第7話
「ちくしょうーーーーっ!何で変異種なんだよ!」
これは、探してたオークが上位種じゃなくて変異種だったことへの慟哭だ。
ちょっと楽しみにしてたから、期待が外れたのが悔しかったんだよ。
毒系の変異種になってたので、肉は全く食べれない上に周囲に撒き散らす影響が大きいから放置もできない。
きちんと後始末をしないと環境にも悪い面倒臭い変異種のトップ5に入るのが、この毒系の変異なんだ。
ついでに面倒なのが火系統の魔法を使うと毒が毒ガスに早変わりすると言うオマケ付きである。
「こういう時は、やっぱ一番被害が少ないし溺死だよなぁ!」
何故か?って言うと、毒を撒き散らされると、後の始末が面倒臭いから。
水に閉じ込めて溺死させると、最終的に応用魔法で凍らせれば、そのまま処分できるので便利なのだ。
「と言うことで!早速、水に閉じ込めてみました!」
誰に解説してるんだって話なんだけど、一人でやってると寂しいから独り言が増えるんだよ!
別にボッチじゃないからな!みんな動けないだけだし!
そんな言い訳をしてる間も、閉じ込められた水中でジタバタと暴れ狂っている変異種のオークが・・・ちょっと見るに耐えない感じになってる。
あっ!最後の息を吐いてしまったみたい・・・目が白目剥いてる・・・終わったな。
最後に凍らせて、終了っ!
美味しい肉が手に入らなかったのは正直残念ではあるが、まあ後始末が少なくて済んだのは良かったかな。
毒に関係無い場所で毒を撒き散らされると、その階層にまた別の毒系変異種が発生する可能性が残るだろ、そうするとまた後始末が必要になるからな。
転移陣で処理をする区画に転送して、次に行こうか!
現実的なことを言うと、中層の中でも上の方に行くと毒のエリアがあるんだよ。
そこに転送して今回のオークさんを処理してもらう訳だ。
毒のエリア内なら、毒塗れの変異種の死体の処理も簡単ってことである。
「次は?・・・
巨大な目玉(直径1mほど)に短い手足、目玉の天辺に一本から四本の触手の様なモノ、その先端に口が付いてる。
目玉は常に充血していて、短い手足でチョコチョコ歩き、触手の先端の口で魔法を唱えて攻撃する。
口が一つだと魔法も一つだけだが、口が増えると魔法も同時に口の数だけ使い出す厄介なヤツだ。
ちなみに食事は、勿論その口でする。
食事中のヤツは天辺の口から血を滴らせて、目玉を真っ赤にするからホラーなのだ。
俺がキモいって意味も分かるだろ?
ヤツは魔法特化のモンスターなので〈基礎四属性〉の他に〈複合属性〉も使う。
なので、チマチマと魔法で遣り合っても時間が掛かるので〈上位属性〉で一気に終わらせるのが楽である。
まあ〈上位属性〉って魔力の消費が大きいんだけど、俺の総魔力量から考えれば微々たる物だしな。
近付くのは面倒だったので、ヤツの魔法の射程外から〈上位属性〉の光魔法で〈光閃〉って言う、現代的な例えだとレーザー光線みたいな魔法で十文字に四分割して終了。
その後他に処理したのは
どれも賢者の弟子である俺の魔法の前には大したことは無くて、直ぐに終了させられたよ。
全部処理が終わったので居住階層に戻って、その日は終了。
ちょっと長い残業になったが、まあ寝不足になるほどでも無いだろう。
「では、お休みなさい」
翌朝は、ゴーレムによって起こされた。
三人娘の目が覚めたようで、俺を呼んでいるらしい。
「おはよう。目が覚めたんだってな」
「「「体が痛ーーい。お腹が空いたーー」」」
魔素ってのは、血液と一緒に体を巡る。
血液が酸素を体の隅々まで運ぶように魔素も運んでいるのだ。
それが一時的にでも過剰に供給されれば、受け取る方がパンクしてしまう。
そのパンクした結果、反動が身体中の痛みに繋がっているのだろう。
「分かった、分かった。食事を用意してきてやるから、大人しく寝てろよ」
「「「はーい」」」
良かった、これで全員の目が覚めたな。
魔素の過剰供給の後遺症とかは無いみたいだ。
もし仮に後遺症が出てたなら二度と目覚めなかった可能性があったけど、目覚めた以上その心配は必要無いな。
さて、リクエストもあったことだし飯の用意をするか!
作ったのは具たっぷりのおじやじゃなくて、麦粥だ。
ただ、まだ自由に動けない三人娘からの要望で、俺が食べさせることになってしまったが・・・
俺は彼女達にとって保護者の一人みたいなものだし、こういう状況の時は甘えたいのだろう。
しっかり食べさせたので、ゆっくり寝るように言って部屋を出る。
次に向かうのは師匠の所だ。
何をしたいか?と言えば、今後の相談である。
地球に転移してくる前にも色々と相談はしていたのだが、まずは転移を成功させないと話にならないってことで、後回しになっていたのだ。
今日、俺の工場を確認してきたことで、そろそろ本格的に考え始めなければならないと感じた。
何を?ってのは「この地球でどうやって生活費を稼ぐか?」って問題だ。
今は持って来た食料が充分にあるが、それにしたって四、五ヶ月程度しかない。
俺の銀行口座に貯金はあるが、それは税金の支払いなどに当てなければならないから使えない。
そんな理由で、食料は買うか自分達で育てるしかないって訳だ。
勿論、育てるにしても、最初は種や苗、肥料などを買う必要があるのでタダと言う訳にはいかない。
つまり、どんな方法を取るにしても何かしらの稼ぎが必要になるってことだ。
まだ俺の工場の仕事があれば、こんなことで悩まなくても良かったのだが、そんなタラレバをしても意味が無いだろう。
「師匠!入るぞ。そろそろ、ここでの生活の相談をしよう」
「そう言うと思ってのう、待っておったのじゃ。儂に一つ考えがあるのじゃ」
「何か良い案を思い付いたのか?」
「良いかどうか?は、モリトに判断してもらわねばならんのじゃがのう」
「で、何を思い付いたんだ?」
「それじゃがな、冒険者を引き込んで、儂の塔を攻略させるのじゃ。その時に入場料を取るのが良いと思っとるのじゃが、どうじゃ?」
師匠が特大の爆弾を投下してきた。
師匠は俺の故郷である地球の根本的なことが理解できていなかったようだ。
「・・・・・・はぁあっ!無理、無理、無理、無理、無理、無理、無ーーーーーー理っ!この世界に冒険者はいないんだってっ!」
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