あんまん夫人 KAC20234

ながくらさゆき

あんまん食べたい

深夜にあんまんが食べたくなった。

コンビニを3軒行ってみたけど、あんまんは売ってなかった。

レジの人に聞いたら夜中は蒸かしてないんだと。

肉まんは売れ残りがあった。

でも肉まんじゃない。

あんまんが食べたいんだ。

空を見上げた。

月が雲にうすく覆われてぼんやりと光っていた。

もう1軒だけ行ってみよう、のんびり散歩がてら。

でも多分ないだろうな、あんまん。

トボトボと歩いていたら歌が聞こえてきた。


あんまんまんま〜ん アマンマまんま〜ん♬


こんな夜更けに誰が歌ってるんだろう。

そう思っていたら白い湯気に包まれた。

「えっなに」


あんまんまんま〜ん アマンマまんま〜ん♬


さっきの歌と一緒に何者かが現れた。

「ほほほ」

それは頭があんまんの形をしていて黒いドレスを着ていた。

ゆるキャラグランプリに立候補してそうな着ぐるみのような見た目。

「アタクシは、あんまん夫人。あーた、あんまんが欲しいの?」

「はっはい、そうですけど」

「持っていきなさい」

そう言ってあんまん夫人と名乗る者は僕に白いビニール袋を渡した。

「あんッ」と焼印されたあんまんらしき物が2つ入ってた。

「えっ……くれるんですか」

「ええ。もう遅いから帰りなさい。こんな夜中に出歩いてるなんて危ないわ」

「はい、すみません」

「あんまんまんま〜ん アマンマまんま〜ん♬」

あんまん夫人は歌いながら去っていった。

深夜に歌いながら近づいてくるなんて不審者だ。

でもあんまんくれたからきっといい人だ。

あんまんはビニール袋に入ってからだいぶ経っていたのか、びちゃっとしていた。

でも中のあんこは上等な感じがした。

おいしい。

このあんこ高いやつだ。

あんまん夫人の手作りだったんだろうか。

「あんッ」の焼印がされたあんまんを検索したが見つからなかった。


あのあんまんの作り方を知りたくて、僕は今夜も歩いてみる。

あの歌を歌いながら。

「あんまんまんま〜ん アマンマまんま〜ん♬」












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