第50話
「「「ウソでしょ?本物は完全に天使だわ!」」」
ここまで三人の声がハモるのなんて、何年に一回のことかしら?
エレベーターから降りて来た警護対象の少女達を見た瞬間、それほどの衝撃を受けたわ。
そして心の中で誓ったの、私達以外の誰も近付けないって!
打ち合わせをした公安の御戸部さんが話しているのが、唯一異世界人との交渉権を持っている涼木さんね。
そして、その前を歩いている天使達が私達が警護する少女達。
今日は、彼女達は彼の姪ってことになってると聞いている。
御戸部さんが私達に気付いたようね。
真っ直ぐこっちに向かって来たわ。
さてと、推し事・・・違ったわ、お仕事よ!
「涼木さん、彼女達が・・・」と御戸部さんが私達を紹介しているわね。
「涼木です。今日は姪達をお願いします。女の子用の服なんて縁が無い物で・・・」
そう言って彼が私達に彼女達を引き合わせてくれたわ。
だから三人の中で代表して私が「御任せ下さい!」って良い顔で請け負ったわよ!
さてまずは自己紹介と組み分けね。
「まずは私、西川 彩葉よ。ソフィリアさんの担当をするわ」
「次は私、北林 恵美です。アマンダさんの担当よ」
「最後の私が南原 今日子ね。リズベッタさんと一緒に行動するからね」
「「「よろしくお願いします!」」」
きちんと挨拶できるって、それだけで貴重よね。
最近の子達って挨拶も碌にできない子とか多いから・・・
「それで私達の前にあるのが服を買うお店よ。色や形、種類と沢山あるから、色々と似合うものを探しましょうね」
「・・・あの」
「ソフィリアさん、何かしら?」
「ソフィーで良いです。実は良く分かって無いんですが、服って高くないですか?」
服が高い?
この店は比較的リーズナブルな量産品を取り扱っているから高くは無いと思うのだけど?
涼木さんて、貧乏なのかしら?
あっ!もしかしたら、あっちの世界では高いってこと?
「・・・それはここでの値段かしら?それとも前の所の値段かしら?」
「あちらでは高かったので・・・」
「なるほどね!ここは割りと安い所なの。だから心配はいらないわ。お金も預かっているけど、とても使い切れないと思うわよ」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、大丈夫よ、心配しないで」
私達には異世界の知識が無いから、感覚の違いが分からないわね。
ここはもっと意思疎通をしないと・・・
別に推しのことが知りたいからって興味からじゃないのよ!
これは仕事上必要なことなの!
推し事・・・また間違ったわ、お仕事よ!
「じゃあ、まずは全員で下着売り場に行きましょう。涼木さんが一番困ってたのはココだと思うし」
「そうでしょうね。最近は、この程度のことでも通報する人がいるしね」
「そうよね。誰も彼もが犯罪者って訳じゃ無いんだけど、判断は難しいもの」
「下手に彼女達みたいな子と歩いてると、それだけで目を引くだろうし、余計に注意がいるかも?」
「目を引くって、釘付けって方が適切じゃない?」
「思うだけなら犯罪じゃにけど、誰にも手は出させないわ!」
三人の少女達を案内しながら、小声で話をしてると奥まった下着売り場に到着した。
「ねえ、ソフィー?下着ってどんなのを着けているの?」
「下着ですか?ごく一般的なパンツですけど・・・」
少し恥ずかしそうな感じで答える彼女が・・・可愛いわっ!
「ここにあるのが、この世界の下着なんだけど、見た感じは似てるのかしら?」
「・・・初めて見ました。これが下着なんですか?」
文化が違うのね。
となると、サイズとかも分からないだろうし・・・採寸からしないとダメみたい。
「あのね。下着もそうだけど、服も合う大きさって言うのがあって、それが分からないと大き過ぎたり、小さ過ぎたりすることがあるの。だから先に大きさを調べましょう!」
「ねえ、この子達って姿を変えてるんじゃなかった?こんなところでサイズを測っても意味が無いんじゃないかしら?」
「そう聞いてるわ。あっちの試着室の方でやった方が良いわね」
「えっと、魔法で姿が変わってます」
「それは私達が見ても平気かしら?」
「モリトは他の人に見られないように確認してもらえって言ってたよ」
「私は大丈夫だけど、ソフィーとアンは尻尾があるからだよね?」
な、な、な、なんですとぉ~!
し、し、し、尻尾ぉ~!
つまり彼女達の内二人は獣人って種族なのっ?
あ、あ、あ、ありがたやぁ~!
「「「行こう。試着室へ!」」」
本日二回目、私達三人の声がハモったよ。
尻尾があるってことは、耳もあるよね?
どんな耳だろう?
尖がり三角耳?長い耳?タレ耳?丸い耳?どれでも良いよ!
だって絶対に可愛いものっ!
「あの~、この世界には私達の様な種族はいないと聞いているので、驚かないで下さいね」
そう前置きしたソフィー達は首に掛けていたネックレスを外す。
そして現れたのは・・・
「うっ!・・・可愛いっ丸耳っ!」
「ぐっ!・・・猫耳っなんて尊い!」
「ふぁっ!・・・とんがり耳って不意打ちだわっ!」
三者三様に胸を押さえて悶える、可愛いモノ好きな女性達だった。
「あの、大丈夫ですか?」
「だ、だ、大丈夫よ。あんまりに可愛いから驚いただけなの」
「か、か、可愛いだなんて・・・」
今度は、可愛いと褒められた少女三人の方が身悶える番だった。
「それにしても、これは予想外に問題だわ」
「そうね。これはこの世界には無い問題だわ。何か解決策を考えないと」
「服は加工すれば良いけど、問題は下着ね。生地が生地だから、簡単には加工できないでしょ?」
「・・・一つ思い付いたのだけど・・・これを見て」
南原の差し出したスマホを覗き込む二人。
「「今日子!あなた、コレって・・・ちょっと過激じゃない?」」
「でも、ここがこうカットされてるから・・・」
「確かに、その部分は要件を満たしているけど・・・」
「全体的なデザインが・・・ちょっと扇情的じゃない?」
「違う!違う!コレを踏まえて加工の方法が検討できないか?って提案なの!」
「「あぁあ~そっちなのね!」」
確かにコレを踏まえれば、良い感じにはなりそうね。
じゃあ・・・
「色々と違いがあることは分かったわ。そこで相談なんだけど・・・買った服を私達が合うように加工しても良いかしら?」
「えーっと、尻尾の穴を開けてくれるってことですか?」
「そう思ってくれれば良いわ」
「それは・・・モリトに聞かないと・・・」
「そっか!今は彼が保護者なのよね。なら後で確認してみましょう?それで良い?」
「それなら」
彼も尻尾のことは分かってるはずだし、情報漏洩を考えると下手な所に頼む訳にも行かないでしょう。
なら、説得できる!
三人でやれば時間も短縮できるし、何よりこの子達に私達が手を入れた服を着てもらえるなんてっ!
何て、御褒美なのっ!
「さあ、手分けして下着以外の服を決めるわよ!」
「そうね、下着は一番無難なタイプに統一して加工のし易さを優先しましょう」
「その分、外見は力を入れないと!」
私達の服選びは、まだまだ始まったばかりよっ!
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