2玉目! 春一番少女
手荷物検査など諸々の事を考えると、基本的に家を早く出なければならない。
ここでいう“諸々”の大半は少なからず父に関連する。警官から職質を受けたり、柄の悪い奴に絡まれたり……まぁ、そんな感じだ。
そして、それ以外だと……。
「ガウッ! ガウガウッ!」
「フシャー! フシャー!」
「カアァア! カアァア!」
上から順に、犬、猫、カラスである。
どいつもこいつも揃って元気に威嚇してきている。俺からアイツらに何かをしたわけでは無いのに、だ。
理由は分からないが、あらゆる動物から嫌われるのだ。物心ついた時からそうだったので、半ば諦めているのだが。
前世で動物を虐殺でもしたのだろうか……なんて、な。
ともかく。こうして吼えてくるだけなら無問題なのだが、稀に攻撃してくるヤツもいる。逃げるにしろ応戦するにしろ時間を取られるので、運が悪ければ遅刻する事になってしまう。
……どうやら、今日は攻撃してくるヤツはいなそうだな。ついている。
そんな事を考えた矢先のことだった。
「オニハソト! オニハソト!」
……鬼は外?
やたら甲高い声で聞き覚えのあるワードが聞こえて来て足を止める。
周囲を伺えば、頭上の木に1羽の鳥。15cm程度のインコがいた。身体は鮮やかな緑の羽毛に包まれ、頭部の全面だけ赤く染まっている。
そいつは何やら懸命にバタバタと翼を動かしているが、何かが引っ掛かっているようで飛び立つことができない。
目を凝らしてみれば、針金のような何かがインコの足と木の枝を繋いでしまっていた。
「オニハソト! オニハソト!」
「覚えさせる言葉がコレって飼い主のセンスを疑うな……」
見捨ててしまっても構わなかったが、この辺りは野良猫の一団が縄張りとしている。視界の端に様子を伺う猫が数匹映りこんでいるし、猫に食い殺されるバッドエンドは火を見るより明らかだった。
インコなんて野生で見かける生き物じゃない。十中八九、誰かのペットだろう。それを見捨てていくというのは、あまりに後味が悪い。
……それに。救える命を見捨てるのは、あるいは殺す事と同義なのでは無いか。そういう疑問が一瞬でも頭によぎってしまえば、見捨てる事なんて出来やしない。
――俺は父親と同じ存在にだけは絶対になりたくないのだから。
「ほらよ。帰れる場所があるんなら、さっさと家に帰れ」
「オニハソト! オニハソト!」
「痛っ!? 何すんだ、この鳥!?」
「オニハソト! オニハソト!」
針金らしきモノを取ってやったというのに、インコは俺の頭を執拗に嘴でつついてくる。かなり痛い。
慌てて木から飛び降りるが、追跡してまで攻撃してくる。
しかも、恐らくは唯一覚えている言葉なのだろう、「鬼は外」と連呼しながら。……誰が鬼だ。全く失礼な畜生である。焼き鳥にして食ってやろうか。
正直、極貧生活には慣れている。この明らかに人に飼われていた鳥程度なら、余裕で美味しく頂ける自信がある。
……とまぁ、冗談はさておき。
「ま、今日は遅刻コースだな」
このまま攻撃され続けるのは腹立たしいし、さっさと捕獲してしまうことにした。
ついでに、ここまで来れば乗り掛かった舟。飼い主探しをしてやるとしよう。
そう考え、今まさに俺の頭の上に降り立ったインコを捕獲すべく手を伸ばし……
バサッ!
