第81話

俺は三人の再起動を待たずに話を進める。


「つまり、地球上にはダンジョンに来たくても来れない人が多いでしょう?この周辺も開発中とは言え、何十万もの人を受け入れられる訳じゃ無い。でも魔石の流通は増やしたいし、広めたい。じゃあどうするか?って言う問題の答えだそうです」


そう、発展途上国とかだと日本までの旅費だけでも大金である。

そんな金額を用意できない者も多いだろう。

だが、そう言う国に限って人口が多かったりするのだ。

その上、動物を自分で解体したりしていて、ダンジョンでモンスターを殺すことに忌避感が少なかったりする。

先進国の人間より、よほどダンジョン向きの人材だったりするのだ。


そう言う人間を大量に呼び込むには?

旅費や宿泊費が掛からなければ良い!

ってことで、出た答えが〈ゲート〉である。


「ちなみに賢者が言うには、ダンジョン向け以外に〈ゲート〉を作る気は無いそうです」


つまりダンジョン目当ての旅行客は減るかもしれないが、それ以外で飛行機会社に影響は無いだろうってこと。

プラス、運送関係にも武器類の運搬以外で影響は無いだろう。


「・・・それは何処に設置するか決まっているのでしょうか?」


やっと出た言葉は麻生田大臣の質問だった。


「まだ、何処と言う細かい所は聞いてませんが、確か地脈が関係するようで、何処でも良いって訳では無いみたいです。後、発展途上国から設置すると言ってましたね」

「えっ!先進国には設置しないってことですか?」


「違いますよ。一度に設置はできませんから、順番にと言うことですね。で、一番困ってそうなのが発展途上国だろうと言うことみたいです」


実際問題、先進国の方が電気に頼ってるので、必要ってことだと上だろう。

だが、先進国の人間なら飛行機に乗って来れるだけの余裕があるだろうってことだ。

極端なことを言えば、アフリカの電気も無いような場所の人には魔石も必要無いだろうが、魔石を得て、それを売れば金になる。

それで魔石仕様の電化製品を買えば、それは現地で使える訳だ。


「賢者の意向は理解できますが・・・それで先進国が納得するか?」

「申し訳無いですが、それを賢者に言っても気にしないでしょうね」


「やはりですか?」

「私が知る限り、賢者は地球のそう言う部分に全く関心がありませんからね」


冗談抜きで師匠は関心が無い。

気にしてるのは俺だけだ。

まあ。その俺も結局は師匠の意向だって言って、無視してるんだけどな。

ただ、武力行使の可能性があるから、それが理由で気にしてるだけである。


「各国に通達するにしても荒れそうですな」

「そこは賢者が決めたので、どうにもならないと言うしかないでしょうね」


「それで納得しないのが政治の世界なんですよ」


まあ、それで了承してたら国益がどうの、とか言えなくなるよな。

それを了承させるには・・・


「・・・では、そう言う無理を言う国には〈ゲート〉を設置しないと言えば良いのでは?もし必要なら、私から賢者に了解を取ってきますよ」


「本気ですか?」

「だってそうでしょう?世界の危機が目の前なんですよ。それを防ごうとしている賢者のやることに、いちゃもんを付けるんですから、そう言われて仕方無いでしょう?」


俺が思って決めたことなので、師匠には後で説明すれば別に問題無いだろう。


「そう言われれば、確かに・・・、余りに話の内容に驚き過ぎて、世界の危機だと言うことを忘れてましたな」


ああ、そう言うことか。


「ところで、話は以上ですか?」

「いえ、やっと半分程度でしょうか」


「半分?これだけ爆弾を落として、まだ足りないと?」

「これからの話の方が、日本にとっては衝撃になるかもしれませんよ」


「何を言う心算ですかっ!」

「そうですね、〈ゲート〉を設置できるのが賢者だけだそうで、各国に賢者が訪問すると言ってるんですよ」


本日三度目の、ドッカーン!


一度も人前に出たことが無い賢者が、いきなり他国を訪問する。

これは確かに日本にとっては衝撃の問題だろう。

だって、総理ですら師匠には直接会ったことが無いんだからな。

それが、日本を通り越して外国に行くって、国としてのメンツとか考えると大問題だろうな。


そして連続投下の準備はできた。


「それで、その海外の国に行く方法なんですけど、これが大大大大問題でして・・・」

「な、な、な、何です、か?」


「えーっと、飛行機が信用できないそうで・・・」

「飛行機が信用できない?って何ですか?」


「その、私達は科学的根拠に基いて飛べると分かっていますが、賢者には鉄でできた物が空を飛ぶと言うのが・・・胡散臭い・・・らしいです」

「それは・・・言わんとすることは分かりますが、何処が大大大大問題何です?」


「その・・・飛行機には乗りたくないそうで、自前のドラゴンに乗って行くそうです」


本日四度目の、ドッカーン!


あれ?皆さん目の焦点がおかしいですよ?

なんでそんなに遠くを見詰めてるんですか?


お~い、俺はここにいるぞ~!

戻って来てくださ~い!


現実逃避しても、どうにもなりませんよ~!


まあそれで戻って来る訳無いか。

でも俺は話を進めるぞ!


「何でも、〈ゲート〉は地脈から魔素を吸収して稼動させるようで、その場所の選定や設置は魔法が使える賢者しかできないそうです」


本当は幻影魔法で変身した俺が行くんだけど、それは秘密だ。


「なので、賢者が行かない、って選択肢は無いみたいですね。ちなみに、一番最初は日本国内に〈ゲート〉を設置したいって言ってましたよ。場所は自衛隊の富士演習場の辺りらしいですが」


これは俺の提案だったりする。

自衛隊って実戦訓練が難しいって聞いたんで、ダンジョンに挑戦するのはその機会になるんじゃないか?って考えたんだ。

あと、他国は軍隊を送って来てるんだから、日本もやらないと不味くないか?って気持ちもある。

専守防衛ってのも破らないだろうし、国益にもなるから大丈夫じゃないかな?って深くは考えずに提案してるだけだけど・・・


「後、飛行機の件ですが、信用できないって理由の他に、時間が掛かり過ぎるって言ってましたね。何でも、ドラゴンが本気で飛べば一時間くらいで地球を一周できるとか・・・」


あれ?遠くを見てた皆さんの顔色が、ドンドン青褪めてきてるんだけど・・・なんでだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る