第19話
「これ以上に面倒な大問題って何ですか!」
「それはですね・・・エネルギーになる魔素が少ないことですよ。さっき少しだけ説明しましたよね」
俺の言葉に、何回か目をパチパチしてから「あぁー!」って、思い出したみたいだ。
「それって凄く重要な問題じゃないですかっ!」
「分かってますよ、それぐらい。だから解決策も用意はしたんですけど・・・素材がね」
「素材?それは、その解決策のために必要ってことですよね?」
何だかんだと御戸部さんが俺の話に引き込まれてるな。
「そうですね。今の状況としては、魔素が空気中に少ないので、そのままでは魔道具が使えません。なら魔素を供給できる方法を考えれば良い訳です」
「確かに単純に考えるなら、その通りでしょう」
まあ、事はそう簡単でも無いんだけど。
「で、一番簡単なのは魔素を電池のように溜めて置くことなんですが、特殊な素材が必要なんです」
「何が必要なんですか?」
「賢者様の塔の中にいるモンスターの魔石ですね」
「はぁあっ!」
何とも期待通りの反応をしてくれて、ありがとう御戸部さん!
「聞き間違いじゃありませんよ」
「じゃあ、本当にモンスターって言ったんですね?」
「そうです。話しましたよね賢者様の塔のことも」
「ええ、聞きました。それを使って帝国?から身を守ってたことも聞きましたよ。だけどですね、そのモンスターがまだ塔の中に存在してるなんて聞いてませんよ!それが外に出たら、どうするんですか!」
あれ?理解が追い付いてないのかな?
「外に出たら?消滅しますね」
「消滅?」
「そうですよ。外には魔素がほとんどありませんから、モンスターは消滅しますね。ただ、基本的に塔から出ることは無いと思いますが」
「それがありましたか!となると、安全は確保されるんですね?」
現実的には、嘘は言って無いかな?
だって本当は魔素百倍だし、異常進化したり変異種になったりして面倒になるだろうけど、基本的には塔で管理してるから塔から出た途端に死ぬのは間違い無いんだし。
まあ、その塔の呪縛を無効化できるようなヤバイ奴が生まれれば大問題だろうけど。
その辺は完全にタラレバだから、なった時に対処するしかないんだ。
「ええ、塔の外にモンスターの被害が出ることは無いと思いますよ」
「そのモンスターの魔石?と言うのは、集めるのが難しいのですか?」
「難しくは無いと言いたいのですが、難しいですね。戦って斃さないと魔石は手に入りませんから」
「戦う・・・だけなら難しくは無いのでは?」
たぶん御戸部さんの思ってるモンスターって、日本で言えば熊ぐらいをイメージしてるんだろうな。
でも、熊は魔素を使わないから、全然違うんだよな。
低位の熊系モンスター〈ブルー・ベアー〉でも簡単な魔法を使うから、小さな金属の弾なんてほとんど無効化されるだろう。
〈ブルー・ベアー〉の水系の魔力で強化された皮は鉄と同程度の硬さになるからなぁ。
「それは近代兵器が使用できる場合ですよね?近代兵器、特に銃器はモンスターには効かないと思います。何でかと言うと、私も同じ意見を賢者様に説明したんですが、賢者様から同じ様に言われたんです」
「それで賢者様は何と?」
そこなんだよ。
人の方が魔力を使えないんなら、武器の方を何とかしないといけないんだけど、それには武器を魔素に馴染み易い素材で作って魔素で強化していくしかないだろう。
そのためには使い捨ての銃弾では無く、剣や槍などの武器の方が良い。
長く使えば使うほど魔素と馴染んで、強化されていくはずだからだ。
ここの説明はきちんと理解してもらわないといけないんだが、俺は賢者様から聞いてきただけの設定なので、加減が難しい。
とりあえずは、説明をしてみよう。
「・・・では、モンスターを効率的に斃そうとすれば、近接戦闘が一番だと?」
「近距離、中距離の武器ですね。基本的に遠距離攻撃は魔法で行うみたいなので」
「で、武器にも魔石を使うと?」
「そう言われてましたね」
「高齢の賢者様が大量の魔石を提供するのは難しいと言うのは分かりますが、モンスターを斃して魔石を得なければ武器も用意できないし、魔道具も作れないとは・・・」
そう言われると思ってたけどね。
「自衛隊の派遣が一番可能性があるとは思うんですが、やはり難しいですよね?」
どう考えても、魔石を得るために自衛隊の派遣は難しいとは思っていた。
防衛行動では無いからだ。
「難しいですね」
だよなー。
「それで、さっき言われていた件ですが、本気ですか?」
「本気かって、あの一般人や外国人もって話ですよね?」
「それ以外にありませんよ」
「私が本気かどうか?よりも、人類がどう考えているかでしょうね。私は賢者様から話を聞いて、それを基にどうすれば良いのか?って考えただけなので、地球と言う惑星を正常に戻したいと願うのであれば、賢者様の提供される魔道具を使うべきだとは思います。その上で問題になる魔石の確保には人員的な問題がある以上、多くの人々が収集に参加するべきでは?」
「それは一般人も戦わせると言うことなんですよ?しかも日本国内で、それも命の危険がある職業って言うのが・・・」
「命が危険だと思われる職業は他にもありますよね?徴兵するとか、兵役を課すとかでは無いんです。仕事として、それを選ぶかどうかは個人の自由ですよ。自衛隊、警察、消防、などに就職する人がいるんですから、可能か?不可能か?と言えば可能でしょう?それに、ただ歩いているだけだって車に轢かれてしまえば死ぬんですから、自分で選んだ職業として考えるならアリではありませんか?」
「それは極論過ぎませんか?」
「極論ではあるかもしれませんが、でも事実でしょう?」
二人しかいない場所で誤魔化しても仕方無いのに。
「・・・涼木さんの意見は分かりましたが、これはとても私一人でどうにかできる話ではありません。もっと上の、それこそ国会などで討論されるべき内容でしょう。涼木さんこの話、何処まで話しても良いですか?」
何処までか・・・開発中の魔法ができあがるまでこの塔の場所さえ秘密にできれば、どうにでもなるけど・・・日本って情報漏洩に関して結構ガバガバだって聞くし、漏れることを前提で考えるしかないか?
「御戸部さんが必要だと思えば誰に話しても良いですけど、他国に情報が渡ると大変なことになるかと・・・最悪、日本に核が使われる可能性が出てくると思うので、慎重にお願いします。あと、絶対に情報が漏れないと言う確証が無い限り、この場所の情報だけは御戸部さんの所で止めて下さい」
「そうか!最悪、塔を消滅させれば良い!とか考えられると、その可能性もあり得ますね。そうなると如何に極秘裏に話を進められるかが問題か」
「その辺は、私が口出しできることでは無いので、御戸部さんの方で考えてもらうしかありませんが・・・」
取り敢えず話すべきことは話したかな?
あとは俺が手出しできることは無いだろうし、御戸部さんの方で、どう動くかだろう。
今、俺がやるべきは核兵器を無力化する魔法の開発だな。
って、凄い時間が経ってたな。
外は、もう真っ暗だぞ!
時間は・・・日付が変わってるじゃん!!
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