……網。網だ。
頭上から、凄まじい勢いで割と大きめの虫取り網が振り下ろされ、インコごと俺の頭を見事に捕獲しやがった。
「やった! やっと捕まえたよ、セツ君!」
「だ れ が セ ツ 君 だ っ て……?」
「ぴえぇ! ごめんなさい~!」
「オニハソト! オニハソト!」
振り返れば、深々と頭を下げた少女の姿。
栗色の長髪が特徴的な少女は、中学生……或いは小学生かと思う程に小柄であったが、同じ高校の制服を着ている。どうやら高校生らしい。
そんなふうに1つ1つ視覚情報をまとめている間、彼女は地面につきそうな勢いで頭を下げたまま色々と喋っていた。
合間合間に「本当にすみません」だの「なんとお詫びをすればいいか」だの「お怪我はなかったでしょうか」だのと謝罪の言葉が挟まりまくるせいで非常に分かりづらかったが、なんとか状況は掴めてきた。
つまり、学校へ向かうべく朝の支度をしていたら、ペットのコザクラインコ——名前を「セツブン」というらしい——が籠から脱走し、慌てて虫取り網を持って追いかけてきたということのようだ。
そして、見失ってしまって絶望していたところ、俺の「何だ、この鳥!?」という声を耳に。もしかしたらと希望に縋って来てみれば、そこには探していたセツブンが居て……絶対に逃がしてはいけないという思考で頭がいっぱいになった結果、俺ごと網で捕獲するという状況が完成したらしい。
……一応状況は理解できた。
とりあえず、さっさと頭を上げさせなければならない。こんな往来で女の子に頭を下げさせているなんて、誰かに見られたら既に低い俺の評判が更に暴落する。
そんなわけで、さっきから頭を上げるように言っているのだけど、少女は頑なに頭を下げ続けた。
あと1つ。どうしても言わなければならない事があるのだと、そう言い張って。
そして。彼女は一拍置いた後——
「ありがとうございました! セツ君は7年も一緒にいる私の大事な大事な家族で! セツ君を見つけられたのも、捕まえられたのも、貴方のおかげです!」
——と。万感の感情を込めて言った。
7年。その単語に、自分でも良く分からない感情がとめどなく湧き出す。
俺と、父と、母と。3人が平凡ながらも幸せに過ごせていた日々も丁度7年間だった。
だから、かもしれない。柄にも無く、こんな事を口走ったのは。
「大事な家族と再会できて良かったな。離れ離れにならないように、次からは気を付けろよ」
「……はい!」
「フクハウチ! フクハウチ!」
このインコ、そっちも喋れたのか。場の空気を読んだのだとしたら超絶賢いのだが……。
未だに俺の頭をつついているので、ただの馬鹿鳥だろう。
……じゃなくて。
「謝罪も感謝もしっかり受け取った。だから、とりあえず頭を上げてくれ。これ以上は俺が申し訳ない気持ちになってしまうから」
そう言えば、やっと彼女は顔を上げはじめ……
——瞬間。得も言われぬ恐怖が沸き上がった。
虫取り網での衝撃的な出逢いから今まで、彼女はマトモに俺の顔を見ていなかったのではないか?
彼女は俺が校内で有名な存在……「殺人鬼の息子」だと気付いていないのではないか?
顔を見て気付いてしまえば、この彼女の態度も一変してしまうのではないか?
——怖い。
何度も何度も経験してきて慣れている筈なのに。何故だろう。彼女に拒絶されるのは嫌だと……そう、思ってしまった。
「あのー? どうして顔を背けているんですか? ……ははーん? さては、人見知りさんなんですね~?」
……気付いて、いない?
