5章 レティー デビュー
第77話
「何っ!師匠、何言ってるんだよっ!レティーって!」
「モリトは幻影魔法の訓練じゃな。後は政府にレティーのことを連絡して色々手配してもらわねばならんじゃろう」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ!何の話だ!」
「すまん、すまん。気が急いていたんじゃ」
師匠は順に説明してくれた。
〈ゲート〉は俺か師匠じゃないと設置できない。
なら、どちらかが現地に行く必要がある。
この世界の知識などを考えると、師匠より俺が行った方が良い。
でも、それで俺の存在がバレるのはダメ!
なら、俺が幻影魔法をもっと訓練して師匠に化けて行けば問題無し。
じゃあ、どうやって行くか?
飛行機などは時間が掛かり過ぎて論外。
何故なら、俺が長期間いないとか不味いから。
じゃあ、短時間で終わらせるには、どうするか?
レティーがこの世界の魔素量で全力で飛べば、一時間程で地球を一周できるだろう。
最後に問題になるのは〈ゲート〉とレティーの存在。
これは俺がまた政府に、原因を師匠の所為にして丸投げしろと言うことらしい。
「強引な上に特大級の爆弾を連続投下するのかよっ!死人が出るレベルで恨まれるぞ」
「そうかのう?そんなこと無いじゃろ」
軽い、軽過ぎるぞ、師匠!
「す、少なくとも神様に御伺いはしないと不味いだろ。〈ゲート〉もレティーもこの世界のモノじゃ無いんだから」
「・・・それは必要かもしれんのう。よろしく頼んだのじゃ」
・・・師匠は俺に丸投げなのか・・・
で、俺には政府に丸投げしろと・・・
・・・絶対!恨まれるぞ、コレ・・・
どれだけ恨まれる可能性があるとしても、肝心の〈ゲート〉の魔道具が無ければ話にならない。
そんな訳で、その日から俺の研究が始まった。
と言っても、基礎はできている。
それらの基礎的な魔法陣を上手く調整して一つにするのが面倒なんだけどね。
人の魔力で動く魔法陣を地脈の魔素で稼動させるのは結構面倒だった。
だけど調整に時間が掛かっただけで、できないことでは無かった。
それよりももっと面倒な問題が残っていた。
それは近距離に〈ゲート〉を二つ置けないことだった。
当初俺の考えでは、入口用と出口用の二つの〈ゲート〉を設置する予定だった。
だが、二つを100km以内に置くと片方が不安定になることが分かったのだ。
これが結構面倒な問題で、〈ゲート〉は出入り自由なのだが、同時に人の出入りが重なるとエラーしてしまうと分かっていたのだ。
そのために事故を防ぐために出口用と入口用を分けるつもりだったのだが、それができなくなってしまったのだ。
結局、出口側と入口側に人の出入りを制限する人員なり機能を追加する必要が出てきた訳だ。
ちなみにエラーするとどうなるか?と言うと、古い洋画の蝿男を想像して欲しい。
さて、その問題によって色々と機能を追加する必要があり、それに時間が掛かることになってしまった。
人員の配置は非常に非効率だろうと言うことで、機能的にそれを可能にする方法を考えたのだが、結果、時間で切り替える方法しか思い付かなかった。
では、どの程度の時間で?と言われると、最適な時間など分かる訳が無い。
なので待たせ過ぎるのも良く無いと判断して三十分で切り替えることにする。
だが、入口側と出口側で同時に三十分を判断できなければならない。
そのために、対応する二つの〈ゲート〉間で同期させる必要がでてくる。
これが非常に面倒で、同時に起動すれば簡単なのだが、地脈から魔素を吸収して稼動する以上離れた場所で起動する必要があるために同時に起動ができないのだ。
そこで役に立ったのが俺の前の職業だった。
対応する二つの〈ゲート〉を親機と子機にすることで、親機側から同期の信号を出して子機側で受けることで〈ゲート〉の同期を可能にしたのだ。
「やっと試作機が完成した!」
そう俺が判断したのは、師匠に相談した時点から二ヶ月が過ぎていた。
「これでまずテストをしてみて、その結果が問題無ければ話が始められるな」
そんな風に軽く考えていたのだが、それにもまた問題があった。
まず最低でも100kmは離れていないとダメなので、稼動試験をするにも場所の確保が必要になる。
で、色々検討したのだが、良い方法が思い付かなかった。
結局は人のいない山の中に〈ゲート〉を設置して試験をすることにした。
夜中に真っ黒な服装で、顔も目出し帽で隠し、人いない山中に〈転移〉して、そこに〈ゲート〉を設置した。
最初の〈転移〉のために一度行く必要はあったが、それはそれほど問題無かった。
それよりも、その後にやった試験で色々と別の問題が発覚したのが大変だった。
〈ゲート〉は地脈から魔素を吸収して稼動するため、モロに地脈の影響を受けるのだが、小さな地震でも影響が出ることが分かったのだ。
人が感知できない程度の小さな地震はかなりの頻度で発生している。
その影響をモロに受けると地脈からの魔素の供給が途切れたりして〈ゲート〉が不安定になるのだ。
それを解消するために、魔石を合成して大きな合成魔石を作ったり、魔法陣を改良したりと面倒な作業をすることになった。
最終的に満足できる結果を出せた時には、更に一ヶ月が過ぎていた。
「師匠、やっと〈ゲート〉が完成したよ」
「随分と苦労したようじゃな」
「問題が次から次に出てきて、大変だったよ」
「まあ、完成したんじゃから良かったじゃろう?」
「まあね。それで明日にでも神様に報告に行こうと思うんだけど」
「・・・のう、供物を持って行かんのか?」
「供物?」
「今回は頼み事があるんじゃろう?そう言う時には供物を捧げるもんじゃろう」
「・・・確かに。でも何を持って行けば良いんだ?」
「儂が知る訳無いじゃろう。まあ、人なら男は酒、女は菓子などが一般的じゃが、神様となるとのう」
「あっ!お礼した時から御供えで持って行ってたな。あの延長じゃ無い方が良いよな?月一くらいで御供えしてるし。高級フルーツでも持って行くか」
「そうか?まあ次があるか分からんが、希望を聞いてくると良いじゃろう」
それもありかな。
三貴神様達も、今回の件は最終的に魔石の普及に繋がるからダメとは言わないと思う。
ただ、問題はレティーのことなんだよな。
彼女は、この世界に存在しないはずの〈ドラゴン〉だからなぁ。
ダメって言われたら、どうしよう?
いや、そのための供物だ!
明日は奮発して高いやつを買おう!
それで何とか許して貰えると・・・良いなぁ。
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