第2話 蘇る記憶。あの時の恋心
「岡田って・・・岡田雅人君?小学校一緒だった!」
「そうそう!懐かしいな。て・・小山は結婚してないの?」
地元に居ると自分のかつての同級生の子が子供の同級生になる事は珍しくはないが、その上で夏希にとってのネックはこの質問だった。
「あー・・・・実はちょっと前に離婚して・・・。」
離婚してからこの質問に何度答えた事だろう。
自分の中ではとっくに終わってる事なのに周囲からこの問いかけをされる度、同じ事を答えて同じ事を言われる。
したくてした離婚と言っても納得してもらえず、「でもさ!」って話を掘り返してくる奴が必ず居る。
夏希はそれにうんざりだった。
石油王でも紹介してくれるのかよ・・・。
「そっか・・。大変だったな。」
「・・・・ありがと。」
雅人は少しバツが悪そうな表情をしたが、それ以上は聞かなかった。
「でも!言われてみれば柊也君、小さい時の岡田にそっくりかもー!!もしかしてバスケやってる??」
なんとなく気まずい空気を消したくて、夏希はまだ奥のリビングで自分の息子と話している柊也に目線を送った。
「考えたけど、やんないって!今どきの子はインドアだよなー。ゲームばっか。」
雅人は同じ方向を覗いて自分の息子に呼びかけた。
「おーい!柊也!迷惑だから帰るぞ。」
「今日の飯何?また総菜?」
柊也は父親の手元にぶら下がっているスーパーの袋を見て聞いた。
「しょーがないだろー?お母さんまだ帰って来ないんだから!」
「何?柊也んちのかーちゃん夜勤とか?」
優はまだコントローラーを自分の手汗で濡らしながら、オンライン上の敵と戦っている。
「ちげーよ。ネグレクトぉ~」
柊也は床に投げ捨てていたパーカーを羽織りながら怠そうな口調で話す。
「おいやめろよ、よその家でそんな事言うな!」
雅人が先ほどとは違うバツの悪さを感じているのがひしひしと夏希に伝わってきた。
「あ・・あの、もう遅いし、良かったら夕飯食べていく?うちも昨日の残りのカレーだし総菜みたいなもんだけど・・・。」
「え・・?」
自分でも何でこんな事言ったのか分からないが、なんとなく雅人をこのまま返したくないと思ってしまったのだろう。
結局雅人達は夏希の家で夕飯を共にする事になった。
「悪いな。柊也だけじゃなくて俺や
「いーのいーの!うちもいつも優と2人だし、たまには賑やかに食事したいって思ってたの。」
「オレもこんな家族団欒みたいなの久しぶり!二日目のカレーうまいじゃん!」
雅人の家族団欒に少しくすぐったい気分になる。
ダイニングテーブルには雅人と夏希が座り、優と柊也は床にローテーブルを出して雅人がスーパーで買って来たピザに食らいついていた。
「てか・・・なんかあったの?」
「さっきの柊也の話?」
「うん・・・ちょっと気になっちゃって。全然言いたくないならいいけど。」
雅人は重い口を開きながらぽつぽつと話しだした。
ここ1年位、雅人とその奥さんはあまりうまくいってないようだ。
奥さんがパート先の飲み会があると言ってちょくちょく夜出歩くようになったことをきっかけに、最近では夕飯の支度や凛久の幼稚園のお迎えも雅人に任せて夜遅くまで帰って来ない事が増えた。
「うーん・・それは・・・。岡田の仕事はその時間に終わるの?幼稚園のお迎えって・・・。」
「あー・・オレが在宅になったからもあるのかな。何か・・・週の半分は日付変わるか位に帰ってくるようになってさ。」
「さすがにそんなに飲みに行ってたらお金続かなくない・・?」
夏希は雅人の奥さんが浮気をしているのでは?というのを言いたくても言い出せなかった。
「だからさ・・・オレも飲みに行ってるって思ってないよ。」
「岡田・・・。」
それ以上何て声を掛ければいいか分からなかった。
不謹慎にも雅人の憂いを感じる目があまりにも綺麗で、恋心を思い出してしまった。
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