てか、なんだ、そのニヤニヤした顔。めっちゃ腹立つ。
彼女は栗色の瞳に喜悦を滲ませながら、「じゃあ先ずは自己紹介からですね!」なんて言い放ち……
「私は珠木根 春風って言います! 貴方のお名前を教えて頂いてよろしいですか!」
……あぁ。不思議だ。
出会って数分。彼女の事なんて殆ど知らない。
なのに、その名前は彼女にピッタリだと、そう感じた。
「……俺は」
流石に名前を言ったらバレてしまうだろう。
一瞬、偽名を使ってしまうという考えが頭をよぎった。
けれど。それは“逃げ”だ。“敗北”だ。
——俺は罪人ではない。
それが、それだけが。この10年間、決して譲らなかった信念。今更曲げたりしない。
「……俺は、葵……血脇、葵だ」
俺の内心の葛藤と恐怖なんて露知らず、俺の名前を聞いた彼女はあっけらかんと言った。
「葵さん、ですね! あ、私は1年生なんですけど、葵さんは?」
なんだか、拍子抜けしてしまった。
……でも、そうか。1年生か。
まだ今年度が始まって数日。入学したての彼女が、殺人鬼の息子について知らないのも理解できる話だ。
「俺は2年」
「じゃあ! 先輩ですね! 葵先輩ってお呼びしても良いですか?」
「……好きにしてくれ」
「はい! 葵先輩っ!」
何がそんなに嬉しいのか、ニコニコしている彼女を見ながら思う。
……彼女が「殺人鬼の息子」について知るまで何日くらいだろうか。この、親しみを込めた「葵先輩」という呼び名はいつまで聞けるのだろうか、と。
平凡な幸せは永遠ではない。唐突に終わりは訪れる。俺はそれを良く知っている。
それでも、この時がずっとずっと続けば良い。そんな馬鹿げた事を考えてしまった。
「わわわ! どうしよう!」
「……ん?」
「このままだと私、遅刻しちゃいます!」
ふと、スマホで時間を確認した彼女が慌てた声を出した。
遅刻? 俺は家を早く出ていたし、時間はまだまだあると思うけれど。
……いや。成程。このインコを家まで送還していたら、ということか。
「……家は遠いのか?」
「えっと……はい。かなり遠いです」
インコを追っているうちに、知らず知らず家から大分離れてしまっていたらしい。
見たところ、何かスポーツで鍛えているという感じではない。
確かに、女子の足ではキツイかもしれない。ましてや、鳥が1羽入った虫取り網を持ったままとなれば尚更。
絶望しきった顔で「皆勤が~」とか「ママと約束したのに~」とか譫言の様に呟いている。
遅刻程度で大袈裟だとは思うけれど、呟きの内容的に何かしらの事情がありそうだ。
「家には誰かいるのか?」
「……? はい。一応、母が居ますけど。でも、車を出してくれたりはしないはずです。身内には厳しい人ですから」
「……良ければ、俺が届けるが」
「へ?」
この時、俺は自分でも思いもよらぬ言葉を口走っていた。
珠木根も予想外の言葉にポカンとしている。……なんだ、そのアホ面。めっちゃ面白いぞ。
「多分、俺の方が速く走れるし。配達のバイトもやってるから住所さえ聞けば大抵の所は分かるし。だから……」
そこまで言って、はたと気付く。
「あ、えっと! よく知らない相手、しかも男に住所とか教えたくないよな! すまん、無神経だった! 忘れてくれ!」
「いえ、それは全然ノープロブレムですけど」
いや、問題大ありだろ!? 最近のJKってそういうの気にしないの!?
