第30話
「なあ、涼木さん。コレは何だ?」
「攻略動画ですよ」
俺は御戸部さんにネットに投稿してたモンスターとの戦闘シーンを見せていた。
「何でコレがネットに投稿されてるのか?それが聞きたんだが?」
「それの再生数で収益を得て生活用品を買っているからですね」
嘘偽り無く、本当に生活費を稼ぐためにやったことだしね。
「何故?」
「だって、賢者達はこの世界の通貨なんて持ってないですし、俺も彼等を全員養えるほどの蓄えはありません。更に俺は彼等から土地の賃料も貰わないといけないんです。彼等に収入源を持ってもらわないと、おれは慈善事業家になってしまいますから」
「彼等に動画を撮ってもらって、それを涼木さんがネットに投稿。その動画で得た収益を賃料に充て、残金で彼等に生活物資を買っている。そう言うことで間違っていませんか?」
「その通りです」
「これ、もし本物だってバレてしまったら大事になるんですが?」
「信じたとして、何ができるんです?」
それは転移直後に多少は考えたが、その後の追加で調べた感じでは現代科学で見付けることはできないと判断したので問題無いと思ってる。
「ここに押し掛けてきたり、マスコミにリークされたり、他にも色々考えられるでしょう?」
「それで誰がどうやって、その目的の場所である塔を見付けれるんです?」
「・・・確かに、何処にも存在しているように見えませんね。証拠を見付けることができ無い訳ですか・・・騒いだところで、どうにもならないってことですね」
「まあ、そう言うことです。ただ、最初は確かに収益を得るためだったんですが、今は攻略のための映像資料として作っている感じですけどね」
「つまり、正式に塔を公表した時、人々がコレを見て学ぶための物だと?」
「今は、そのつもりですね」
そう!今!本当に今、御戸部さんに見せようと思って思い付いたんだけど。
「・・・分かりました。一応本部には確認しますが、コレはそのままで。書き込み等をチェックして怪しい人物がいないかの確認だけはさせてもらいます。もし仮に問題があるようなら、この動画は一時停止していただき、その補填は国から出すように要請しますので」
「う~ん、それはやり過ぎでしょう?本物だって疑っている人もいますが、それを普通の現実は許しませんから大事にはならないと思いますよ」
普通の現実とは要は、普通だと信じてることや信じられていることが現実だと強く思い込んでる精神状態で、これは簡単に取り除けない。
だから、この手のことに縛られてると自然とストッパーが掛かると思ってる。
「この計画を極秘で進める以上、その希望的観測に頼る訳にはいかないんです」
ああ、そうか。
極秘に進めないと不味いって進言したのは俺だったな。
それを否定はできなかったんだろうし、可能性は高いから無視はできない。
結果、本当に極秘裏に進めているのだろう。
それを俺が否定することはできないし・・・
「・・・分かりました、その件は了承します。で、それとは別に、この動画を見て、どう思いました?」
「・・・これは誰が?」
「そう言うことじゃなくて、この動きができますか?これぐらい動けないと武器の検証はできませんよ」
そうそう、これが言いたくてこの動画を見せたんだぞ!
「・・・無理です。モンスターとの戦闘を甘く見てました。何処の特撮映画だ!って言いたいですが、加工はされて無いんですよね?」
やっと、自分達の力量を理解してくれたようだ、よしよし!
「そうですね」
「で、誰が戦っているんですか?・・・まさか・・・賢者が?」
「違いますよ。ゴーレムです。ただし一体しかいない貴重な戦闘用ゴーレム『戦闘ゴーレムはマジで一体しかいないんだ、ただ映像はゴーレムじゃなくて俺だけど・・・』だそうですが」
聞かれるだろうとは思ってたけど、やっぱりか。
この後は、絶対にもっと造れないか聞かれるんだろうなぁ。
「・・・それって・・・」
「この世界には素材が無いので、次を作ることはできないそうですよ『うん、これは本当だな』」
先に無理って言っときますよ。
できたとしても管理する人間は二人しかいないんで、面倒だからやりたくないんで!
「・・・もしかして?賢者に聞きましたか?」
「勿論です。気になるじゃないですか!」
「ちなみに、どういう目的で?」
「『一瞬だけ』工場で人の代りに働かせると、人件費がいらなくなるので『って考えて面倒になったけど』・・・」
これはマジで考えて、直ぐに否定はした。
今更、工場で下請け仕事なんかやれる自信が無かったのだ。
下請けって理不尽な要求を突き付けられることが多いんだ・・・
「っ!なるほど、それは実用的だ」
「まあ、そんな楽できる方法なんて無いってことが分かっただけだったんですけどね・・・」
そう、昔は良く耐えてたなぁ、俺。
急な従業員の休み、材料の入荷遅れ、部品の不良、様々なトラブルが毎日のように発生し、それを処理しながら納品先の無茶を聞かないといけない板挟み。
あれをもう一度、とか言われても全力で拒否する自信があるな、今なら!
「で、最終的にどうされます?武器の確認?」
「今ここでは決めれないので、少し戦闘のできる人員を検討してみます。今は、この動画を一通り確認させてください」
「良いですけど、私のコメントは無視して下さいね」
「それは、どう言う意味で?」
「誤魔化すために適当に書き込んでるんで、本当と嘘が混じってますから」
「・・・了解です・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます