第51話
「えっ!もうそんな時間ですか?」
三人の女性の内の一人が、そう言ったのに返す。
「レストランの予約時間と距離を考えると、あと五分が限界かな?姪達に昼食を諦めさせるなら別だけど・・・」
何故だか分からないが、彼女の雰囲気からそう言った方が良いと思ったのだ。
「それはいけないわ!直ぐに精算してしまいましょう!」
ほらねっ!
俺の勘が当たったようだ。
「御戸部さん、大丈夫みたいです。移動の準備を頼みます」
「なあ涼木さん、何って言ったんだ?」
「そのままですよ。食事に行く時間だって」
「・・・?それだけか?」
う~ん、俺の感じたことを教えると警察内で何か彼女達に不利になったりするかな?
・・・分からないな。
ってことは、ここは何も言わないのがベストでは無いだろうけど、ベターだろうな。
「他に何が言えるんですか?今日会ったばっかりの人に?」
「・・・初対面だったな。そりゃあそうか。車は正面に回そう。精算が終わったら、そっちに移動だ」
出てきた彼女達六人は、とても機嫌が良さそうだった。
短時間で随分と打ち解けたみたいだな。
楽しめたようでなによりだ。
ただ車に乗ろうとしたところで、ちょっと予定外のことが起きた。
「涼木さん、少し話があるんですが同乗しても?」
「「「「「お願い」」」します」」
・・・六人の女性全員からのお願いを俺が断れる訳など無く、選択肢は一択だった。
車が動き出して直ぐに話が始まった。
「実は、服を選ぶ段階で色々と問題に気付きました。主に身体的特徴で着られないという状況についてです」
「なるほど。尻尾のことですか!」
「ええ。あれ、後で加工が必要ですよね?どうされる心算か聞いても?」
「まだ詳しいことは決めてないんです」
「私達は三人ともあれぐらいの加工ならできます。守秘の観点から見ても、外に加工に出すのは難しいでしょうし、私達が加工しようかと提案したかったんです」
「それは確かに助かりますが・・・あなた方に利が無いのでは?」
「たぶんこれからも専属みたいな感じで個別の警護をすることになると思いますし、彼女達と仲良くなることは必要ですから」
「・・・なるほど、確かに仕事を円滑にするための方法となると、少しは利があるかもしれませんね」
車に乗る前の六人の感じから言って、既に家の娘達は納得しているのだろう。
逆に、ここでそれを断ると俺が文句を言われかねないか・・・
「なあ、御戸部さん?彼女達に頼んでも良いかな?」
「・・・あぁ、後で手当てを付けて貰うように交渉しとくよ。彼女達には必要なことだしな」
「ってことみたいだ。私からも彼女達のためにお願いするよ」
「良かった!彼女達に約束してしまっていたので」
「だと思ったよ」
やっぱりだったな。
さてと・・・
「そろそろ予約したレストランだ。みんな腹は減ってるか?」
「「「ペコペコ!」」」
「良い返事だ。予約した甲斐があるってもんだ」
食事は思った以上にウケた。
美味しかったとかじゃなくて、ウケたってのは?と思うだろうが、味も美味しかったのは間違いないんだ。
ただ、女性六人にウケるちょっと
キャーキャーと三人でも騒がしいのに、倍の六人になると三倍以上騒がしかったよ。
特に最後のデザートは・・・凄かったな・・・
その後も多少の時間的なズレはありながらも予定していた所を回って、色々と買い物をし、色々とこの世界を見せ、予定時間を一時間程オーバーはしたが無事に家に帰ることができたのだった。
「さあ、帰って来たぞ。どうだった?楽しかったか?」
「「「楽しかったっ!」」」
「最高の返事だな!御戸部さんや他の人達にも御礼を言うんだぞ!」
「「「うんっ!みなさんありがとうございました!楽しかったです!」」」
おうおう、息が揃ってるなぁ。
「彩葉ちゃん、楽しかったわ。服も楽しみだわ」
「ソフィーちゃん、私もよ!」
「恵美ちゃん、楽しかった。次もまた会える?」
「ええ、アン勿論よ!」
「今日子ちゃん、楽しかったのよ。遊びに来たりできない?」
「リズちゃん、許可が出たら私も遊びに来たいわ!」
・・・ちゃん付け?何時の間に?
って、見た目は子供だけど年齢的には同年代か年上だったか!
何だか六人が集ってキャイキャイしてるのは不思議な光景だった。
「涼木さん、あれ、どうなってるんだか分かりますか?」
「そんな無謀なことをするとは思いませんが、御戸部さん、私に女性心理を聞いてますか?」
「あぁ~、私には分からないので、涼木さんになら分かるかと?」
「・・・仲間でしたか、女性は男にとって永遠に理解できない生物でしょう?」
「やっぱりですか」
「ええ、間違い無く」
この瞬間だけは、妙に御戸部さんと心が通じたような気がしたな。
別れを惜しんでいた皆が帰って行き、俺は彼女達を塔に送る。
「で、何時の間にあんなに仲良くなったんだ?」
「何時の間にか?」
「何時だっけ?」
「憶えてないよ」
・・・答えになってないって分かってるのかなぁ。
まあ、追求したところで答えなんて出ないのかもな・・・
「お~い!帰ったぞっ!」
バーンッ!
デカイ音を立てて扉が開いたと思ったら、人影が飛び出して来た。
「ソフィー!アン!リズ!寂しかったぞ~!」
「「「きゃぁ!」」」
俺の目の前でレティーに抱きすくめられた三人から小さな悲鳴が聞こえた。
「おいおい、どっちが子供だよ!レティーも、そろそろ子供離れしろよ!」
「無理~ぃ!モリトは私にできない要求をしてるぞ!」
いやいや、無理な訳無いだろう?
本人にやる気が無いだけのくせに・・・
「帰ったよ、師匠」
「何も無かったんじゃろう?」
「問題は何も無かったな」
「三人は楽しんだんじゃろう?」
「ああ。それは俺から聞くよりも彼女達に聞いた方が良いんじゃないか?」
「じゃな。後でゆっくり聞くのが良いじゃろう」
何だかんだと三人娘に甘い大人しか、ここにはいないからなぁ・・・今夜は長くなりそうだ・・・
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