第15話 三貴神2

「あなたは"環境破壊"という言葉を知っていますね」


月読命様の話の内容は、思いもよらぬものだった。


「勿論です」

「その中でも"温暖化"と言うのがありますね?」


「ええ、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に因る地表面温度の上昇が、気候の変動や動植物の生活環境の急激な変化、極部の氷の融解による海流の変化などで起こる自然災害の総称です」

天照大神様が「ねえ、おかしいことに気付かない?」と意味ありげに質問してきた。


その質問から、自分の説明に何か矛盾点か不足点があるのではと考える。

科学的根拠に基づいた温暖化の説明は社会常識となっているはず、そこに矛盾する部分があるのだろうか?

原因となるのは、化石燃料を燃やして発生する二酸化炭素だ。

その二酸化炭素が、温室効果を促進して地上の温度が上昇するって仕組みだったはず。


さて何がおかしい?

科学的根拠に則って・・・もしや!

科学的じゃない原因が関係してる?


「おかしいかは分かりませんが、もしや高濃度の魔素が温暖化に影響している、とか?」


月読命様が感心したように「・・・短時間で、その可能性に気付くとは・・・驚きましたね。あなたが指摘した通り、影響を与える原因の一端に魔素が関係します。この世界は現在魔素をほぼ消費しません。そのため増えることはあっても、減ることが無いのです。私達は色々な方法で魔素の総量を調整してきました。それでも既に魔素の濃度が上がることで環境に影響が出ているのです」と話す。


掻い摘んで教えてくれたのは、こうだ。


魔素とは粒子では無く、純粋なエネルギーの塊りだと考えて欲しい。

現在の地球上の人間は、魔素を知らないし知らないから使えない状況だ。

しかし地球は魔素というエネルギーを放出し続けている。


例えば魔素が熱エネルギーだとすると非常に簡単に分かるだろう。

魔素と言う熱エネルギーが消費されないで増え続ければ、熱エネルギーがドンドンと増え続けることになり、それは温度をドンドン上昇させることになる。


つまり現在の温暖化と言うのは、科学的な原因と非科学的な原因の二つから発生していると言っているのだ。

そりゃあ、魔素を知らない人間には辿り着けないってやつである。


さてここで神様達にとっての利の話なる。


現在の地球には魔素を消費する方法が無かった。

人間は魔素を知らないし、使えないんだから、消費もしないってのは分かる。


ところがある日突然、大量の魔素を消費する存在が現れる。

環境を維持するために大量の魔素を使う賢者の塔と生命活動エネルギーの大半が魔素であるドラゴンである。

それに加えて、塔の中には魔素をエネルギーとするモンスターが存在し、俺も師匠も魔素を魔力に変換して魔法を使う。

つまり俺達だけでも今まで消費されなかった魔素を大量に消費し始めたのだ。


更に言うと、異世界転移した直後の魔素の消費が凄かったらしい。

あの塔が魔素を吸収し過ぎで縦に百倍になったやつだ。


あれで、過去五十年分ぐらいの魔素を一気に消費したらしい。

それはそれでどうなんだ?大丈夫なのだろうか?


「大丈夫よ。ここ最近の魔素濃度の上昇は、正直だったのよ。ただね、これからも魔素を消費しないと増えることになるし、もう一つの原因である二酸化炭素も減らさないとダメなのよね」


・・・二酸化炭素の発生する主原因って・・・内燃機関?外燃機関?いや、あれだ!発電!


つまり、現在の人間の生活基盤である電力を二酸化炭素の排出無しでできれば良いってことか。

まあそうだよな、だから太陽光発電や水力、風力、地熱、潮力なんて発電方法を考えてる訳だし。

ああ、あれもか!カーボンニュートラル!

電気自動車とか結構色々出始めたよな。


そうだよな、電気って無いと現代人は生活できないんじゃないかな?

家の中のほとんどが電気で動いてるだろ、冷蔵庫とかテレビとかパソコンとか・・・・・・「あっ!師匠!」


「どうしたの?」

「あの結構な長時間話してますが、地上の時間と差があったりしますか?」


「あるわよ。千分の一くらいかしら?」

「正確には千四百九分の一ですよ、アマ姉様。あなたが来てから約九十分ほどなので、地上では四秒ほど時間が経過したところですね」


四秒って、みじかっ!


「その、二酸化炭素の話ですが、もしかしたら提案できることがあるかもしれません」

「ほう?で、お前はそれを説明はできるのか?」


「説明ができるのは師匠ですね、そのためにも師匠に事情を説明して連れて来たいのですが?」

「俺は良いと思うが、二人はどうだ?」


「スサがいるなら誰が何人来ようが問題は無いでしょう?」

「アマ姉様、用心と言う言葉知っていますよね。スサも勝手に話を進めないっ!」


三貴神が姉弟喧嘩って、弟に勝ち目無いでしょ・・・


流石に割り込むことも口を出すこともできずに待つこと体感で数分、やっと話が纏まったらしい。


「と言うことで、師匠を連れて来て良いわよ。あ、でもその前に事情説明するんだったわね。じゃあ地上で準備が整ったら・・・「俺の名を呼べ!姉上達の名は、ここ以外では呼ぶな!」・・・と言うことみたい」

「分かりました。では一度地上に戻していただけますか?」


「またあとでね」


声が聞こえたと思った時には、給湯室に戻っていた。


急がないと、こっちの一分は神様達には一日近い時間になる。

急ぐために魔法は全開!幻影魔法に、空中浮遊に身体強化、反射速度上昇に短距離瞬間移動、使える物は全部使って超、超、超、超高速で師匠の部屋に飛び込む。

勢いが凄過ぎて、触った途端に扉が吹き飛んだけど、そんなことを気にしている余裕は無かった。


ドガァァァァンッ!

「なっ!」

「師匠ぉおおおお!緊急事態だぁああああ!」


「何が起きた!何処が攻め込んできた!」

「違う違う!師匠の研究してた魔力から電気への変換魔法は?できたのかっ!」


「で、で、できてはおるのじゃ。まだ検証実験などの行程は残っておるが・・・」

「そ、それ神様に教えて良いか?」


「・・・神・様?」

「だあぁぁ、あんまり時間が無いんだけど。この世界の神様が困ってるんだ。それを助けるために師匠の魔力を電気に変換する魔法が必要なんだよ。で、それを神様に説明して欲しいのっ!」


「儂がか?」

「そうっ!」


「この世界の神に?」

「だから、そうだって!」


「無理じゃ!」

「はぁあ?無理じゃないし!」


「無理じゃ!」

「そう?じゃあ強制!須佐之男命様お願いします!」


師匠の腕を掴んで、そのまま神様の名前を呼んだ。

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