第28話
御戸部さんによって、チラチラと報告される話から色んな所で色々なことが進んでいるのは分かるんだけど、それがどの程度の進捗なのか?判断はつかない。
ただ、完全に御戸部さん達が俺との窓口に固定されたんだな、ってことは分かる。
俺としては新しく人間関係を構築するより楽なので良いんだけど、御戸部さんにとっては全く畑違いの仕事なんじゃないんだろうか?
とそんな感じで少しずつダンジョンを公開するための下準備が進んでいる訳だが、現在塔の中では問題が発生してる。
その問題ってのが、日本語!
折角、日本の住民として戸籍を取得できた師匠達なのだが、聞く、話す、読むはできるんだけど書くのはダメみたい。
あと、魔素が多過ぎる関係で意識して無いと魔法の効果が強くなり過ぎることがあるんだけど、特に〈翻訳〉の魔法が不味いみたいなのだ。
上手く魔素の多さに対応しないと、周囲の人にまで影響の範囲が拡がるみたいで、御戸部さんだけに〈翻訳〉を使ったつもりだったのに山元さんにも効果が飛んでしまったことがあったのだ。
これの何が不味いかって言うと、一般の日本人が突然余り得意では無い英語とか、それ以外の外国語を日本語並みに理解できるようになってしまう可能性がある訳。
不味いと思わないか?絶対に騒ぎになるだろ?
あとは、これから先ずっと生活する国の言葉は覚えた方が良いって師匠が言うもんだから、日本語の勉強をすることになったらしいのだが・・・日本語って難しいんだよ!
地球上で一番難しい言語って言われてるからなぁ。
で、余りの難しさにみんながギブアップ。
何とかならないものか?と考えた結果、マンガやアニメ、あとファンタジー系の映画なんかを教材にしようと考えたんだ。
だって、似通った世界観の話を基に勉強すれば覚え易いのかな?って思ったんだよ。
そうしたら「何で魔法の無い世界なのに魔法が題材になった話があるんだ!」とか「どうして存在しない種族を知っているんだ!」とか大騒動。
俺も、地球のことをそこまで詳しく話したことは無かったし、師匠達が知らなかったのも当たり前。
ところが突然そんなのが目の前にあるってなると、慌てるのも分かる。
結果、長々と日本の文化などの説明をすることになった。
その後は、基本的にアニメを中心に元になったラノベとかで日本語の勉強を始めたんだけど、なかなか進まないんだ。
理由は、まず文字の多さ!
平仮名、五十文字、プラス濁点、半濁点。
カタカナ、五十文字、プラス濁点、半濁点。
漢字、常用漢字だけでも二千以上、音訓だと四千越え。
ってことで、最低二千数百文字を知っていないといけない。
その上で、同じ漢字で意味の違う物や、振り仮名で意味が変わる物、擬音語、擬態語などなど。
もうこの辺になってくると放棄したくなるレベルらしい。
俺に言わせると「これに外国語からの外来語なんかも普通に使われているから、もっと増えるぞ」ってなるんだけど・・・
そんな訳で、最近は俺が時間を作っては日本語の授業をしてるんだけど、俺も教師じゃないから説明に困ることも多々ある。
なので、何故だか今更、俺まで日本語の勉強を始めたんだ。
教えるのに中途半端はね・・・
で、やってみると難しい。
日本人なのに日本語が難しいんだよ!
間違って意味を憶えてたり、地方で意味が違ってたり、もうっ!散々!
思わず、ネットで外国人向けの日本語講座の動画を探しまくったわっ!
あれ、良いんだよ!
いやー、助かったよ本当に!
まだ基礎の段階だけど、これに話し言葉なんかをプラスしだすと、前後の会話から意味を類推するとかって難易度が爆上がりするからなぁ。
先は長いよ、ホント・・・
この前隠れて師匠が愚痴ってた「何なのじゃ!この文字は!まだ、古代文字の方が簡単じゃぞ!」だって。
確かに画数の多い漢字って、外国人には何かの文様とかデザインにしか見えないって言うしな。
会話もだけど、漢字はかなりハードルが高そうだ・・・
「・・・と、今日の勉強はここまでにしようか。一度にやり過ぎても覚え切れないからな」
「「「やったー、終わったー」」」
ふふっ、三人娘は、これだから・・・
「ところで、師匠。例の追加のサンプルはできてるか?」
「できとるぞ。確認もしたがのう、特に問題は無さそうじゃが」
「なら良いんだが、ちょっと仕様に注文があるみたいでさ。俺の方で確認と調整がいるみたいなんだ」
「ほう?どんな内容じゃ?」
「電圧って言って、出力される電気の勢いを指定された値にして欲しいらしい」
「勢いのう、量では無いのじゃな?」
「ああ、違う。出力される量が変わるのは電流だからな。そっちは寿命が短くなるんだろ?」
「そうじゃな。量を増やせば、溜め込んだ魔素が減るのも早くなるのが道理じゃからのう」
この辺りは電池と一緒だと考えれば、良く分かるしな。
「じゃあ、後で取りに行くから!」
「用意しとくかのう」
その後、師匠から受け取ったサンプルを手に工場に向かう。
電圧を測ったりするなら、工場の機材を使った方が良いからな。
「えーっと、電圧、電圧っと。ここにコレを繋いで、取り敢えず設定はオートにしとこうか?実際に何ボルト出てるか分からないしな」
確か欲しいのは24Vだったな。
「で、今の出力は・・・31Vか・・・調整がいるな、これは」
となると、まずは魔石を取り出してっと。
俺は師匠の書いた魔法陣を読み解く。
コレがコウで、コッチがコレで、ソッチがコレを制御してて・・・ああーやっぱりだ。
電圧の制御とかは魔法陣に組み込まれて無いんだな。
しまったな。
これは俺のミスだわっ!
ちょっとこれは確認が必要だな。
魔石によっても出力が変わるかも知れないし、色々調べとかないと。
そうだよな、師匠達は電化製品なんて知らないんだから、そう言う細かい所は俺の方が専門なんだし確認しとくべきだった。
あの時は、魔素を魔法陣で魔力にして、電気に変換できただけでも大成功だったからな。
電圧の調整とか、すっかり忘れてたよ。
「まずは、魔石の種類で変わるのか?そこから確認だな」
手持ちの色々な魔石を並べて、順番に調べていくことにした。
まあ、結果としては魔石によって出力にバラつきがあることが判明。
それを全部24Vに調整しようと思ったんだけど、少々面倒だった。
なので、意見を聞くためにも二種類を用意12Vと24Vだな。
何でこの電圧にしたかって言うと、要望されたのが24Vだったのと、小さな弱いモンスターの魔石は出力が小さかったので、無理に24Vに上げるより半分の12Vの方が安定したからだ。
「まあ、これで様子を見てもらうか?」
ダメなら、その時は全部24Vに調整すれば良いだけだしな。
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