第47話
今にも血管が切れそうな表情の御戸部さんを落ち着かせるのに十分以上掛かった。
「・・・と言う訳で、私も会っていますが、ただの子供にしか見えませんでした」
「仮に涼木さんが言う通りだとしても、危険でしょう?特に今は色々と入り込んで来てますし」
御戸部さんが言うのは、総理の緊急記者会見以降、日本国内に入って来ている各国の諜報員のことだろう。
「そこは賢者の方で色々と準備されると」
「準備ですか?いったい何を?」
「さぁあ?身を守る、何か、を用意するんじゃないですか」
「そんないい加減なっ!」
「そうは言いますけど、私に魔法の何々とか言われても、それがどんな物かとか分かりませんから」
「・・・確かに言われることは分かりますが、できる限り確認しておくべきでしょう?案内するのは涼木さんなんですし」
まあ、護衛って立場を考えると御戸部さんの言うことは正しい。
何か、を用意したのは俺だから内容は全部知っているんだけど、公表するのは
三人とも、まだ魔法らしい攻撃魔法は使えないから、逃げれるように身体操作系の魔法ばかりを鍛えたんだ。
だから次に必要なのは、護り、ってことで〈簡易結界〉に〈反射〉の能力を付けた魔道具を持たせてる。
〈簡易結界〉は、持ち主の周囲に結界を展開するけど強度が弱いんだ。
たぶんトラックと正面衝突したら負けるので〈反射〉を付けた。
〈反射〉は、言葉通りあらゆるエネルギーを180度反転させる魔法だ。
至近距離で拳銃を撃たれても、銃弾を相手に反射できる。
〈簡易結界〉は耐えることが目的の魔法だが、それに〈反射〉を組み合わせると非常に有効なんだ。
ただ、それを御戸部さんに教えるか?って言うと・・・教えられないんだよな。
色々と興味持たれるだろうし、面倒臭いことになりそうで・・・
「賢者が言うには、三人の安全は気にしなくても良いそうで、御戸部さんは私の護衛に集中してもらえれば」
「そうは言いますが、重要人物であることに変わりは無いんですから完全に無視するなんてできませんよ!」
「あっ!賢者からの呼び出しです。急いでるみたいなんで、取り敢えず、そう言うことなんで、よろしくお願いします!」
俺は何だか御戸部さんとのやり取りが面倒に感じて逃げ出すことにした。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!何時呼び出されたんですかぁっ~」
「頭の中に直接声が届くんですぅ~」
ちなみにこれは本当だ。
〈遠話〉って言う魔法だったりする。
名前は〈遠話〉だけど、向こうの世界では実質的に届くのは半径い1km以内ぐらいだった。
こっちの世界に来てからは、まだ限界が分かってない。
現状確認できている最高距離は35kmで、まだまだクリアに聞こえていた。
魔素量が百倍なので、そこから予測するかぎり100kmは届くんじゃないかな?
一度、師匠にスマホの使い方を説明したのだが、現代の電子機器は扱いが難しいようで断念したのだ。
その後、余り使い道が無かった〈遠話〉を思い出して使ってみたところ、師匠が「こっちの方が楽」と言って使い続けている。
誰にも会話の内容を知られることが無いって点では非常に便利だ。
「・・・後で御戸部さんに日程と行動予定をメールしとかないとな。あっと、その前に三人と顔合わせも必要だったな!」
後日、お出掛けの前々日に工場で顔合わせをすることになった。
「良いか?これから来るのは護衛の人だが、俺とみんなの関係は知らない。だから、向こうの世界の話はしないこと!絶対だぞ」
「「「はいっ!」」」
「よろしい!・・・そろそろ時間かな?」
そう思って窓の外を見ると、丁度車が入って来たところだった。
「おはようございます、御戸部さん」
「おはようって、涼木さん。本気でお出掛けするのか?」
「そう言いましたし、お願いしたと思いますが?」
「いやいや。確かに聞いたけど・・・」
「みんな御挨拶して」
「ソフィーです」
「アンです」
「リズです」
「「「よろしくお願いします!」」」
「っ!フグッ」
ふぐ?御戸部さん
もしかして処理が悪かった?
だからか?胸を押さえて苦しそうにしてるのは!
えっ!ヤバイ?
〈解毒〉魔法が必要か?
でも、ここで魔法は不味いぞ。
どうする?フグ毒って危険度高かったよな?
致死性も高いはずだし、猶予は無い?
「「「・・・大丈夫?」」」
「グゥッ!・・・だ・・・大丈夫・・・です」
えっ?大丈夫なのか?
本当に?まだ胸を押さえてるのに?
でも、本人が大丈夫って言ってるよな。
あっ!解毒済みなのかも?
時間が無くて急いで来たから影響が残ってるとか?
俺は最近は病気とか毒とか無縁だから、感覚が分からなくなってきてるんだよなぁ。
でもまあ本人が大丈夫だって言ってるし、大丈夫だと思おう。
「で、二日後に彼女達を連れて出掛けるんで」
「ちょっと、良いかな?」
御戸部さんに手招きされる。
俺は状況が良く分からずに御戸部さんに近付いた。
「なぁ涼木さん、あんな可愛い子達、普通に連れて歩いてるだけでヤバイぞ」
「えっ?そんなにですか?」
「当たり前だろう。おかしなヤツじゃなくても、おかしくなるぞ。犯罪者が量産されるって」
いやいや、確かにあの娘達は可愛いけど、そんなにか?
「どうしたら良いと思います?約束なので、お出掛けは決定事項なんですが・・・」
「・・・最寄の警察に応援を要請して私服の護衛を増員します。移動の車は私が手配しますから。後は・・・ちょっとこっちで警備状況を調整します。行動予定は変更無しですよね」
「ええ、多少の時間のズレはあると思いますけど」
「子供相手ですし、そこは諦めます。ただ、予定外の場所にだけは行かないで下さい。もし行きたい所ができたとしても、それは次回と言うことでお願いします」
「・・・わ、分かりました」
何か、ただのお出掛けが大事になってるような・・・
これって、大丈夫なんだろうか?
なんだか今更ながらに心配になってきたぞ。
ちょっと〈追跡〉の魔道具を持たせた方が良いかなぁ?
もう一回考えてみるか・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます