第36話

都内某所、何処にでもある居酒屋の個室。

しかし実際は、このためだけに整えられた極秘会議室だったりする。


「・・・それで、本当に塔の中だけとは言え、魔法が使えるようになるのかね?」

「報告では、そう言ってきているのですが、検証はできないそうで・・・」


「それでは確証が無いと言うことかね?」

「現状は、そうなります。何でも、戦闘ができる人間が、塔の中で戦う内に〈魔素〉と言う物を取り込まないと使えないそうです。その流れで、やはり戦闘ができる人材が必要だと判断しています」


「それは必ずしも戦闘でなければならないのかね?」

「非戦闘員を守りながら戦うのは困難らしく、戦闘ができなければ足手纏いにしかならないと・・・」


「・・・そうか、研究者を同行させて〈魔素〉とやらを調査させたかったのだが・・・無理か・・・」

「それは我々〈分室〉も考えたのですが、無理だと一蹴されました」


「武器の検証も難しいと言う話だったね」

「ええ、そちらも戦闘ができるものが、それなりのモンスターと戦わないと判断材料にならないだろうと」


「そうだったね。・・・となると、やはり現状一番のネックは戦闘ができる人材か・・・少し時間をくれたまえ、人材を探してみよう。それとは別に、例の物はどうだったのかな?」

「問題無く確認できました。今は、御指示いただいていました内容でのテストに向けて準備を進めています」


「そっちの結果は、いつ頃出るのかな?」

「予定では、全ての結果が揃うには最短で一ヶ月は掛かるかと、一部初期段階から設計を見直す必要もありますので・・・」


「ああ、別に急かしている訳じゃ無いんだ。必要な時間は掛けてもらって構わない、ただ、長くなればなるほど周辺が五月蝿くなりそうでね」

「聞きました。例の迷惑おばさんが動き出したとか?」


「注意喚起が行ったかな?」

「はい。大臣直々に」


「下の者達にも充分注意させて欲しい。アレは本当に面倒だからね」

「重々承知しております」



*** *** *** *** *** ***



都内某所、有名ホテルのスイートルーム。


「何で一人も捕まらないのよ!」

「そうは言われましても、何故か必ず複数人で行動していまして・・・」


「向こうも警戒しているってことね!対応が早いじゃない」

「その通りかと」


「流石に荒事は避けたいし、困ったわね」

「今無理に〈分室〉の職員に手出しするのは、悪手ではないかと」


「分かっているわよ!でもね、ここまで徹底して隠してるってことは、それだけ大きなが隠されているってことなの。それは今後の私の政治家生命に強い力になると思うのよ。だから、何とかしたいのよ!」

「しかし、総理の肝いりである〈分室〉に余り強引なことをしますと」


「職員のリストはあったわよね?」

「はい、調査で分かる限りは用意しております」


「直接は難しいことは分かったわ。だから、搦め手で行きましょう。職員の家族や恋人を調査しなさい。そこから付け入る糸口が見付かるかもしれないわ」

「バレないように調査するなら、少々御時間が掛かるかもしれませんが?」


「変に警戒されて、これ以上面倒になるぐらいだったら、多少時間が掛かっても良いわ」

「畏まりました。では、そのように進めさせていただきます」



*** *** *** *** *** ***



某同盟国、中央情報局内、極東対策室。


「おいっ!日本の大使館から応援要請が来てるぞ」

「はっ?何で?」


「何やら、おかしな動きをしてる部署があるらしい。そこの調査を頼みたいんだとよ」

「たかが日本の一部署だろ、何で俺達に回ってきたんだ?」


「俺が知る訳無いだろ。でも上の指示だし、誰か出さないと不味いだろ?」

「日本なんて諜報関係は緩々ゆるゆるなんだから、適当に若いのを送り込んどけよ」


「あぁ、確かに。それじゃあ、今手隙なのは・・・この二人か。こいつらで大丈夫か?」

「どれ?・・・こいつらしか空いてないのか?」


「今はな」

「しかたないか。指示書出しとけよ」


「・・・分かった。しかし、心配だな・・・」

「人員がいないんだから諦めろよ」


「それにしたって、こいつらだぞ?」

「任務成功率ゼロ、だもんな・・・だが考え方によっちゃあ、これが初成功になるかもしれないじゃないか。少なくとも入局してるんだ、それなりの素質はあるってことなんだしよ」


「それに賭けるか・・・」



*** *** *** *** *** ***



何故だか最近、20文字と言う制限を利用したメールが頻繁に届いている。

その内容が、どれもこれも頭にが三つや四つ付いてもおかしく無いような情報だったりする。


「これって「対策しろっ!」ってことだろうな」


神様達も俺のことを応援してくれているってことだろう。


「しかし・・・名目上は俺って一般人なんだけど、何で巨大国家の諜報員の対策とか、一人でしなきゃいけないんだ?」


そう、貰った情報の中には映画なんかで有名な「某国中央情報局の諜報員」とかが入ってたんだよな。

それって一般人が、どうこうする相手じゃないでしょうがっ!


そうは思うんだけど、この情報を外には出せないんだよな・・・

出した途端「何処から、どうやって?その情報を得たんだ!」って言われるのが目に見えてるし・・・


そうなると、結局は俺一人で対策するしか無いってことになる。


「だぁあ~!面倒っ!」


もういっそ、レティーに空を飛んでもらって世界中にを叩き込んでやりたい!


「邪魔するヤツは、ドラゴンの炎で丸焼きにするぞっ!」って感じで・・・やった直後に神罰が落ちそうだけど・・・


まあ、無関係の一般市民を巻き込むのは本意じゃないし、やらないんだけど。

ただ本当に面倒だとは思ってる。

俺は、ただと師匠達と生活しながら、修行ができれば良いだけなんだけどな。


情報が漏れるのが不味いのは分かるんだけど・・・あっ!


「そうか!そうだよっ!あぁ~クソッ!俺のミスだった!」


俺は大きな間違いに気付いた。

いや、気付いてしまった!


何をやってるんだ!俺は!

直ぐに対応策を考えないと・・・不味い・・・

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