第44話 緊急記者会見(3)

総理は続けて爆弾を落とす。

会見場内の記者達は既にライフはギリギリ、瀕死の状態なのに、である。


「ダンジョンの所有者はと呼ばれるの方です。その方が、このようなことを言われています。「誰でも良いから、ダンジョンを攻略して最上階まで到達してみよ。そうすれば、ダンジョンの所有権を進呈しよう」だそうです」


今回、総理の落とした爆弾は時間差式だったようだ。

世界中が、その言葉の意味を理解するのに数秒の時間が必要だった。


そして世界中の人間が「えぇえぇえーーーー!!」と叫んだ。



「・・・私自身、何を馬鹿らしいことを言っているのだ?と思ったのですが、御本人の意思は固いようでして全250階層のダンジョンを攻略された方は無条件でダンジョンの所有権を認められることになります。これがどういう意味かと言いますと、現在は所有者であるの意向で入場に制限を設けておりませんが、所有者が変わった場合は、その制限等を変更できると言うことになります」


総理の言葉の意味、それは・・・ダンジョンを攻略した者が世界の新たなエネルギーを掌握できる、そう言うことだった。



◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇



北京では、この放送を観る国家主席が、大笑いをしつつ見ていた。


実際の所、さきほどまでは顔を真っ赤にして怒り狂っていた。

しかし、ダンジョンを攻略した者に所有権が与えられると知って、コロッと態度が変わったのである。


「はっはっはっは! そうか、こういう話しになるのか・・・フフフ、日本政府もよくやる・・・いや、違うな、総理か?・・・フフフフ、なるほど、我々や産油国の反応を見事に読みおったか・・・」


その言葉に側近が……


「主席、対応は、どのように致しますか?」

「もちろん国内のメディアは全てこちらで情報を制御だ。それにここまで荒唐無稽な日本の会見など、そう簡単に世界も信じはすまい。まぁ確かに異世界人の技術という話ではあるが、それ自体に信憑性はまだ無い。上手く情報を制御して我が国でダンジョンとやらを手中に収めるのだ。まずは・・・軍部の掌握を急がせよ」


「では報道官には?」

「対日政策として日本が新しいエネルギー技術を独占しようとしている。そう報道させたまえ。嘘も言い続ければ、いつか本当のことと判別できなくなる。我が国の中だけなら、嘘も真だ」



それこそ・・・この国の常套手段・・・である。


南京大虐殺がいい例だ。

三十万人、この人を馬鹿にした様な数字を信じているも存在するのだ。


冷静に、ならなくても簡単に分かることだが、三十万人と言うのは莫大な数なのだ。


簡単に言うと、日本最大級の収容人数を誇る神奈川県横浜市のサッカースタジアムで最大収容人数は七万二千人ほどである。

ホームの試合の度に満席になったりする、アレでその人数なのだ。


その四倍以上の人間を、今より武器の能力の低かった当時、日本兵が大量虐殺した?って、どれだけ日本兵は優秀だったんだ?


それだけの人間を殺して、更にその死体を処理するなんて、凄過ぎである。

本当に日本兵がやったのだとしたら、当時の日本兵は核兵器より優秀だと言うことになるのだ。


だって、広島の原爆の犠牲者が約二十八万人だと言う事実があるのだから・・・


核に汚染されたり、死体の山になったりしないで三十万人を虐殺できるのだったら戦争に負けることなど無かっただろう。


しかし現実は違う。

日本は戦争で負けた。


つまり、それだけの能力しか無かった訳だ。


だから、世界は誰もそんな主張など信じもしない。

どう考えても常識的にあり得ないからだ。


それが真実ではあるが・・・聞かされ続けると人はいつしか「本当だ」と思い込み始めるのも事実だったりする。


それを国中で悪用しているのが、この国なのだ。



◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇



所変わってホワイトハウスでは、大統領、補佐官、統合参謀本部議長などの御歴々が日本からの中継に見入っていた・・・


「オー・マイ・ゴッ! 総理、その話は聞いてないぞ!」


大統領はは渋い顔で文句を言っていた。

事前に情報を渡され、試作品も見ていたために暢気に構えていたが、まさか最後の最後にこんな爆弾が落とされるとは、ってところだった。


「大統領、今回の緊急記者会見、事前に情報を得られていたのですね?何故黙っておられたのですか?」


議長から追求の言葉が飛ぶ。


「議長、私は馬鹿では無いのだよ。君の支援者の中に石油メジャーの息が掛かった者がいるだろう?そんな所に情報を漏らされては堪らないからねぇ。今日の正式な会見前に情報が漏れていたら、我が国はあの新しいエネルギーを得る機会を失っていたかも知れない。大国である我が国が民間企業のせいで世界の時流に乗り遅れる訳にはいかないんだよ。ああ、だからと言って議長の能力は本物だと分かっているよ。ただ、今回の内容は君に知らせられないと判断しただけだからね。まあ支援者の要望に苦慮するのは、お互いさまだろうがね」


叱責、苦言、理解、共感、なかなかに大統領は人心掌握に長けているようである。

これでは議長は何も言えないだろう。


そんな少々重い空気の中、一人の連絡官が大慌てで会議室に跳び込んで来た。


「ハッハッ・・・だ、大統領閣下、に、ざ、在日大使館の大使から、し、至急電です・・・ハァ・・・」

「ん?大使から?」


差し出された紙の束を受け取り、急ぎそのかなり長めの文章に目を通す。

そして・・・


「・・・な、何っ!?・・・そ、そんな!そんな・・・そんなことが・・・こ、これが確かなら!・・・」と大統領。


「えっ!まさか?・・・日本は本気ですか?・・・いや、今の日本なら・・・あり得るのか?」と補佐官。


「いや待てっ!待て、待て・・この提案は・・・これがもし本当なら捨て置けん・・・」と大統領。


「もし本当なら・・・大チャンスです、大統領。世界で優位に立てること間違い無しです」と参謀議長。


「議長、言っただろう?世界の時流に乗り遅れる訳にはいかないんだよ」と大統領。


「これが見返りと言うのなら、確かに大統領の判断は正しかったのでしょう」と参謀議長。


「・・・ですが、大統領。これは・・・色々と根回しが必要です」と補佐官。


「ああ、直ぐに関係者を集める用意を!会議だ」


大統領以外の人間が慌てて会議室を出て行く。

一人残った大統領は、総理の言葉を思い出していた。


「この絵図を実現するには同盟国である貴国の協力は必要不可欠。成功すれば、それなりの優位に立てる情報を渡せるかと思います」


そう総理は言っていた。

その情報がコレとは・・・


「まさか、現代兵器ではモンスターに太刀打ちできなくなるなどとは予想もしていなかったよ。それに加えてモンスターに有効な武器のレシピとは・・・」


間違い無く世界中で、日本以外に知りえない極秘情報であると断言できる、特級の極秘情報。

コレがあるだけで、様々な国との交渉がスムーズになること間違い無しである。


「・・・これは少々貰い過ぎな気がするな・・・見返りが必要かもしれん。今、日本との関係を悪化させる訳にはいかないからな・・・」

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