第37話
俺が何に気付いたか?
それは・・・魔石のことだった。
エネルギーに革命的な変化をもたらすであろう魔石のことを秘匿するように仕向けたんだけど、その方法に一部不備というか不足があったんだ。
海外の産油国や石油メジャーに情報が漏れれば強硬手段に出る可能性はあるので秘匿自体は間違いでは無いんだけど、完全に他国をシャットアウトしたのは不味いのだ。
だって、環境汚染を解消しようと思えば、魔石を世界中に供給しないとダメだろ?
それを日本人だけで確保なんて、できる訳が無いんだよ。
世界中から戦う人間を呼んで、彼等が集めた魔石を世界中にバラ撒けば、より早く環境汚染が改善するはずなんだ。
そのためには、海外の国の人達にもある程度限定した情報を限定したルートで開示しないと準備もできないだろう。
それに、日本一国でやるより仲間になる国が多いほど、その後の安全性も増すと思うのだ。
まあ、俺が考えてるだけで、誰がどうやって誰に話すかとか決めれる訳じゃ無いんだけど。
たぶん今は完全に日本一国で動くことしか考えて無いと思うんだよな。
それじゃあ絶対に行き詰ると、そのことに気付いたんだ。
日本国民の何割かで、全世界60億人以上が必要とする魔石なんて集めれる訳が無いんだから供給が行き詰るだろ?
そうするとエネルギーの変化が緩やかになって、結果環境汚染が改善しないと思うんだ。
こういうのはできるだけ早く変化を推し進めないとダメだって思うんだよな。
ってことで、俺がミスに気付いたことで色々考えた結果、世界中が無視できない魅力のある一つの餌を思い付いた。
それは・・・「最上階まで到達すると賢者の塔の所有者になれる」・・・って言うものだ。
そんなこと勝手に決めて良いのか?って思うだろうけど、別に問題無いんだよ。
だって、絶対に到達できないって自信があるからな!
まず、最上階って言うと師匠が住んでる所だぞ。
その一つ下の階はレティー専用の階層で、レティーはドラゴンだ。
つまり、ドラゴン形態のレティーを倒して、師匠と戦って勝たないとダメって無理も良いところだろう。
師匠が戦うことになれば、勿論弟子である俺も参加するし、通常業務をしてるゴーレム達も参戦するだろう。
もう俺が超巨大な太鼓判を押してあげれるぐらいに、不可能な無理ゲーだって!
でも、レティーのことは誰も知らないし、師匠の魔法も誰も知らない。
つまり誰も強さの想像ができないと思うんだ
そこにこの餌をぶら下げられたら?
喰い付くヤツって多そうじゃないか?
で、喰い付いたヤツは自分が所有者になる夢を見てるから、変な攻撃とかはしないだろ?
さらに、上の階層に行くためには戦うだろ?
そうすると魔石が手に入るから売る訳だ。
で、それが世界に流通することになる。
海外の産油国や石油メジャーだって、石油の埋蔵量に限りがあることは前から分かってる。
なら、今後どうするか?って考えた時、塔を所有できれば、その問題が解決するって思うだろう。
益々、塔に来て戦う人間が増えると思うんだよ。
まあ、かなり雑な考えなんで、そのままって訳には行かないだろうけど、一番穏便かなとは思ってるんだ。
ただ、これを御戸部さん経由で提案した時の反応は分からないけど・・・
で、何でこんなことになってるか?
それは神様から貰ったメールの情報が元になってる。
要は海外の諜報機関が動いてるぞ!注意しろよ!って内容なんだけど、ずっと国内の御戸部さん達しか相手してなかったから忘れてた海外の反応ってのに気付いたんだ。
まあそこから考えていく内に問題点に気付いたって感じ。
さてと・・・話をしないとな・・・
「・・・あの、それ本気ですか?」
「今説明した通りですけど?」
「冗談じゃ無いんですね?・・・何で、今なんですか!」
「だって、ずっと秘匿し続けるのって無理があるでしょう?早ければ何処かの諜報員が動き出すんじゃありませんか?」
「何処で、その情報を?」
「えっ!マジですか?単なる映画やアニメの内容から予想しただけなんだけど・・・」
真っ赤な嘘です、すいません・・・
「・・・はぁー、そう言う情報があるのは確かです。まだ確証は取れてませんけどね。で、言われることは分かりますが、今ガス抜きをする必要があるとは思えませんが?」
御戸部さん上手いこと言うな、ガス抜きだって。
「それはですね、日本人って争い事って苦手じゃないですか。今のままだとどれだけの人が魔石集めをしてくれるでしょう?」
「それは・・・」
「私が思うに、最初の参加者って凄く少ないと思うんです。だから、海外の人が魔石集めをすると釣られて日本人も始めるんじゃないかと・・・日本人て周りに流され易いんで・・・」
「日本の国民性ですか・・・確かにその傾向は強そうですね。ですが、当初言われていた通りエネルギー関係の既得権益を守るために暗躍する者達が出ると思いますが?」
ああそうか!良く分からない新しい物より、良く知っている古い物の方が良いって言う凝り固まったヤツがいるってことだな。
やっぱり、新しい物に魅力的な餌は必要なんだろう。
「実は、賢者に同じ話を聞かれて説明したんですよ。そしたら「面白そうじゃ。ならば、塔の最上階まで登ってこれたなら所有権を譲ってやろう」って言い出しまして」
「はっ?所有権を?譲る?」
「ええ、早い者勝ちで」
「け、け、け、賢者って、ば、ば、ば、馬鹿ですかぁぁぁぁぁっ~!」
それは怒ると思うんだけど?
「賢者曰く、できるもんならやってみるが良い、だそうで。実際は所有権は譲って、管理は賢者が請け負うってことみたいです。何せ魔法が使えないと管理できないんで」
「ほ、ほ、本気で言ってるんですよね?」
「そうみたいです。何でも、攻略は真剣にやらんと面白く無いじゃろう?面白くするためには、それなりの褒美が必要じゃからな、と」
「・・・そう言えば、賢者もこの塔を異世界で攻略したことで自分の物にしたんでしたか?」
「その辺の賢者の感覚が出た結果の言葉みたいですね」
「あ、頭が痛くなってきました。こんなの何て言って報告すれば良いんですかぁ?」
「それは、私が口出しできることじゃ無いですね」
陰ながら応援してますよ、御戸部さん!
頑張って下さいね!
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