第70話
「・・・提示額を書いた書類の回収が終わりました。やっぱりトップバッターは京極さんですね」
「そうか、予想通りだな。流石にソロで単独トップの収集者だけはあるな」
オークション当日、会議室の隣の準備室内でオークションの提示金額を確認していた。
「・・・予想とは違ってたのは、コーズが二番手だったことぐらいか」
「ですね。本当に予想外でした」
誰でも資金力は収集者としての順位に準じていると考えていたのだから、それが違っていれば「予想外」と言われてもおかしくは無いだろう。
現状の認識であれば二番手は天道組だったはずなのだ。
「さて、資料は揃っているか?」
「勿論です」
「では、通達に行くか」
彼等は準備室から会議室に戻る。
そこには当然収集者達が待っていた。
「一番手は京極さん。次にコーズ、続いて天道組、最後がフラワーガーデンの順番です。聞き取りは一日に一人。チーム内での順番は各チームで話し合って決めて下さい。京極さんは明日でどうですか?」
「問題無いです。早いのは大歓迎ですから」
「分かりました、それで手配します。その後は、明後日からがコーズになります。以降はそのまま順番に聞き取りが行われます」
「あの、少し質問しても?」
「どうぞ、
「聞き取るだけで武器の細かいところが分かるのかしら?実際に使ったりしてるところとか確認しなくて良いの?」
「えー、今質問がありましたが、聞き取り予定の場所には各種武器が用意してあります。その中で自分に合う物を探していただき、それをどう個人に合わせるか?と言う聞き取りになります。例えば、良い剣があったとします。それに切れ味を求めるのか?耐久性を求めるのか?または他の要望があるのか?と言う感じになります。逆に合う武器が無かった場合は、どの武器で長さは?重さは?重心は?と言うような細かい内容を聞き取ることになります。また、もし使ってみたけど改善したい点があった!となれば費用は掛かりますが調整をする事も可能です。他に質問はありますか?・・・無いようでしたら、本日のオークションは終了です。お疲れ様でした。京極さんは明日の指定時間にセンターの窓口まで起こし下さい」
説明内容と同じ内容の書類を配布して本日は終了・・・となるはずだった。
「ねぇ、みんなが集るなんて珍しいじゃない。懇親会やってみない?」
それぞれがバラバラに解散し掛けたところに裏声で提案してきたのは、ガチムチの体に何処で買ったのか、いや、そもそも販売しているのかも分からないフリフリの服を着た花園可憐だった。
「可憐!それ良いねっ!みんなで食事とか良いんじゃない?」
直ぐに賛成したのは、
男には何も言う暇も無いまま、かなり強引に昼食会が開催されることになっていたのだった。
某全国チェーンレストランの宴会場。
「で、誰が音頭をとるんだ?」
「そう言う天道さんが音頭をとれば?」
「・・・しかたない、では初の懇親会に!乾杯っ!」
「「「「「乾~杯っ!」」」」」
誰が注文したのか、全員分のビールがジョッキで出てきていたために、昼間っから飲酒でスタートした懇親会。
飲みっぷりが良いのは数名の女性陣?のようだった。
「ぷっはっー!良いわね、昼酒!」
「翔子は飲める口だったわね!」
「その飲み方はオヤジ臭いわよ」
「良いじゃない、気になる人でもいるなら別だけど」
「翔子ちゃんは男に興味無いんでしょ?」
女が三人寄れば姦しいとは良く言ったもので、十人?もいると賑やかで男は置いてけ堀になっていた。
まあ、そうは言っても無言で突っ立っている訳にもいかない男性陣もポツポツと会話を始めた。
まず最初に話し掛けたのは天道で、相手は京極だった。
「やあ、京極さん。久しぶりだな」
「天道さん、さっきは挨拶もせずで・・・」
「構わないさ。それで、単独トップの現状はどうだい?」
「どう?と言うほどのことは・・・まあ、モンスターは強くなってますね。小型のモンスターは連携するヤツがいたりしますが、注意してれば問題無いレベルですよ」
「流石ソロで単独トップは余裕がありそうだ。ところで、今回の武器が手に入ったら階層を上げるのか?」
「いいえ。武器が手に入ってもそれを十全に使えるように慣らさないと。武器を変更したら、二十階層あたりから再挑戦です」
それを聞いた天道は『俺達と考え方が違う。そこまで武器を扱うために労力を割くとは・・・ソロでトップに立つだけはあるな』と感嘆していた。
だが同時に疑問も浮かんでいた。
「何故そこまでできる?収集者としてやっていくのならチームを組めば良いだろう?ソロで武器の扱いに労力を割き、何処に向かっているんだ?」
「何故、何処に、か・・・理由は強くなりたいだけ、それだけですよ」
それだけって、京極は戦闘狂か?
全然そんな風に見えないんだが?
見た目だけじゃ無く、行動や言動も極めて普通、いや、どっちかと言うと善人に感じる。
「強くなるって言うなら、別にダンジョンじゃなくても・・・」
「それは競技、スポーツで勝てるってだけ。本当の強さって言うのは、本気の死合じゃないと強くはなれないもんですよ」
俺の耳がおかしいのか?試合の
試合はしあいでも、殺し合いに感じたのだった。
片や女性側では・・・
「翔子ちゃん、何であんなに資金があったのかしらぁ?何か隠してなぁい」
「隠して無いわよ。聞かれなかった・だ・け。私の彼女がセンターで働いてるのよ」
「まぁあ!前からしってたのねぇ!」
「そう言うことよ。良い
「やぁだっ!そんなの言えないわよぉ!恥ずかしいじゃない」
「ってことは、いるの?それともまだ片思いかしら?」
「まぁだ。彼ノンケなのよぉ」
「あら、じゃあこっちの世界に引きずり込むの?」
「引きずり込むって、何か悪いことをしてるみたいじゃなぁい」
「・・・確かに悪いこととは言えないかぁ。じゃあ、着いて来てもらうのね」
リーダー同士が何やら生々しい話を始めそうな雰囲気である。
だが、他のメンバーはもっとキャピキャピしてた。
「そのネイル、可愛いわ!」
「そう?自分でやったのよ」
「肌が綺麗ね。基礎化粧品はどこのやつ?」
「実は、肌に合うやつを色々組み合わせて使ってるわ」
見た目は男女が会話しているように見えなくも無いが、酷く自分の目が錯覚しているように感じる。
それはフリフリの服のせいだろうな・・・
惨い視覚への暴力を見させられてる気がするけど、食事だけは美味いな・・・
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