「流石にこれ以上ご迷惑をおかけする訳にはいきません。なにより、先輩が遅刻してしまいます」
心底申し訳なさそうな顔をしているくせに、目には迷いが見て取れる。
たかが遅刻とは思うけれど。それでも、彼女にとっては凄く大切な“約束”なのかもしれない。
……ならば。
インコが逃げ出さないように気を付けつつ、頭から網を外して右手に持つ。
そして——
「吾輩は魔王アオイ! 貴様の家族は俺の手の内にある。返して欲しくば、住所を言うが良い!」
——RPGの魔王のように言ってやった。
「……」
「…………」
「……………………」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……………………ぷっ」
長い沈黙を破ったのは、珠木根の噴き出し笑いだった。
「あははははは! なんですかソレ! よりにもよって! っく…魔王っ…魔王アオイ……あははははははは! 駄目です! 笑い過ぎてお腹痛いです! あははははははははは!」
「わ、笑うな!」
「フクハウチ! フクハウチ! フクハウチ!」
「セツブンお前もか!」
珠木根はひとしきり笑った後、真面目な顔をして、そして頭を下げて言った。
「葵先輩。ありがとうございます。どうか、よろしくお願いします」
「——あぁ。任せろ」
「私の住所は……」
◆◆◆
珠木根の家の場所は直ぐに理解できた。配達で何度も近くへ行っている。
懸念があるとすれば、あれだけ俺の頭を攻撃してきたインコが大人しくしてくれているかどうかだったものの、精巧な剝製かと考えてしまうくらいに静かだった。
別れ際に珠木根が何事か言い含めた効果なのだろうとは思うけれど。そんなに信頼関係があるのなら、どうして脱走なんてしたのだろうか。やはり、畜生の考える事は良く分からん。
10分程度走れば、珠木根の家の前へと着いた。
どこにでもあるような中流家庭の一軒家、といった感じだろうか。
少し呼吸を整えてからインターホンのボタンを押した。
『——はい。 珠木根です』
女性の声。珠木根の言っていた母親だろう。
「すみません。俺は娘さんの……友人? 知人? ……えっと。ともかく、春風さんから頼まれて脱走したインコ、セツブン君を届けに来ました」
少々意味不明な状況だとは思うが、信じてもらうしかない。
インターホンのカメラにインコを映らせ、信じてくださいアピールをする。
『あ、貴方がアオイ君ね! 娘から聞いてるわ! 態々ありがとう! 直ぐに開けるわね!』
成程。事情は珠木根が電話かメールで伝えてくれていたらしい。説明の手間が省けて助かった。
直ぐにガチャリと鍵の開く音が聞こえ、中から女性が出てくる。
「初めまして、春風の母の
珠木根によく似た美人な女性だ。……ただ。何歳だ、この人?
娘と同じく身長が低いせいもあるだろうが、異常に若く見える。なんなら、学生といっても通じるだろう。
「初めまして。血脇 葵です。大した手間ではなかったので気にしないでください。では、俺は学校に行きますので!」
……名乗った時の反応を見る限り、この人は知らないらしい。
それでも、近所の人は知っている可能性が高く、悪名高い殺人鬼の息子が家に来ていたなんて噂されたら申し訳ない。ので、サッサと退散する事にした。
「あ、待って! 車を出すわよ!」
「お構いなく! 余裕で間に合いますので!」
後輩の女の子の母親に運転させて登校。そんなの学校でどんな内容に変換されて広まるか分かったものでは無い。
結果的にだが、早々に退散の手を打っておいて良かった。
逃げるように珠木根宅を後にし、学校への道を急ぐ。
……正直なところ、俺は遅刻しても良いと考えていた。
遅刻なんて何度もしている。今更一回程度増えた所で気にしない。そもそも、どう足掻いても俺は危険な問題児なわけで。
けれど、俺が遅刻したら珠木根は気に病むだろう。あの天真爛漫な笑顔を浮かべる少女は、自分のせいで遅刻させてしまったと笑顔を曇らせてしまうかもしれない。
それは嫌だった。
……思えば、初めてだったのだ。「葵先輩」なんて呼ばれたのは。クラスメイトとも碌に関わってこなかった俺だ。当然、先輩後輩付き合いなんて一切してこなかった。
数日もしない内に、彼女も俺の正体を知って離れていく。それでも、その時までは彼女の「頼れる先輩」でありたい……なんて。我ながら、奇妙な思考に囚われている。
そんな取り留めも無い事を考えながら街を駆ける。
