第10話
師匠の部屋に突撃して、ネットにアップした動画サイトの反応を報告。
その過程で思い付いたゲーム仕様のギミックや宝箱の話をしたところ、割と良い反応が返ってきた。
「ほうっ!現実では有り得んが、面白そうじゃのう。宝箱については少々考えねばならんだろうが、ギミックの方は内容さえ考えれば直ぐにでも追加できそうじゃ。良かろう、ゴーレムを三体は貸し出せるじゃろう。が、先にギミックを考えて、それを見せてくれんかのう?余りに稚拙な物では楽しくないじゃろう」
「うーん、準備も無しに人手だけ貰っても意味は無いしなぁ、分かったよ。ギミックの準備なんかをしてから、もう一度声を掛けるから」
思っていたよりも師匠との話が簡単に終わって、ちょっとだけ拍子抜け。
でもまあ、ダメって言われるよりは断然良いので、頑張って色々考えようかな。
まあ元ネタは色々と出回ってるゲームとかなんだけど、そのままってのは嫌だし捻らないと。
それから五日後、ギミックの部分と戦闘を混ぜた動画を投稿してみた。
それも随分早い段階で四千回を超えてまだまだ伸びている感じだった。
その翌日には、宝箱の動画も投稿。
反響としては、これが一番跳ねたというかバズった。
投稿初日だけで二万五千回を超える再生数に、登録者数が前日の倍である九千人まで増えたのだ。
ただそれでも、七割ぐらいは「良くできたCG動画だ」って感じのコメントだったけど。
それから数日、収益化の手続きを進めていたのだが、書き込みに「魔法は使わないの」とか「魔法の映像が見たい」とかの要望が来ていた。
俺としては、魔法の存在は教えない予定で進めている。
と言うのも、これは俺の予想なのだが、この世界では魔法は何かしらの原因で廃れた技術ではないかと思ったのだ。
この予想は地球上に莫大な量の魔素があることが分かった時に思い付いたんだけど、魔素がある以上は生物が魔素を取り込むことは必然で、そうなると必ず魔力の色が体外に現れるはずなんだ。
どういうことかって言うと、師匠の世界では生物は魔素を取り込んで、それを心臓で魔力に変換していた。
変換された魔力は生物の得意とする系統によって髪に色として現れるのだけど、例えば火の魔力が強く出ると赤系統の色、水の魔力が強く出ると青系統の色、風の魔力が強く出ると緑系統の色と言う感じになるんだよ。
それを踏まえて現在の地球は?って考えた時、赤毛と呼ばれる髪色は存在するが青い髪はいないし緑の髪もいないってことになる。
ましてや、二種類の魔力が強く出た紫色とか赤と青の二色の髪とかも存在しないだろ。
つまり現在の地球上の人間は、魔素を魔力に変換できていないのではないか?って考えた訳。
じゃあ、その原因は?
何かの原因があって「そういう能力が無くなった」って思ったんだよな。
勿論、それが何か?って言われても分からないんだけど。
そんな世界で魔法を使える奴がいるって、絶対にヤバいことになりそうだろ?
そんな危険があるかも知れない能力、態々見せる必要は無いんじゃね?って思わないか?
俺は、普通にそう思ったから魔法を見せようとは思ってない。
まあ、将来的にダンジョンに挑む人には、何かしらの方法で魔法を体験してもらっても良いかも?くらいには思ってるけど、それはずっと先の話しで今じゃない。
なので、次の動画では幻影魔法で声を変えて、初のコメントをしてみようと思ってる。
「俺、普通の日本人なので魔法は使えません」って感じかな。
師匠も「これだけ高い魔素の存在する世界で、一切魔法が無いと言うのは少々歪に感じるのじゃが」と言っていた。
時間に余裕ができれば調べてみたいって言ってたから、いつか師匠が原因究明してくれるかもね。
そんな感じで収益化が決まってからも数回、動画を投稿していた。
そんなある日、突然見ず知らずの番号から電話が掛かってきた。
「もしもし、そちら
「はい、涼木は私ですが、そちらは?」
「申し遅れました。私、警視庁公安部の
・・・警視庁公安部?何で?
俺、何かしたか?
やったのって動画を投稿しただけだよな?
他に何かあるか?
とりあえず、無視はできないか。
「えーっと、予定は大丈夫ですが、東京から来られるんですよね。時間は何時頃ですか?」
「朝一の飛行機でそちらに向かいますので、十時に伺わせていただきたいと思っております」
「十時ですね、分かりました。ところで公安の方が何の御用なんでしょうか?」
「それは明日そちらに伺ってからと言うことで、失礼いたします」
・・・何も聞けないまま電話を切られちゃったな。
本当、何の用なんだよっ!
*** *** *** *** *** ***
時間は遡り、モリト達が異世界転移に成功した数時間後。
「所長!監視衛星がおかしな映像を捉えました!」
「何を慌てているんだ!所定の手順で報告したまえ」
「しかし・・・」
「所長、おかしいと言っているのですし、確認だけされてはいかがです?」
「ちっ!仕方無い。報告を聞こう」
「はっ!本日、ジャパンに推定高度一万mの建築物が出現、数分後に消滅いたしました。その内容が余りに荒唐無稽であるため、急遽報告に伺ったしだいであります」
「なっ!有り得ん!一万mの建築物だとか、突然現れて突然消えたとか、監視衛星の不具合では無いのか?」
「我々も当初それを考え合計五回の確認を行いましたが、一切不備は発見できませんでした」
「・・・どう思う?副所長」
「私にも判断がつきかねますね。これが他国であれば誤報で終わるのですが、相手がジャパンとなると・・・何が起きるか分からないところがありますし」
「そうは言っても一万mの建築物は考えられんだろう?」
「それはそうなのですが、もしかりに半分でも真実であった場合、突然現れて突然消えた、つまり何らかのステルス装置の開発に成功した可能性があるかと」
「我々の監視衛星を誤魔化せるような物だと?」
「あくまで可能性ですが」
「少々調べて見る必要はあるか?分かった。一万mは流石に信じ難い、故に計測装置関係のリブート後再設定及び再チェックを行うこと。また同地点の監視を厳重にするよう通達」
「はっ!了解しました!」
賢者の塔は運悪く監視衛星に映像を撮られていたようである。
これが今後、何かしらの波乱を巻き起こすのかもしれない。
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