第80話

トゥルルー、トゥルルー、トゥルルー


「はい、御戸部です」

「あっ、涼木です。少々お話がありまして、時間取れませんか?」


「・・・・・・最近、随分と忙しそうにされていましたが、もしや?」

「・・・バレてましたか?例の方からです」


「かっぁあぁ~、やっぱりですか!そんな嫌ぁな予感がしてたんです。で、大事おおごとになりそうですか?」

「えーっと、超が付く特大級が複数って感じで・・・」


あれ?応答が無いぞ?

そう思って声を掛け直そうと考えたら御戸部さんがやっと反応した。


「・・・私、今から辞表を出してきますんで、別の担当が決まったら連絡させますね」

「いやいや、待って下さいよ。そんな急に何言い出してるんですか?」


「おかしいでしょ?一公務員の私が、何でこんな重要案件をやらされるんですか?もっと別の相応しい人材がいるでしょうに!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいよ。それを言い出したら、俺なんて一般人ですよ」


あっ、また静かになった。


「・・・涼木さんに言うことではありませんでしたね。申し訳無い」

「・・・この話、止めますか?別の人を手配されるなら待ちますけど・・・」


「・・・いえ、伺いに行きます。たぶん、交代を頼んでも却下されるんで・・・」


・・・もしかして・・・


「・・・今までにも?」

「ええ、何度か・・・」


「もし、あれでしたら、仲間を増やされては、どうですか?ついでに、できれば私の仲間も増やしたいですけど・・・」

「えー、私の方は増やせると思いますが、涼木さんの方は、無理かと・・・」


「・・・ダメ、ですかね?」

「ダメ、ですね、たぶん・・・」


言ってはみたが、実際に増やされても困るんだけどね。

でも、今の言葉で、へんな人間を師匠に近付けようって考えが無いって分かった。

良い情報だったな。


「一時間後に、服部センター長と一緒に伺います」

「センター長ですか?また随分と上の方を引き込みますね」


「その方が話が早いと思いませんか?」


言われてみると、それは正論だと思った。


「ですね。良い案だと思います」

「では、一時間後に」


神様からレティーの許可を貰って十日ほど。

あの翌日からレティーに色々とこの世界の知識を教えているが、まだまだ時間が掛かりそうだ。

だが、こっちはこっちで時間が掛かるはずなので、こっちの話も始めて置かないと不味いと思ったのだ。


それとは別に、ある情報を公開する許可が出たことで、俺の方の話の切り札ができたことも、今回の話を進める切欠にはなった。


えっ!何の情報か?って、それは・・・ツクヨミ様から「数十年~百数十年で地球滅亡の可能性がある」と言って良いと二十文字制限のメールを貰ったのだ。

これは温暖化に対しての取り組みが中途半端で成果が出ていないことに痺れを切らせたってのと、魔石の普及を加速させるための手段らしい。


ただ、これに全く根拠が無いか?と言うとそうでも無いようで、これから数十年で状況が改善しないと、本気で環境が激変しだすらしい。

完全に滅亡するのが百数十年後ってだけで、その前兆はもっと早くから現れるってことだ。


数十年って、早ければ俺が生きてる内に始まるかもしれないんだろ。こりゃあ真剣に取り組まないと!


あっ!ちなみに「数十年~百数十年で地球が滅亡する可能性がある」ってのは神様の言葉じゃなくて師匠の言葉として伝えることになってる。

だって「神様からお告げが・・・」とか言ったら、途端に胡散臭く感じるだろうからな。



電話から一時間後。

俺の前には三人の人物がいた。

あれっ?二人って聞いてたんだけど?

何でがいるの?


「お久しぶりです麻生田大臣。一年振りぐらいですか?」

「涼木さん、お久しぶりですな。偶々、服部に用があって訪ねて来たんですが、何やら賢者から重要な話があると聞きまして」


「それで、電話で言ってた「超が付く特大級が複数」ってのは、どんな危ない内容なんですか?」

「御戸部さん、気が早いですね」


「そこまで言われてると気になって仕方無いでしょう。あっ!後、この会話は後で説明するのに必要なんで録音させて下さい」

「分かりました。じゃあ説明しますが、本当に真面目な話「人類存亡の危機」ですからね。気を確かにお願いします。まず一番の問題ですが賢者曰く「数十年~百数十年で地球滅亡の可能性がある」そうです」


ドッカーン!!


最初の一発目で、三人とも真っ青な顔で固まってしまった。

いや、分かる、分かるよ、その反応。

でも、話が進まないから、俺はそのまま話すんだけどね!


「これは賢者が魔法的に地球の状態を研究し確認した結果として導き出された予測です」


この辺の説明は師匠と相談して組み上げたデッチ上げ理論だ。

魔法が使えない地球人では、それを検証することは不可能だからできる力技である。


「どうしてそう言う結論になったかと言いますと、前から話していましたが、地中には魔素があるのに空気中に魔素が少ないって話があったと思います。賢者はその原因を調べていたそうです。そこで発見したのが、どうやら空気中の魔素が少ないのは二酸化炭素が影響しているらしいと言う内容だったようです」


ここで説明すると、俺と師匠でデッチ上げた理論はこうだ!


まず、地球が滅亡するよ!


何で?

二酸化炭素による環境汚染で!


どうして分かったの?

魔素の研究をしていて偶々発見した!


どういうこと?

空気中の魔素が少ないのは、二酸化炭素が原因だから!


じゃあ何でそれで滅亡することになるの?

魔素の空気中と地中での不均衡が地球全体に影響を与えるから!


何で魔素の不均衡が影響を与えるの?

例えば、魔素を圧力だと仮定すると、右と左で極端に圧力が違えば容器が破損すると思わない?それと一緒!


その魔素の不均衡の原因が二酸化炭素で、不均衡のままだと地球全体に歪みが出る。

その結果、色々な環境変化が発生。

それを修正しようと地球が頑張る。

それは自然現象として災害を発生させる。

改善しないと、どんどん悪化して、最後はドッカン!

で、どんどん悪化するのは、賢者の予想だと数十年後ぐらいから。

だから、もう時間がそんなに残ってないよ!


そんな感じのトンデモなデッチ上げ理論である。


「・・・・・・嘘、って訳は無いですよね。そんな冗談を言う必要性は無いでしょう?」

「私には全くありませんね。ちなみに私は、その環境的な資料を集めさせられまして、ここ最近はとても忙しかったです」


「それでバタバタしてたんですか?しかし、爆弾なんて生易しい内容じゃ無いでしょう、これは?」

「ですよね。私も話を聞かされた時は、言葉が出ませんでしたから」


「で、賢者はどうしろと?」

「魔石の流通を広めるのを早めたいと」


「その方法も、何か案があるんでしょう?」

「聞いてはいますが、それもトンデモない内容ですよ」


「聞かせていただきましょう」

「賢者が特殊な魔道具を用意してくれるそうです。その名が〈ゲート〉。対になる〈ゲート〉を任意の場所に設置することで、二点間の距離をゼロにする魔道具だそうです」


本日二度目の、ドッカーン!

またまた、三人が固まったまま動かなくなった。

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