第49話

「あの~、そろそろ時間じゃあ?」

「ですが・・・アレ、止められます?」


御戸部さんと一緒に見る先には・・・六人の女性がはしゃぎまくってる姿が・・・


アレ止めたら・・・殺されたりしないよな?

いやいや、流石にそれは無いだろう。

予約時間もあることだし・・・気合を入れて!


「買う服は決まったか?そろそろ昼食の時間だしレストランを予約してるから行くぞ」


これなら怒ったりはしないだろう。


「えっ!もうそんな時間ですか?」


そう聞き返してきたのは、御戸部さんが呼んでくれていた三人の女性の内の一人だった。



*** *** *** *** *** ***



私は県警の警備部に所属している西川 彩葉いろは


あれは二日前のことだった。

突然、前置きも無く公安の御戸部と名乗る男性が押し掛けてきた。


そして「緊急で警備をして欲しい人物がいる」と言い出したのだ。

見ず知らずの人間に、そんなことを言われても、そんな要望を聞くことなどできない。

・・・はずだった。


だが実際は、署長から「最優先事項だ!」の一言で許可が出てしまった。

その結果、警備部だけでは人員が足りず、地域部と交通部からも人員を出してもらうほどの大事になった。


警護対象は・・・少女が三人・・・って誰よ!それ?

実際は、少女三人とその保護者である男性が一人いるらしいが、男性の方は公安が警備をするらしい。

私達県警が警護するのはその少女三人だけだと言うのだ。


はっきり言って、意味が分からない!

何故県警が何十人も動員して警備をしなければならないの?

いったい、その少女達は何者なの?

そんな疑問しか出てこなかった。


どうやら部長クラス以上は何か知っている様子だったが、それが下の私達に知らされることは無かった。


ただ、相手が少女と言うこともあって直接警備をする女性三人が選ばれた。

私と同期の女性二人だ。


私達だけは態々誓約書を書かされた上で、少女達ののことを聞かされることになった。


「えっ!異世界人の少女?私達の街に異世界人が住んでいるんですか?」


そう叫んでしまったが、全世界を巻き込んだ総理の記者会見を知っている私としては仕方の無い反応だと思う。


「そうだ。勿論、世界の何処にも公表もしていない極秘情報だから注意して欲しい。それと一緒に行動する男性は保護者と言ってはいるが、事実は少し違う。彼は、現在異世界人達と交渉できる唯一の人物であり。正真正銘の日本人だ」


公安の御戸部さんが説明してくれるが、余りの内容に理解が追い付かなかった。


だってそう思うでしょ?

知らない間に、私達の街に異世界人が住んでいて、なのに県警の私達には何も知らされていなかったとか、普通ありえる?


いや、ありえるのかも?

流石に署長は知ってたのかもしれないわね。

でも守秘義務で縛られていた可能性があるかも?


何にしても、超重要だってことは理解できたわ。

だけど、そんな重要な警備・・・考えただけで胃に穴が開きそう・・・よね。


「で、本題なんだが。これが警備対象の少女達だ」


そう言って、デジカメの画面を見せられた。

何で?デジカメ?と思ったのが分かったのか「情報漏洩を考えて、スマホ等の通信機器での撮影は厳禁になっているんだ」だって。

本当に厳重な警備をしてることが理解できて、余計に胃が・・・


だけどそれもデジカメの画像を見るまでだった。


「「「何よこれっ!三人とも天使なのっ!?」」」


私達三人が見事にハモったのも無理は無いわよ。

だって、そこに写っていた少女達は・・・超絶美少女達だったのだもの!

女である私達でさえそう思うってことは、危険よっ!

絶対に良からぬ男が!いいえ、普通の男でも道を踏み外しかねないわ!


私達三人はお互いを見て頷いた。

他の二人も同じ考えみたいね。


私達は同期で三人だけの女性ってことで、お互いを良く知っているわ。

私、西川 彩葉。

他の二人が、北林 恵美と南原 今日子。

警察学校の時は、ここにもう一人東山 甚八って言うオネエが入って〈東西南北ぜんほういシスターズ〉と影で言われてたわね。

四人全員が共通して好きだったのが「可愛いモノ」人でも動物でも小物でも可愛いは正義だったわ。


そんな私達が、この三人の少女達を見て黙っていられるはずが無いのよ!


異世界人?そんなの関係無いわ!

彼女達を護るのは私達よ!

どんなヤツからも絶対に護り通してやるわよっ!


「あー、盛り上がってるとこすまんが、警護以外にも仕事があるんだ。その説明をするために君達に機密情報を開示したんだが、異世界人の彼女達はこの世界を知らない。そのための実地見学って言う側面があるのと、彼女達が着る服の購入を君達にお願いしたいんだ。こればっかりは男がでしゃばる訳にもいかん。同じ女性でないと不味いこともあるからな。なので、一人に一人が専属として付いて欲しい」


何てことっ!

専属なんて、何て夢の様なっ!


「誰が誰に付くか決めましょう!」

「私は彼女が良いかな?」

「私は彼女ね!」


「じゃあ、私が彼女かな」

「なるほど。北林君が選んだのは次女のアマンダさん、南原君が選んだのが三女のリズベッタさん、西川君が選んだのが長女のソフィリアさんだな」


「これは彼女達から直接聞かない限り口にしてはいけない情報だが、現在異世界人は五人いて、その内一人は老人で賢者と呼ばれる人物、その友人だと言われる成人女性、そして彼女達三人だ。彼女達は本当の姉妹では無い。それぞれが別の種族で全員が両親と死別している。そのため彼女達三人は賢者が保護者となるそうだ。辛い記憶もあるだろうし、絶対にこちらから両親のことに触れることなど無いように注意してくれ!」


・・・何てことなの!

あんな可愛い子達が、そんな辛い目に合っていたなんて!


私達はお互いを見合って、無言で頷いた。

絶対に悲しい思いはさせまい!そう決心したのよ!


そこからは、当日の予定を確認することになった。

他の警備担当者達にも情報は共有されているらしいけど、私達は専属として同行することになるので、もっと細かい打ち合わせがあったのだ。


注意点も要望も多いが、可愛い子達のためだと思えば何も苦にはならなかった。

むしろ、余計に気合が入って燃えるわ!


だってあの子達に自分達がコーディネイトした服を着せられるのよっ!

御褒美以外の何物でも無いんだから!


あぁ~、当日まで興奮して寝られないかも?

いやいや、しっかり専属として頑張るためにも寝ないって言うのは無しね。


無理にでも寝るために睡眠薬を処方してもらおうかしら?

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