予定通り昼前くらいに来て下さい」

「ところで、何処でドラゴンに会うんです?まさか、ここって訳じゃないですよね?」


ああ、それは伝えてなかったな。


「昼頃に賢者の魔法で塔のドラゴンの所に転移します。方法とかの詳細は口止めされてまして、言え無いんですけど、私がテストしたんで安全ですから」

「良くそんなことを・・・普通は物とかでやるんですよ!」


「ダンジョンで使ってる転移陣と同じ系統の魔法だってことなんで、心配は要りませんよ!」

「そうですか・・・では、時間になったらここへ御連れします」


さて、準備をしないとな。

この世界でレティーの初御目見えだからな。



数時間後・・・


「総理、お久しぶりです」

「涼木さん、もしかして前回気付いてらしたんですか?」


「最初は気付きませんでしたが、途中から。気付いた時は、どうしようかと思いました。まさか作業着姿で帽子を被ってるなんて思わなかったので」

「これは、参りましたな。初めましてと挨拶しようと思ってたんですが・・・そうですか、気付いていらしたんですね。では、改めまして日本国総理大臣を勤めております安宿部あすかべです。何時も難しい仲介役をしていただき感謝しております」


おいおい、総理が頭を簡単に下げちゃダメだろ。


「頭を上げて下さい。困りますから・・・」

「今、日本も世界もとても難しい状況に置かれている中、君が担ってくれている仲介役はとても重要な役割なんだ。そんな重要な役割を一般人である君に頼っていることに、いくら感謝をしても足りはしないよ」


本当にこの総理は真面目でマトモな人だな。

今までに俺が知っている総理大臣の中で一番だと実感した。


「っと、すみません。ここで話していると肝心な方の時間が無くなってしまいますね。直ぐに合図を送りますので」

「合図?」


「ええ、このライトを塔に向かって点滅させると、私の周囲の方も含めて全員をドラゴンの所に転移させてくれると言われているんです。ですので、私の周りに集まって下さい」


その言葉で、俺、御戸部さん、総理、麻生田大臣、服部センター長、そして総理の付き人が二人の計七人が集った。

それを確認してライトを七回点滅させる。


これ実は移動する人数を知らせる役目で、転移自体は俺がやることになってるのだ。

事前に足元に転移陣を書いて土に埋めてあるって寸法である。

起点になる所にだけ目印になる魔石を置いてあるから、俺にはそれが《眼》で分かるんだ。


さてさて、ドラゴンとの御対面の時間ですよ、

驚き過ぎて腰を抜かさないと良いんだけど・・・って総理心臓に病気とか無いよな?

聞いて無かったんだけど・・・


そう思ったのは、既に魔法陣に魔力を流した後だった。


ヤバイ!

不味ったかも?


どうか何もありませんように、お願いします!

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