第25話
師匠の御祝いの食事会が終わった後、俺は手持ち(ホーン・ウルフと言う角の生えた狼のモンスター)の魔石を使って、武器の試作をしていた。
たぶん、話し合いに来た御戸部さん達が一番気になるのが、モンスターと戦うための武器じゃないか?と思ったのだ。
ホーン・ウルフの魔石は強化系なので、武器との相性が良い。
適切に使えば強度が上がり切れ味が増すのだ。
俺が準備しているのは、短剣、剣、大剣、槍、斧、斧槍、矢などだ。
矢は基本的に使い捨てだけど鏃は使い回しできるから、そこは回収してもらうって方法を考えている。
だって、本当に使い捨てにしたら買うのが大変だろ?
鏃ごと買うより、市販の矢の鏃だけ交換した方が絶対に安いだろうしな。
ただ、鏃は交換できるから良いけど銃弾はダメだろうな。
いちいち落ちた小さな弾を拾って回るなんて非効率的だからな。
その点、魔石で強化した刃物なら普通の鉄は切れるだろうし、使い手が良ければ鋼鉄でも切れるだろう。
サンプルとして貸し出しして確認してもらえば必要性も有用性も理解できると思うんだ。
まあ、そのためには遠距離での安全な戦闘はできなくなるんだけど、強いモンスターが魔法を使うことを考えると遠距離戦闘は分が悪いからなぁ。
・・・これは問題かもな。
弱い魔法しか使わない低階層のモンスターなら問題にならないかもしれないけど、階層が上がると対処ができなくなる可能性が高いよな。
塔の中限定で魔法が使えるようにできれば問題は無くなるだろうが、そんな限定的な対処って可能なのか?
魔法以外で遠距離の攻撃ってなると、やっぱり銃器だろうけど・・・効果は薄いだろうし・・・
「一回、師匠と話をしてみるか?」
*** *** *** *** *** ***
とある極秘会議の施設内、御戸部はある男性と話をしていた。
「どうです?進行具合は?」
「いやー、進まないとは思っていたけど、これほどとはね」
「何か一つでも進展は無いんですか?」
「ダメだね。色々話し合いはするんだけど、結局最後は「メリットが明確に提示されないと・・・」ってね」
「結局は〈利権〉ですか?」
「そうなんだろうね。で、そっちはどうなんだい?」
「今、コンタクトを取ってアポを入れてるところですね」
「今回は長くなるって言ってたけど、どれくらいだい?」
「向こうの都合次第ですけど、凡そ二週間程度かと・・・進行具合の話になる可能性もあるので、議事録は廻してくださいよ」
「分かってる。けど、そのまま見せちゃダメだよ」
「そんなことしませんよ。ただ、相手があることなんで、無限に待たせることはできませんからねぇ」
「進行させるためにも、良い情報を持って帰ってきて欲しいんだけどね、よろしく頼むよ」
「ええ、努力はしますよ」
政治家のくだらない欲望に心底呆れながらも、御戸部はそう返事をしたのだった。
*** *** *** *** *** ***
「・・・ってことなんだけど、どう思う?」
「ふむ。確かに今の塔のダンジョン内のモンスターを考慮すると・・・五十層あたりで頭打ちしそうじゃな」
「流石に〈身体強化〉無しだとそんなもんか」
「少々時間を貰うのじゃ。特定の場所という限定条件を組み込んだ魔道具が作れんか調べてみるのじゃ」
「師匠、面倒なことを頼んですまないけど、魔石の安定供給を考えると必要になると思うんだ。手伝えることがあれば言ってくれよ」
「ふんっ!まだまだ弟子に心配されるほど落ちぶれてはおらんのじゃわい!」
あらら?怒らせちゃったか?
・・・ちょっと顔が赤い?
あぁー、照れてるのか!
うん、ここは気付かなかった振りをしておこう!
師匠の部屋を出て、次にやることは・・・無い!
だから、また魔法の修行かな?
まだまだ憶える魔法は沢山あるし、今の内に進めないと日本政府が動き出したら忙しくなるはずだからな。
・・・しまった!
魔道具が完成したんだから、報告に行かないといけなかった!
そうだよ!勝手に完成だって祝ってたけど、神様に認められなかったらパーになるじゃないか!
俺は大慌てで完成した魔道具を持って、スサノウ様に指定されていた場所に向かった。
二礼四拍手一礼をするが、これは出雲大社特有の参拝方法だ。
では、何でこれをしてるかって言うと、スサノウ様に俺が来たって分かってもらうために指定されたのだ。
他の人と同じだと、誰が来たのかいちいち確認するのが面倒だったらしい。
一瞬『神様がそれで良いのか?』と思ったが、最近の日本人の信仰離れを考えると余り言えた立場では無いと考え直した。
『スサノウ様、魔道具が完成しました。御確認をお願いいたします』
『おっ!来たか。どれどれ・・・ふむ、ツキ姉様から聞いている内容に合っていると思うが、一度確認してみよう。そのままで少し待て!』
待てと言われれば、待つしかない。
静かに戻ってこられるのを待とうと思った瞬間には『確認できたぞ』と戻ってこられた。
・・・そう言えば千倍以上の時差があったな、忘れてたよ。
『結果から言えば、問題無いそうだ。このまま進めて良いとよ!』
『それを聞いて安心できました。ありがとうございます。』
『何、この程度何でも無いわっ!それよりも、儂から一つ礼を言わせてくれ。儂ではできんかった、姉様達の悩みを解消する手立てをしてくれたこと感謝する』
『っ!御止め下さい!スサノウ様に御礼を言われることなど・・・』
『謙遜するでない!色々と思惑や考えがあるのだろうが、それはそれ。実際にその魔道具が悩みの解決策であることに間違いは無いのじゃ。素直に礼を受け取っておけば良い!』
『・・・分かりました。謹んでスサノウ様の御礼の言葉受け取らせて頂きます』
『うむ、それで良い。今後は何か困ったことや相談があればここに参るが良い。何かしらの助言は可能だろう』
『ありがとうございます。もし何かありました時は御相談させて下さい』
『では魔道具の普及、頼んだぞ!』
・・・疲れた。
短い時間だったけど、神様とのやり取りは精神的に堪えるな・・・
だけど、魔道具に問題が無かったのは単純に嬉しい。
流石は俺の師匠だな!
そうだ!師匠にも神様から許可が出たことを報告しとかないと!
驚くか?喜ぶか?どっちだろう?
あぁー、驚き過ぎて固まるって可能性もあるか?
まあ、何にしても認められたのは良いことだ!
「あっ!御戸部さんにサンプルとして一台渡した方が良いのかな?」
向こうも口だけより、実物があった方が話が進め易いんじゃ無いかな。
武器のサンプルと一緒に渡せるか、師匠に確認しないとな。
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