第4話 夜 無茶要求をする職員たち
午後六時で研究以外の部門は勤務が終了となる。真っすぐ家に帰る者もいるが、節約のため、或いは栄養バランスのために食堂で夕食を取る者もいる。中には料理する力が残っていないからここで食うというタイプもいる。
「クタクタ状態でメシ作る余裕残ってないからな」
その内の一人である常連の新井は黙々と夜の定食を食べている。
「田中君、B定食!」
「はい!」
次々と労働し終わった者が注文する。承った田中は三つのコンロをフルに使い、料理を作っていく。
「フィッシュアンドチップス出来る?」
「メニューにないものを頼まないでください!」
たまにサイドメニューにすら載っていないものを頼む者もいるが、昼以上に対応する量が増えるため、いつもやれる余裕はない。田中は注意をしながら、出来上がったものを運んでいく。
「C定食を。アレルギーだから別の魚で」
「分かりました。お待ちください」
C定食の今日の主食として使う鯖からタラに変更する。たまにアレルギー持ちがおり、データ自体タブレット端末に入っているため、これぐらいなら対応可能だったりする。
「フィッシュアンドチップス」
揚げた匂いにそそられたのか、ひと昔のサラリーマンの格好の四十代の男はゾンビのように飢えたような声を出す。ひいと田中は悲鳴をあげる。
「作るほど余裕ないですよ。飯田さん」
「お願い」
「だめ」
「お願い。持ち帰って酒のつまみにする」
「そういうのは外の店でやってください」
「もぐ。だよねー」
どっちが年上か分からないやり取りである。飯田という男は静かに食堂から出て行った。ほぼ毎日やっていることだ。
「もうちょっとサイドメニューを増やそうぜ。あと酒も追加で」
黒髪のオールバックの三十代の男がカウンター席に座った。安田という探索者育成機関の教師をやっている男である。
「サイドメニューに関してはまあ……そうですね。少し増やすべきかもしれませんが」
田中のそのセリフで安田の顔が明るくなる。
「酒は無理かと」
ガックシと肩を落とす安田である。
「無理か」
「無理ですね。ここには未成年も来ますから」
高校生と大学生の探索者の研修生が食堂にやって来ることもある。大人として手本を見せたいので、酒の提供を控えるという考えでやっているため、しばらく出来そうにないのが現実である。
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