第76話

京極君との話し合いが終わり、今後の予定などを擂り合わせた結果を再確認する。


「どう見ても過密過ぎるよな。その上ソロだろ・・・ちょっと注意した方が良かったかも」


そんな反省をしつつ、今後のことも考えなくてはいけない。

何せ、えらく簡単に身バレ仕掛けたのだ。

今は、こっちの都合に合わせて話を歪めているが、それでずっと大丈夫か?と言えば・・・たぶん無理。

絶対どこかで京極君にはバレそうだ。


まあ、魔法契約があるから外に話が漏れる心配は要らないだろうけど、それも完全完璧とはいかない可能性がある。


「俺がこの世界の協力者じゃなくて、あっちの世界の関係者だってバレると大問題にしかならないだろうな」


まあそれが分かっているから、今まで隠してきたんだ。

だが、それが一人とは言えある程度知られてしまった。

つまり「蟻の一穴」状態なのだ。

いつかガラガラと崩れてしまう可能性を考えない訳にはいかない。


じゃあ、そんな状況になったらどうするのか?

そんなの今思い付く訳が無い!

これから色々検討して考えて対処できるようにするだけだ。


この問題は追々対応するとして、少し気になっているのは今回武器を手に入れた人達が今後どういう活動をするのか?だった。

俺達の目標として「魔石エネルギーの普及」がある以上、ドンドン魔石を収集して欲しいのだが、それがなかなか進んでいない。

その進捗に影響を与えるだろうと言う目的でダンジョン専用武器を世に出したのだから、それが活用されて魔石の収集が進んでくれないと意味が無いのだ。

だが、日本に渡したダンジョン専用武器の製法は日本と同盟国の間だけで共有されて以降、何処にも拡がっていない様子。

これでは魔石の収集量が増えないだろう。


「何か変化を促す必要があるかも?」


じゃあ何をするか?と言えば・・・


「・・・ダンジョン内でダンジョン専用武器をドロップさせるか?」


これは前々から考えていたことではあるが、態々日本に有利な情報として与えた物を、横から何も教えずに暴露することになってしまう。

現状、友好な関係を構築しているのに、それにヒビを入れることになる可能性を考えると躊躇していたのだ。


「だけど・・・計画的には順調ではあるけど、今後のことを考えると・・・魔石の収集が頭打ちしそうなんだよな」


そう、長期的な計画として、魔石の普及率の目安を作って置いたのだが、それが伸び悩みしそうな予感がしていたのだ。


それ以外にも問題はあって。

その中で最大の問題が、現在の立地条件だったりする。


魔石を普及させようと思えば、収集者を増やさないとならない。

だが、日本のこの場所にどれだけの人間が集れるか?と言う問題が出てくる訳だ。


今も開発を続行中ではあるが、計画されている開発が終了してもトータルで二万人程度のキャパしか確保できない予想なのである。

世界規模で魔石を普及させるには、心許ない人数だと思うだろう?

と言って、これ以上の開発を進めるにしても、土地も費用も時間も人手も必要になる。

いったい何時の話になるやら、予想がつかないのだ。


「やっぱりゲートの開発をした方が良いのかな?」


俺が〈ゲート〉と呼んでいるのは、簡単に言えば〈転移陣〉の亜種のことである。

〈転移陣〉は魔法陣を設置して使用者が魔力を供給することで稼動するのだが、〈ゲート〉は地脈から魔力を吸収して常時固定された場所と空間を繋ぐ魔道具のことだ。

ダンジョンに存在する転移罠を応用した感じの物である。

これを何カ国かに設置すれば、ここのキャパを増やさなくても、ダンジョンに入る時だけ〈ゲート〉でこっちにやって来ることが可能になるのだ。

この方法が可能であれば、色々と問題は片付くのだけど、新たに別の問題も浮上する。


一つが経済的な問題で、今の日本はダンジョン目当てでやって来る外国人の落とす外貨を算定しているだろうってこと。

たぶん算定した外貨の金額から、この辺りの開発費用を出そうと考えてるはずなのだ。

それが〈ゲート〉によって無くなってしまう可能性が高いこと。


他にも、入出国の管理、関税、検疫などなど、色々な問題がある。


更に一番の問題は国防関係。

ダンジョンに挑む以上、武器弾薬を持ち込むことになるのだから、そこに小型の携帯可能な大量殺人兵器でも持ち込まれたら大惨事である。

でもって、それを規制し辛い状況なのも辛い。


とまあ、こっちを立てればあっちが立たず的な状況なのだ。


「開発はしておいて、後は政府に投げるか?でも、投げても使われないのは困るしなぁ」


何とも悩ましいところである。


俺としては、国家間のアレコレより地球全体の存亡の方が気になるので、何としてでも既存のエネルギー事情を魔石エネルギーに置き換えたい。

それが神様達との約束でもあるし、流石に地球滅亡はいただけないからな・・・


そんな頭の痛い悩みを抱えて師匠達が待つ塔の最上階に戻った。


「なんじゃ?眉間に皺なんぞ寄せて、何を悩んどるんじゃ?」


帰宅の挨拶をする間も無く師匠に突っ込まれた。


「武器の件は無事?と言って良いか分からないけど終わったんだが、魔石の普及率で悩んでたたんだ」

「何じゃか歯切れの悪い言いようじゃのう?で、何を悩んでおったんじゃ?」


師匠に聞かれて答えない訳にもいかず、色々と考えていたことを話す。


「何じゃ、面倒なことばかり考えおって。悩むくらいじゃったら、今まで通り儂の所為にして押し付ければ良かろうに」

「・・・それで良いのか?」


「別に他と変わらんじゃろうし、良いじゃろう」

「そうだろうか?」


・・・いや、今までも充分に日本だけじゃなく世界に情報爆弾を落としまくってるよな。

そう考えると、できないことでは無い気もする・・・


「それよりじゃ!もっと大きな問題があるじゃろう?」

「へっ?何かあったか?」


「〈ゲート〉を設置する方法じゃよ」

「設置方法?・・・あぁあっ!それがあった!」


師匠に言われて気付いた。

そうだった!

設置だよ!

俺か師匠にしかできないじゃんっ!


指摘されるまで完全に忘れていた最大の問題に気付いたのだ。


「〈ゲート〉使えないじゃないか!」

「方法はあるじゃろ?」


「えっ?方法って?」

「レティーじゃ」


・・・・・・次の巨大爆弾が連続投下される・・・予感がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る