せめてもと言い張る珠木根に鞄を預けてきたからなのだろうか。走る肉体が妙に軽く感じられた。
◆◆◆
「あっ、葵先輩! 良かった、間に合ったんですね! ほんっとーに! ありがとうございました!」
校門に着くと、何故か珠木根が待っていた。
「……こんな所で何してんだ?」
「先輩を待っていたに決まってるじゃないですか!」
なんでも、俺に行かせてしまった手前、仮に俺が遅刻してしまうようなら自分も遅刻するつもりだったらしい。
……やだ男前。俺が女だったら惚れてるわ。
「おうおう、葵! 随分と待たせた挙句、女連れで登校たぁ、良い度胸じゃねぇか。独り身の俺に対する当てつけか!?」
「ちょっと色々あったんです。あと、女連れやら当てつけ云々は完全な誤解ですよ」
「ま、いいけどよ。ほら、恒例の荷物検査だ。鞄見せろ」
「手荷物検査、ですか? あ、じゃあ私も……」
「あー、お前は確か1年の……」
「珠木根 春風です」
「そうそう、珠木根だったな。お前は別に見せなくて良いよ」
「……?」
「よし、確認終了! 何があったか知らねぇが、授業中に寝るんじゃねぇぞ!」
毎度のことながら、明らかに不自然な手荷物検査だ。
そして。
「ほら、あれ……」
「2年の殺人鬼の……」
「俺あの動画見ちゃったんだよね……」
「やばいよな……」
集まる視線。聞こえる囁き声。
「なんか注目あびてます? もしかして葵先輩って有名人なんですか? あ、それとも私が可愛すぎるからですかね?」
「さぁな。……少なくとも、後者では無いから安心しろ」
「え~! 私、中学では結構モテたんですよ? 高校生になって大人の色気を増した私なら、入学数日でファンクラブが出来ていたって何の不思議も……あ! 待ってください! 無視しないでくださいよ~!」
◆◆◆
今日は時間が遅くなったからだろう。静黒は昇降口付近には居らず。
1年と2年の下駄箱は離れていたため、例の手紙を珠木根に見られることも無かった。
それでも。そんなのは何の慰めにもならない。
……数日なんて無謀過ぎる希望的観測だった。今日中に彼女は俺の正体を誰かから教えられて、明日には赤の他人のように振舞うのだろう。
まぁ、そんなのは慣れている。何度も何度も経験した事だ。
だから。
胸がチクリと痛んだのも走りつかれたから。それ以外に理由なんて無い。きっと、そうだ。
◇◇◇
「ねぇ、珠木根さん。今日の朝一緒にいた人ってさ……」
今日は親切な人——2年の葵先輩に助けて貰えて、朝から気分が良かった。家に帰れば、ママから小言をたくさん言われるのだろうけれど、それでも嬉しい気持ちが上回る。
上機嫌で1限の準備をしていると、特に会話をしたことも無い男子生徒が話しかけてきた。
確か、同じクラスの……えーっと、名前は……。
「森井君だったよね。今日の朝一緒に……あぁ、葵先輩だね! 困ってたら助けてくれたんだ! もしかして知り合いなの?」
「知り合いとかじゃないけどさ。……やっぱり知らなかったんだね」
……?
なんだか話が見えない。ふと気付けば、教室中の注目が集まっているのを感じる。
やっぱりファンクラブが!? ……なんてふざけられる雰囲気じゃない。
すると、彼は如何にも“君を心配しているんだ”という表情で、ゆっくりと口を開いた。
「あの人は血脇 葵。2年5組……通称『隔離クラス』の生徒で、父親は猟奇殺人犯の血脇 浅葱。色々と悪名高い人物なんだ。悪い事は言わない。関わらない方が身のためだよ」
◆◆◆
——4限の終了を告げるチャイムが鳴る。
昼休み、昼食の時間だ。
さて、と。今日はどこで食べようか。この、問題児ばかりの『隔離クラス』で飯なんか食べても不味くなるだけだし。かといって、教室の外では生徒たちの視線がウザい。
1年の頃、よく使っていた人気の無い場所があったのだが、今は使えない。年度が変わり、新しく出来た部活が自主練で使うようになってしまったのだ。
いっそのこと一度学外に出てしまおうか。そんなことを考えていた時だった。
教室の扉がバタンッ!と勢いよく開く。
目線を向ければ、見覚えのある少女が腕を組んで仁王立っていた。
そして。
栗色の髪の少女は——珠木根 春風は、まるで宣戦布告をするように言った。
「葵せんぱ~い! お昼ご飯一緒に食べましょう!」
「……は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます